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- 今のところ無風の投信コスト競争~2023年8月の投信動向~
コラム
2023年09月08日
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今年最大の資金流入
2023年8月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、8月は外国株式や国内株式を投資対象とするファンドを中心に資金流入があり、ファンド全体でみると9,500億円の資金流入があった【図表1】。わずかではあるが7月の流入額9,400億円を超え今年最大となった。SMA専用ファンド(紺棒)全体への流入額が8月に1,300億円と7月の1,700億円から約500億円減少していることを踏まえると、投信の販売は7月以上に好調であったといえるだろう。
やはり8月も投信販売を牽引したのは外国株式ファンドであった。外国株式ファンドには、SMA専用ファンドから800億円も資金流出していたのにも関わらず、8月に4,900億円の資金流入があり、7月の4,500億円から増加した。
やはり8月も投信販売を牽引したのは外国株式ファンドであった。外国株式ファンドには、SMA専用ファンドから800億円も資金流出していたのにも関わらず、8月に4,900億円の資金流入があり、7月の4,500億円から増加した。
外国株式ファンドはタイプによらず流入増加
一般販売されている外国株式ファンドは、タイプによらず資金流入が8月に増加した。8月はインデックス型の外国株式投信に3,500億円の資金流入があり、7月の3,300億円から200億円増加した。また、アクティブ型の外国株式ファンドには2,200億円の資金流入があり7月の1,600億円から600億円も増加した。このように流入額自体はインデックス型の方が大きいが、7月からの増加額はアクティブ型の方が大きかった。
一般販売されているアクティブ型の外国株式ファンドへの2,200億円のうち1,200億円はインド株式ファンドへの資金流入であった。インド株式ファンドは流入額こそ7月からほぼ横ばいで流入の増加が一服していたが、8月も販売が好調で引き続きインド株式への関心が高かった。それに加えて、8月は400億円弱集めた新設ファンド(【図表2】赤太字)があり、米国株式ファンドでは資金流出こそ続いていたが流出額が100億円以内となり7月の300億円からさらに鈍化した。
インデックス型でも、米国株式ファンドを中心に資金流入が7月から増加し、2カ月連続で一般販売しているものへの資金流入が3,000億円を超えた。このように流入額が2カ月連続で3,000億円上回ったのは初めてのことである。7月は円高となったがそれ以上に株価が上昇し、逆に8月は株価が下落したがそれ以上に円安が進行したため、基準価額が2カ月連続で上昇した外国株式ファンドが多かった。そのため7月、8月と本来であれば資金流入が細るような投資環境だったにも関わらず、インデックス型の外国株式ファンドの販売が好調だった。来年の新NISAのスタートを前に、インデックス型の外国株式ファンドを購入する投資家のすそ野が広がっている可能性もあり、今後の動向が注目されよう。
一般販売されているアクティブ型の外国株式ファンドへの2,200億円のうち1,200億円はインド株式ファンドへの資金流入であった。インド株式ファンドは流入額こそ7月からほぼ横ばいで流入の増加が一服していたが、8月も販売が好調で引き続きインド株式への関心が高かった。それに加えて、8月は400億円弱集めた新設ファンド(【図表2】赤太字)があり、米国株式ファンドでは資金流出こそ続いていたが流出額が100億円以内となり7月の300億円からさらに鈍化した。
インデックス型でも、米国株式ファンドを中心に資金流入が7月から増加し、2カ月連続で一般販売しているものへの資金流入が3,000億円を超えた。このように流入額が2カ月連続で3,000億円上回ったのは初めてのことである。7月は円高となったがそれ以上に株価が上昇し、逆に8月は株価が下落したがそれ以上に円安が進行したため、基準価額が2カ月連続で上昇した外国株式ファンドが多かった。そのため7月、8月と本来であれば資金流入が細るような投資環境だったにも関わらず、インデックス型の外国株式ファンドの販売が好調だった。来年の新NISAのスタートを前に、インデックス型の外国株式ファンドを購入する投資家のすそ野が広がっている可能性もあり、今後の動向が注目されよう。
インデックス型ではコスト競争が勃発しているが
インデックス型の外国株式ファンドは足元もよく売れているが、新NISAによって2024年以降さらに売れることが見込まれる。それを見越して今春から大手運用会社間でインデックス型投信のコスト競争が再び勃発している。
過去を振り返ると2018年のつみたてNISA開始時にも、運用会社間でインデックス型投信のコスト競争が起こった。その時の勝者が三菱UFJ国際投信であり、現在ひとり勝ち状態になっている。運用会社別でつみたてNISA対象商品(ETFは除く)の純資産総額をみると、三菱UFJ国際投信は2023年8月末時点で6.1兆円と最大になっており、そのうち5.4兆円が外国株式ファンドである。次に大きい楽天投信投資顧問の1.5兆円のほぼ4倍となっていることからもそのことが分かる【図表3】。
過去を振り返ると2018年のつみたてNISA開始時にも、運用会社間でインデックス型投信のコスト競争が起こった。その時の勝者が三菱UFJ国際投信であり、現在ひとり勝ち状態になっている。運用会社別でつみたてNISA対象商品(ETFは除く)の純資産総額をみると、三菱UFJ国際投信は2023年8月末時点で6.1兆円と最大になっており、そのうち5.4兆円が外国株式ファンドである。次に大きい楽天投信投資顧問の1.5兆円のほぼ4倍となっていることからもそのことが分かる【図表3】。
そんな三菱UFJ国際投信の牙城を崩すべく、大手運用会社が新NISA開始前にコスト競争を仕掛けてきた形となっている【図表4】。まず3月にアセットマネジメントOneの『たわらノーロード』シリーズが新規設定や信託報酬の引き下げを発表した。さらに4月に日興アセットマネジメントが『Tracers』シリーズを、6月には野村アセットマネジメントが『はじめてのNISA』シリーズを新規設定することを発表した。3社とも三菱UFJ国際投信の『eMAXIS Slim』シリーズを意識した超低コスト投信を拡充してきている。迎え撃つ三菱UFJ国際投信も各社に追随する形で3月と8月に『eMAXIS Slim』シリーズの信託報酬の引き下げを発表しており、まさに消耗戦の様相を呈している。特に全世界株式指数に連動するインデックス型ファンドで信託報酬がこれまでの半分になるなど、競争が激しくなっている。
ただ、8月もこれまで通り三菱UFJ国際投信、SBIアセットマネジメント、楽天投信投資顧問の商品(【図表2】青太字)が売れている。今のところ販売動向には大きな変化がみられず、ほぼ無風状態である。新設されたファンドは単に取り扱っている販売会社がまだ少ないだけかもしれないが、現時点では多くの投資家が積立投資などで購入する商品を見直し、入替等を行っていないようだ。
ただ、8月もこれまで通り三菱UFJ国際投信、SBIアセットマネジメント、楽天投信投資顧問の商品(【図表2】青太字)が売れている。今のところ販売動向には大きな変化がみられず、ほぼ無風状態である。新設されたファンドは単に取り扱っている販売会社がまだ少ないだけかもしれないが、現時点では多くの投資家が積立投資などで購入する商品を見直し、入替等を行っていないようだ。
国内株式も流入増加だが
8月は外国株式ファンドに加えて国内株式ファンドも1,900億円の資金流入があり、7月の1,700億円から約300億円増加した。ただし、国内株式ファンドは外国株式ファンドと逆にSMA専用ファンド(紺棒)からの500億円も資金流入によって膨らんでいたためであり、一般販売しているものに限ると200億円ほど7月から減少した【図表5】。
一般販売されている国内株式ファンドをタイプ別にみると、インデックス型には700億円の資金流入と7月と同規模であったが、アクティブ型が800億円の資金流入と7月の1,000億円から鈍化した。アクティブ型の国内株式ファンドには5月以降、毎月600億円以上の流入超過が続いている。8月も7月から鈍化したとはいえ流入額は高水準であったが、今後も純流入が継続するのか注目したい。
その他、バランス型ファンドも800億円の資金流入があり7月から増加したが、その一方で外国債券ファンドは鈍化した。また、外国REITファンドと国内REITファンドはSMA専用ファンドを除外すると、流入額はともに100億円以下と少額ではあるが2カ月連続の純流出になった。
一般販売されている国内株式ファンドをタイプ別にみると、インデックス型には700億円の資金流入と7月と同規模であったが、アクティブ型が800億円の資金流入と7月の1,000億円から鈍化した。アクティブ型の国内株式ファンドには5月以降、毎月600億円以上の流入超過が続いている。8月も7月から鈍化したとはいえ流入額は高水準であったが、今後も純流入が継続するのか注目したい。
その他、バランス型ファンドも800億円の資金流入があり7月から増加したが、その一方で外国債券ファンドは鈍化した。また、外国REITファンドと国内REITファンドはSMA専用ファンドを除外すると、流入額はともに100億円以下と少額ではあるが2カ月連続の純流出になった。
(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
(2023年09月08日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
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