2023年08月29日

シングル高齢者の住宅と生活~未婚女性の6割は1日60分以上歩くアクティブ層、未婚男性と離別・死別男女の1割弱は殆ど歩かない不活発層

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子

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■要旨

前稿に続き、シングル高齢者の生活状況を探るため、公益財団法人「生命保険文化センター」の調査を用いて、性・配偶関係別に、住宅と生活面について分析した。その結果、まず住宅については、未婚男性の約4割、未婚女性の約2割が賃貸住宅暮らしであることが分かった。老後も賃貸料が発生し続けるため、長く、家計の負担になると考えられる。また、未婚と離別・死別の女性では、両親など家族名義の戸建てに住んでいる人も2割近くに上った。今後、名義人の死亡などライフイベントが発生すると、将来的に住み続けられるかどうかという問題に直面する可能性があり、今後も動向を注視する必要があるだろう。

家族構成については、未婚だと7~8割、離別・死別だと5~6割が独居だった。逆に言うと、シングルでも同居家族がいるケースが一定割合、存在した。未婚の場合、兄弟姉妹との同居が多いことが分かった。つき合いのある親族の範囲についても、未婚だと兄弟・姉妹と回答した割合が大きく、配偶者や子がいない代わりに、兄弟・姉妹との結びつきが深いことが分かった。今後の高齢者市場を考える上で一つのヒントになるのかもしれない。

社会参加の程度を測る歩行習慣について見てみると、未婚女性では、1日60分以上というアクティブ層が約6割に達した。一方、シングル高齢者の中で、他人との交流関係が薄く、不活発な層の存在も浮かび上がってきた。未婚と離別・死別の男性、離別・死別の女性では「ほとんど歩かない」が1割弱いたほか、未婚男性では約2割が「家族やつき合いのある親族はいない」という状態だった。つまり、未婚男性と、離別・死別の男女には、孤立・孤独や閉じこもりのリスクが相対的に高い可能性がある。高齢者の孤立・孤独や閉じこもりは、うつや認知機能低下、身体機能低下、死亡率上昇などにつながる恐れがあるため、注意が必要である。

■目次

1――はじめに
2――シングル高齢者の住宅の状況
3――シングル高齢者は誰と暮らしているのか
4――シングル高齢者の家族、つき合いのある親族
5――シングル高齢者の歩行習慣~社会参加の状況~
6――終わりに
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生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子 (ぼう みおこ)

研究・専門分野
中高年女性の雇用と暮らし、高齢者の移動サービス、ジェロントロジー

経歴
  • 【職歴】
     2002年 読売新聞大阪本社入社
     2017年 ニッセイ基礎研究所入社

    【委員活動】
     2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
     2023年度  日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員

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