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世界保険市場2033年までの見通し-2033年生保収入保険料はインド世界第3位、日本は第5位に-
保険研究部 上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長 有村 寛
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1――はじめに
1 Allianz Global Insurance Report2023 Anchor in turbulent times(2023年5月17日)(以下、Allianz Global Insurance Report2023)。
2――2022年の世界保険市場の状況
Allianz Global Insurance Report(2021,2022,2023)によれば、2022年の世界の保険料収入の増加率は、前年比4.9%であり、生損保別では、生保2.4%、損保8.7%となった(図表1)2。生保、損保ともに増加したが、2022年の全世界のインフレ率が8.7%3であることを考えれば、生保は実質的には伸びておらず、停滞しているといえよう。過去2年と比較してみると、2020年は、主に新型コロナウイルスの影響により、合計保険料では、対前年減少したが、2021年には回復した。それ以降も好調が続くことが予想されたが、ロシアのウクライナ侵攻を機に状況は一変した。インフレによる家計消費の圧迫等に伴い、2022年の生保の対前年増加率は前年より減少、生損保合計の増加率も2021年より若干減少することとなった。
2 2022年の合計の数値(増加率)は、医療保険を含んだものとなっている。(2020年、2021年の数値は医療保険は含まない。)なお、Allianz Global Insurance Report2023に掲載されているデータより、筆者が集計したところによれば、2022年の全世界ベースでの収入保険料合計は、生命保険2兆6,210億ユーロ、損害保険1兆8,082億ユーロ、医療保険1兆1,288億ユーロとなる。なお、同レポートでは、巻末に掲載している59か国の合計をもって「world」としており、当レポートでもそれにならい、当59か国の合計値を「全世界」と表記している。
3 IFMのデータ(2023年8月9日時点)によれば、全世界のインフレ率は、2020年3.2%、2021年4.7%、2022年8.7%であった。
4 Allianz Insurance Report2023掲載データ(59か国、生・損保別)により、筆者にて集計。なお、当レポートでは「アジア」と記載しているものは、中国、日本含めたアジア合計値を記載しているが、(図表2)、(図表4)では地域別構成比で合計100%とする必要があるため、中国、日本を除く数値を「アジア(中国、日本を除く)」として記載している。
5 Allianz Insurance Report2022掲載データにより、筆者が集計したところによれば、2021年の損保の保険料収入は、西欧3,943億ユーロ、アジア3,797億ユーロだった。
3――2023年-2033年における世界保険市場の見通し
また、2年前に公表されたAllianz Insurance Report(2021)では、2021年からの10年間は、パンデミックを契機としたリスク認識の高まり、持続可能性への対応、新興市場におけるさらなる保険の普及により、年平均5%以上の発展を予測、「黄金の10年間」とされていたが、その後の、ロシアによる「ウクライナ侵攻」それに伴うインフレ等により、生保の見通しは低下している。
(過去における全世界の保険料増加率見通しは、2021年-2031年生保5.7%、損保4.2%[2021年5月]、2022年-2032年生保4.9%、損保4.6%[2022年5月]、2023年-2033年生保4.7%、損保5.0%[今回]となっている。)
6 Asia Insurance Review「Asia: Region predicted to see annual growth of 7.5% in life business over the next decade」(2023年5月18日)。
4――おわりに
中でも、中国を抜いて人口世界第1位になった他、2022年の新車販売は日本を抜いて世界第3位、同年のGDPも世界第5位と、ここのところ躍進著しいインドが、生保マーケットにおいて2033年に世界第3位まで浮上してくるとされている7点や、その一方で日本は、インドのみならず、英国にも抜かれ、世界第5位になることが予想されている点は、インパクトがあり、注目される。
また、コロナ前は、中国は収入保険料において2030年頃には米国を凌駕して世界一になることが予測されていたが、昨年度のAllianz Global Insurance Report(2022)では、コロナ禍を経てその時期は2050年頃になるだろう、とされており、今後どうなっていくのか。
アジアを中心に、世界保険市場はダイナミックに動いており、動向については今後とも引き続き、注視していきたい。
7 Swiss Re Institute「India’s insurance market: poised for rapid growth」(2023年1月4日)では、インドは2032年の生保収入保険料で世界第5位になると予測されており、同レポートの概要については、小著「急成長を遂げるインド保険市場-2032年には生保収入保険料世界第5位に-」『保険・年金フォーカス』(2023年4月18日)でも紹介している。また、Fitch Solutions Companyが各国別に作成している「Insurance Report」では、インドの生保収入保険料は、2027年まで年平均8.7%で増加することが予測されており、筆者が国別に確認したところ、2027年の予測値では世界第11位であった。
(2023年08月31日「基礎研レポート」)
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03-3512-1822
- 【職歴】
1989年 日本生命入社
1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職
2023年~ 大阪経済大学経済学部非常勤講師
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