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人生100年時代のシングル高齢者の不安と備え~未婚女性はポジティブで備えも進み、未婚男性はネガティブで備え不足

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
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3――長い老後資金に関する不安と備え
性・配偶関係別にみると、とりわけ大きな差は見られないものの、「離別・死別男性」は「とても不安」が唯一2割を超え、他の属性よりもやや大きい。筆者のレポート「シングル高齢者の増加とその経済状況~未婚男性と離別女性が最も厳しい」で見たように、「離別・死別男性」は、資産額が100万円未満の低資産層が「未婚男性」に次いで多い約3割に上っており、経済的な支えの無さを悲観しているとみられる。一方、低資産層が4割、かつ年金収入0円層が1割で、ともに最大だった「未婚男性」は、生活資金への不安については、他の属性とあまり差がなく、将来見通しにおいては楽観的な傾向があるようだ。
次に、図表7の下から2番目の「準備していない」をみると、未婚男性では最大の4割弱に上った。また、男女で同じ配偶関係同士を比べると、いずれにおいても、準備していない割合は、男性が女性よりもやや大きかった。筆者のレポート「シングル高齢者の増加とその経済状況~未婚男性と離別女性が最も厳しい」で報告したように、男性は女性よりも現在や現役時代の収入が高いのだが、にもかかわらず、預貯金をしていない人が女性より多い。従って、収入不足だけが蓄え不足の要因とは言えず、将来を見据えた計画的な備えが苦手なようである。
4――病気やケガへの不安と備え
5――終わりに
長生きすることに対しては、従来は、孫やひ孫に囲まれている高齢者の方が、希望が強いと予想する人も多かったかもしれないが、分析結果は、家族の状況で決まる訳ではないことを示した。むしろ最近では、高齢者の生きがいは、子や孫の成長とは限らず、旅行や娯楽など、個人のライフスタイルに応じて多様化してきているということかもしれない。いわば、家族に囲まれて生活することだけが長生きへの希望につながる訳ではなく、シングルであっても、気心の知れた仲間を見つけて(兄弟姉妹ということもあるかもしれない)、楽しみを見つけ、生きがいを持っている人が、長い老後へのポジティブさを獲得するのではないだろうか。高齢者市場に携わる企業は、そのような高齢者側の意識やライフスタイルの変化に応えて、多様なサービスを開発、提供することが期待されていると思われる。
一方で、そのようにポジティブな未婚女性であっても、主観的健康観がやや悲観的であることは気がかりだ。一言で言えば「心配しやすい」とも言えるが、主観的健康観は、「今日は調子が良い」と自覚できることであり、QOLにつながるため、高い方が望ましい。有配偶の方が、男女いずれも主観的健康観が高いことを鑑みると、「何かあっても、近くに頼れる人がいる」という安心感がある方が、食欲や睡眠といった生活リズムを整えることにつながり、プラス効果を及ぼしているようにも見える。日々、心身の衰えを自覚している高齢者にとっては、健康に気をつけて生活している人であっても、いざという時の安心材料、頼れる人やネットワークを求めているのかもしれない。
未婚女性とは逆のベクトルで特徴的だったのは、未婚男性である。経済的な基盤が弱く、社会参加の程度も低く、長生きにも後ろ向きで、健康状態も悪い。年金受給額0円の層が1割を超えるのに、預貯金がない人も過半数に上る。その割に、老後の生活資金への不安はさほど大きくない。将来見通しが楽観的で、身近に迫る経済的リスクを正しく評価できていない人も多いのかもしれない。今後、貧困に陥ったり、心身機能が低下したりするリスクがあるが、同居家族や、付き合いのある親族がいない人も2割を超えることから、行政によるアプローチが必要だと考えられる。
次稿では、認知機能が低下した際の財産管理の問題について、配偶関係別に分析したい。
(2023年09月05日「基礎研レポート」)
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03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
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