2023年07月13日

健康状態に差支えがあっても週1回以上運転する高齢者は推計約300万人~免許保有している/していた高齢者の約2割は運転を引退済

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子

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■要旨

高齢者への運転免許の自主返納が促進されているが、地方を中心に、マイカーに代わる移動サービスは不足しているため、優先度の高い地域等から代替移動手段確保に努めると同時に、運転を継続する高齢者に対しても、よりリスクを下げる運転の仕方を検討していく必要がある。そのためには、現在の高齢者の運転実態について、より詳細に把握しておく必要があるだろう。

そこで本稿では、公益財団法人「生命保険文化センター」の意識調査のデータを用いて、高齢者の性・年齢階級や居住地域、職業、健康状態などの属性ごとに、運転状況を分析した。その結果、まず運転習慣に関しては、高齢男性の約7割、高齢女性の約3割に運転習慣があった。免許を自主返納したり、非更新によって失効したりして、既に運転を引退した人は、運転免許を保有している/保有していた高齢者全体のうち、男女いずれも約2割に上ることがが分かった。高齢者の運転のリスクに対する理解が一定程度、広まっていると言えるだろう。

また、運転頻度を年齢階級別でみると、年齢階級が上がるほど低下していたが、例えば80歳代前半では男性は約3割、女性は約1割が「ほとんど毎日」運転していた。都市規模別でみると、規模が小さいほど頻度が高く、人口10万人未満の市では約4割、郡部では約5割が「ほとんど毎日」だった。職業別では、常用労働者の方が全体より頻度が高く、「ほとんど毎日」が5~6割に上った。健康状態別に見ると、「差し支えあり」の男性の約6割、女性の3割が、週1回以上、運転していた。「大いに差し支えあり」でも、男性の約5割が、週1回以上、運転していた。

これらの分析結果を基に、現在、全国で健康状態が悪化しても週1回以上運転している高齢者数を試算すると、約300万人と見られることがわかった。今後は、交通事故リスクが高い地域や職業などから優先的にアプローチして、代替移動手段確保を急いだり、よりリスクを下げる運転方法(時間やエリアの限定、相乗りの推奨等)を呼びかけたりして、全体として高齢者の運転によるリスクを下げる、現実的な仕組みを構築していくことが必要だろう。

■目次

1――はじめに
2――高齢ドライバーの増加と運転免許の自主返納
  1|高齢ドライバーの人数
  2|高齢ドライバーの割合
  3|運転免許の自主返納者数の推移
  4| 運転技能検査による不合格率
3――高齢者の健康状態
4――高齢者の運転状況
  1|運転習慣
  2|運転頻度
5――健康状態が悪くても定期的に運転している高齢者数の試算
6――終わりに
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生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子 (ぼう みおこ)

研究・専門分野
中高年女性の雇用と暮らし、高齢者の移動サービス、ジェロントロジー

経歴
  • 【職歴】
     2002年 読売新聞大阪本社入社
     2017年 ニッセイ基礎研究所入社

    【委員活動】
     2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
     2023年度  日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員

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