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2023年10月26日
インドの生命保険会社の状況-2022年度の決算数値を踏まえての成長性・効率性・収益性・健全性等の動向-
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6―EV(Embedded Value)
EVについては、これまで、主として民間の生命保険会社が公表してきていたが、2020年度末の数値からはLICも公表しており、過去からの推移は、以下の図表の通りとなっている。なお、LIC、ICICI Prudential、HDFC StandardとSBI Lifeは、2022年度から、Public Disclosures資料のL-44として、EVの前提等の数値を公表してきている。
算出方式は、LICとICICI PrudentialとSBI LifeがIEV(Indian Embedded Value)という方式で、HDFC Standard等がMCEV(市場整合的EV)となっている。 ここで、IEV(Indian Embedded Value)というのは、インド・アクチュアリー会が作成しているアクチュアリー実務基準に基づいており、基本的には資産と負債の市場整合的な評価を行うMCEVと調和している方式である。
EVや新契約マージンは、会社の成長性や収益性を示す1つの指標となっている。
これによれば、民間5社の2022年度の新契約マージンは(他社と同一基準の数値が非公表のBajaj Allianzを除いて)27%~32%の範囲にあり、2021年度に比べて各社とも水準を上げている。このように、引き続き新契約における高い収益性を確保している。なお、新契約マージン(NET)ベースで、LICは前年の15.1%から16.2%に、Bajaj Allianzも前年の14.2%から15.5%に、それぞれ上昇している。
EVについては、2015年度に増加率が低下していたが、2016年度から2022年度においては、LICとBajaj Allianzを除けば、各社とも毎年2桁近い進展を見せており、会社の価値を着実に高めてきている。
なお、LICのIEVは、2022年3月末で5,414.92十億ルピーとなって、2021年3月末の956.05十億ルピーに比して大幅に増加している。因みに、2021年9月末において、5,396.86十億ルピーと(2021年3月末に比べて)大幅に増加しており、これは2021~22 年度のLIC法の変更に従って LIC によって実行されたファンドの分離(bifurcation)のため、と説明されている。
算出方式は、LICとICICI PrudentialとSBI LifeがIEV(Indian Embedded Value)という方式で、HDFC Standard等がMCEV(市場整合的EV)となっている。 ここで、IEV(Indian Embedded Value)というのは、インド・アクチュアリー会が作成しているアクチュアリー実務基準に基づいており、基本的には資産と負債の市場整合的な評価を行うMCEVと調和している方式である。
EVや新契約マージンは、会社の成長性や収益性を示す1つの指標となっている。
これによれば、民間5社の2022年度の新契約マージンは(他社と同一基準の数値が非公表のBajaj Allianzを除いて)27%~32%の範囲にあり、2021年度に比べて各社とも水準を上げている。このように、引き続き新契約における高い収益性を確保している。なお、新契約マージン(NET)ベースで、LICは前年の15.1%から16.2%に、Bajaj Allianzも前年の14.2%から15.5%に、それぞれ上昇している。
EVについては、2015年度に増加率が低下していたが、2016年度から2022年度においては、LICとBajaj Allianzを除けば、各社とも毎年2桁近い進展を見せており、会社の価値を着実に高めてきている。
なお、LICのIEVは、2022年3月末で5,414.92十億ルピーとなって、2021年3月末の956.05十億ルピーに比して大幅に増加している。因みに、2021年9月末において、5,396.86十億ルピーと(2021年3月末に比べて)大幅に増加しており、これは2021~22 年度のLIC法の変更に従って LIC によって実行されたファンドの分離(bifurcation)のため、と説明されている。
(参考)LICによる剰余金の配分方針の変更とファンドの分離(bifurcation)
LICは、2021年9月30日以前においては、有配当ファンドという 1つのファンドしか有していなかったが、2021年6月30日に告示された2021年財政法における生命保険会社法の改正により、2021年9月30日より、有配当ファンドと無配当ファンドの2つを有することとなった。
生命保険会社法第28条は、政府の承認に応じて、評価剰余金の90%以上が、保険契約者に割り当てられるか、保険契約者のために留保されるべきと規定している。政府は、LICに対して、保険契約者と株主の間で95:5の既存の剰余金配分パターンを継続させつつも、将来において保険契約者と株主の間の配分を90:10に変更する柔軟性を認めた。これにより、LICはインドの民間保険会社と歩調を合わせることになった(インドの民間保険会社では、剰余金ファンドの剰余金を保険契約者と株主の間で90:10の比率で割り当てることが既に認められており、2002 年のIRDAI(剰余金の分配)規則に基づき、上位 5 社の民間保険会社は有配当保険契約者の剰余金の最大9分の1を株主ファンドに移管している)。
LICは、この承認された剰余金分配方針に従い、有配当ファンドに関する剰余金を、保険契約者と株主に対して、「2022年度:95:5、2023年度と2024年度:92.5:7.5、2025年度以降:90:10」の比率で配分する。また、株主は無配当ファンドの100%の持分を有する。
これにより、(以前は、生命保険会社法第 24 条の規定に従って、有配当契約への配当宣言を通じて、剰余金の5%相当が株主に配分されていたが)有配当ファンドの剰余金の株主への配分の増加と無配当ファンドの株主への100%の配分が行われることで、株主への剰余金の配分が大幅に増加することになった。
結果として、株主持分を表すEVが大幅に増加することになった。
LICは、2021年9月30日以前においては、有配当ファンドという 1つのファンドしか有していなかったが、2021年6月30日に告示された2021年財政法における生命保険会社法の改正により、2021年9月30日より、有配当ファンドと無配当ファンドの2つを有することとなった。
生命保険会社法第28条は、政府の承認に応じて、評価剰余金の90%以上が、保険契約者に割り当てられるか、保険契約者のために留保されるべきと規定している。政府は、LICに対して、保険契約者と株主の間で95:5の既存の剰余金配分パターンを継続させつつも、将来において保険契約者と株主の間の配分を90:10に変更する柔軟性を認めた。これにより、LICはインドの民間保険会社と歩調を合わせることになった(インドの民間保険会社では、剰余金ファンドの剰余金を保険契約者と株主の間で90:10の比率で割り当てることが既に認められており、2002 年のIRDAI(剰余金の分配)規則に基づき、上位 5 社の民間保険会社は有配当保険契約者の剰余金の最大9分の1を株主ファンドに移管している)。
LICは、この承認された剰余金分配方針に従い、有配当ファンドに関する剰余金を、保険契約者と株主に対して、「2022年度:95:5、2023年度と2024年度:92.5:7.5、2025年度以降:90:10」の比率で配分する。また、株主は無配当ファンドの100%の持分を有する。
これにより、(以前は、生命保険会社法第 24 条の規定に従って、有配当契約への配当宣言を通じて、剰余金の5%相当が株主に配分されていたが)有配当ファンドの剰余金の株主への配分の増加と無配当ファンドの株主への100%の配分が行われることで、株主への剰余金の配分が大幅に増加することになった。
結果として、株主持分を表すEVが大幅に増加することになった。
7―新たなソルベンシー規制の導入とIFRS第17号の適用を巡る状況
ここでは、インドにおける、新たなソルベンシー規制の導入とIFRS第17号の適用の検討状況について、報告する。
1|RBC制度の導入
インドの現在の資本規制は、EUソルベンシーIに準じたものでRBCではないが、IRDAIは、RBC 制度の導入を検討している。
IRDAI は、2023年6 月27 日に、RBS(リスクベース監督)枠組みのパイロットテストの第1 段階を2023 年7 月から開始すると発表した。また、8 月10 日には、最初のQIS(定量的影響度調査)1を開始すると発表5し、「技術ガイダンス」を公表6している。保険会社は、2023年3月31日現在の数理計算上の評価に使用するデータを用いて、QIS1の結果を2023年11月30日までに提出することが求められる。
なお、IRDAIは、QIS1の結果の評価に続いて、連続的なQISに着手することを想定している、と述べている。
インドの現在の資本規制は、EUソルベンシーIに準じたものでRBCではないが、IRDAIは、RBC 制度の導入を検討している。
IRDAI は、2023年6 月27 日に、RBS(リスクベース監督)枠組みのパイロットテストの第1 段階を2023 年7 月から開始すると発表した。また、8 月10 日には、最初のQIS(定量的影響度調査)1を開始すると発表5し、「技術ガイダンス」を公表6している。保険会社は、2023年3月31日現在の数理計算上の評価に使用するデータを用いて、QIS1の結果を2023年11月30日までに提出することが求められる。
なお、IRDAIは、QIS1の結果の評価に続いて、連続的なQISに着手することを想定している、と述べている。
2|IFRS第17号の適用の検討
ICAI(インド勅許会計士協会)は、インド企業向けのIFRS にコンバージェンスした会計基準(Indian Accounting Standards:Ind AS)の一部として、IFRS 第17号(保険契約)に準拠した「Ind AS 117 保険契約」を策定している。IRDAI は、2022年8月に、インド勅許会計士協会(ICAI)、インド・アクチュアリー会(IAI)、および保険業界の代表等で構成される「保険セクターにおけるInd AS/IFRS の実施に関する専門家委員会」を設置7し、その実施に向けての課題に取り組んできている。
IRDAI は、2024 年4 月1 日からのInd AS117 の導入に向けて、特定会社を対象にパイロット計画を実施している。
IRDAIは、RBS 枠組みの移行スケジュールと同期させることも検討しているようである。
ICAI(インド勅許会計士協会)は、インド企業向けのIFRS にコンバージェンスした会計基準(Indian Accounting Standards:Ind AS)の一部として、IFRS 第17号(保険契約)に準拠した「Ind AS 117 保険契約」を策定している。IRDAI は、2022年8月に、インド勅許会計士協会(ICAI)、インド・アクチュアリー会(IAI)、および保険業界の代表等で構成される「保険セクターにおけるInd AS/IFRS の実施に関する専門家委員会」を設置7し、その実施に向けての課題に取り組んできている。
IRDAI は、2024 年4 月1 日からのInd AS117 の導入に向けて、特定会社を対象にパイロット計画を実施している。
IRDAIは、RBS 枠組みの移行スケジュールと同期させることも検討しているようである。
8―まとめ
以上ここまで、2022年度決算に関する各社のPublic Disclosures資料等に基づいて、インドの主要な生命保険会社各社の成長性・効率性・収益性・健全性等の状況等について報告してきた。
インドの生命保険市場は、大きな潜在力を有し、今後さらなる成長が期待できる市場であるが、市場の変化に対応して、これまで各種の保険監督規制の改革等が行われてきている。こうした環境下で、生命保険会社は、商品開発とチャネルの改革、リスク管理体制の充実等の課題に取り組み、経営効率化を進めてきている。
成長性が高く、健全性を維持しつつ、一定の収益性が期待できる市場だからこそ、日本の保険会社も含めて、欧米の主要保険グループが、この市場に魅力を感じて、各種の規制の緩和等の動きに対して積極的に注力してきている。
インドにおける生命保険各社の状況については引き続き注視していくこととしたい。
インドの生命保険市場は、大きな潜在力を有し、今後さらなる成長が期待できる市場であるが、市場の変化に対応して、これまで各種の保険監督規制の改革等が行われてきている。こうした環境下で、生命保険会社は、商品開発とチャネルの改革、リスク管理体制の充実等の課題に取り組み、経営効率化を進めてきている。
成長性が高く、健全性を維持しつつ、一定の収益性が期待できる市場だからこそ、日本の保険会社も含めて、欧米の主要保険グループが、この市場に魅力を感じて、各種の規制の緩和等の動きに対して積極的に注力してきている。
インドにおける生命保険各社の状況については引き続き注視していくこととしたい。
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(2023年10月26日「基礎研レポート」)
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