コラム
2023年08月04日

米国株式を見直す動き?~2023年7月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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今年最大の資金流入

2023年7月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、7月は外国株式や国内株式を投資対象とするファンドに大規模な資金流入があり、ファンド全体でみると9,500億円の資金流入があった【図表1】。6月の5,400億円から急増し、2023年に入って最大となった。なお、7月はSMA専用ファンド(紺棒)についても外国債券や国内債券のものを中心に全体で1,700億円の資金流入があり、2022年以降で最大であった。投信だけでなく、ラップ口座の販売も好調だった様子である。
 
なんといっても7月は外国株式ファンドの販売が好調であった。外国株式ファンドには7月に4,500億円の資金流入があり、6月の2,200億円から倍増した。外国株式ファンドは、SMA専用ファンドから300億円も資金流出していたのにも関わらず、2023年で最大の流入となった。
【図表1】 2023年7月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

インド株式ファンドがアクティブ型の販売をけん引

一般販売されている外国株式ファンドをタイプ別にみると、7月はインデックス型に3,300億円の資金流入があり、6月の2,900億円から増加した【図表2】。特にインデックス型の中で米国株式ファンド(青棒)の資金流入が1,600億円と6月の1,300億円から300億円増加した。
【図表2】 インデックス型の外国株式ファンドの資金流出入
さらに7月は、一般販売されているアクティブ型の外国株式ファンドにも1,600億円の資金流入があり、3月以来4カ月ぶりに流入超過となった【図表3】。アクティブ型の流入額1,600億円のうち1,100億円はインド株式ファンド(緑棒)への流入であり、インド株式ファンドがアクティブ型の販売を牽引したといえよう。なお、インド株式ファンドはアクティブ型だけでなくインデックス型にも100億円の資金流入があり、インド株式ファンド全体では1,200億円の資金流入があった。過去最大であった2007年12月の1,400億円に次ぐ規模となった。
【図表3】 アクティブ型の外国株式ファンドの資金流出入

米国株式の先行きを楽観視か?

また、アクティブ型の米国株式ファンド(青棒)は2023年に入ってから資金流出が続き、しかも流出額が増加基調であったが、7月も300億円流出超過であったが6月の900億円から鈍化した。7月は為替市場で月初1ドル145円目前から月末に141円になるなど円安が進行したが、それ以上にドル建てで米国株式が6月からさらに上昇した。上昇率は6月ほどではなかったが、基準価額が上昇する米国株式ファンドが6月と同様に多かった。市場環境的には基準価額の上昇に伴って利益確定の売却が膨らむことも考えられたが、アクティブ型、インデックス型問わず売却はあまり多くなかった様子である。個別でみても、人気の米国株式ファンド(青太字)はタイプによらず6月から資金流入が増加した【図表4】。
 
米国株式市場では、良好な米経済指標や決算発表から米国企業の業績の底打ち期待が高まった上に、米インフレの鈍化や米FOMCを受けて米利上げの早期打ち止め期待も膨らんだ。景気後退の回避しつつインフレが鎮静化する、いわゆるノーランディング期待が高まっている。その流れに乗ろうと考えている日本の個人投資家が増えているのかもしれない。もしくは、米国株式があまりに堅調なため、しびれを切らして購入しているのかもしれない。
 
ただし、米国が本当にノーランディングとなるか分かりかねる状況であり、仮にノーランディングになるにしても、現在の米国株式は割高である可能性がある。また、日米の金融政策の動向次第では為替が大きく動くことも考えられ、それに伴って為替ヘッジしてないファンドの基準価額が下落するかもしれない。そのため、米国株式ファンドのパフォーマンスがここまで堅調であったからといって、先行きに対しては過度に楽観視しない方が良いと筆者は考えている。但し、米国株式、もしくは米国株式ファンドが大きく下落したら、追加購入できるくらい余裕を持って行動したい。
【図表4】 2023年7月の推計純流入ランキング

国内株式も流入増加

7月は外国株式ファンドだけでなく国内株式ファンドも1,700億円の資金流入があり、6月の800億円から倍増した。アクティブ型、インデックス型とも6月と比べて資金流入が増加した。日経平均株価が3万3,700円台から一時3万2,000円割れするなど月前半に急落する中、購入する投資家が多かった様子である。
 
その一方で、外国REITファンドと国内REITファンドはSMA専用ファンドを除外すると、流出額はともに100億円前後と少額ではあるが資金流出に転じた。

一部のテーマ型の外国株式ファンドが好調

7月は一部のテーマ型の外国株式ファンドのパフォーマンスが特に好調であった【図表5】。
【図表5】 2023年7月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。

(2023年08月04日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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