2023年11月06日

ユーロ圏失業率(2023年9月)-失業率はやや上昇したが、依然低い状況

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率は6.5%にやや上昇

11月3日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏失業率(20か国、2023年9月、季節調整値)】
失業率は6.5%、市場予想1(6.4%)を上回り、前月(6.4%)から上昇した(図表1)
失業者は1101.7万人となり、前月(1094.8万人)から6.9万人増加した

(図表1)失業率と国別失業者数/(図表2)若年失業率(25才未満)と国別若年失業者数
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:堅調な雇用環境は変わらず

ユーロ圏(20か国)の9月の失業率は6.5%で、統計データ公表以来の最低値だった8月(6.4%)から微増した(なお6月も6.4%で最低値を記録している)。また、過去データはほとんど改定されなかった。

失業者数は9月の前月差で6.9万人増となり、8月の8.7万人減の後、再び増加に転じた(図表3・4)。主要4か国では、イタリア(+3.5万人)とスペイン(+3.1万人)が増加、ドイツ(▲0.1万人)とフランス(▲0.8万人)が減少した。ただし、ドイツやフランスの減少幅は限定的となった。

9月の若年失業率は14.0%で、こちらも8月(13.8%)からやや上昇した(図表2、若年失業率は8月・6月・4月が13.9%で最低値となっている)。過去データは6月以降の数値がやや悪化方向に改定された(6月改定前13.8%→改定後13.9%、7月13.9%→14.0%、8月13.8%→13.9%)。

若年失業者数は9月で223.2万人(前月差2.1万人)となり、8月(前月差▲2.6万人)から増加に転じた。若年失業者数はコロナ禍後の最低値(216.1万人、22年2月)を上回る状況ではあるが、コロナショック直前の水準は下回っている(図表4)。
(図表3)ユーロ圏(20か国)の累積失業者数変化/(図表4)ユーロ圏(20か国)の累積失業者数変化
国別の9月のデータを見ると、失業率はデータが公表されている20か国中、悪化した国が14か国、改善が2か国、横ばいが4か国だった(図表5)。また、若年失業率は悪化した国が10か国、改善が3か国、横ばいが7か国だった(図表6)。
(図表5)ユーロ圏の失業率(国別)/(図表6)ユーロ圏の若年失業率(国別)
最後に詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、イタリアは失業者が増加したが、非労働力人口がそれ以上に減少し、就業者は増加した(図表7)。一方、ポルトガルは失業者が増加、非労働人口も増加したが微増にとどまっており、限定的で就業者が減少した(図表8)。なお、いずれも労働参加率はコロナ禍後のピークを更新している。
(図表7)イタリアの失業者・非労働力人口・労働参加率/(図表8)ポルトガルの失業者・非労働力人口・労働参加率
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年11月06日「経済・金融フラッシュ」)

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