2023年08月29日

男性の育休取得の現状-「産後パパ育休」の2022年は17.13%、今後の課題は代替要員の確保や質の向上

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • 「産後パパ育休」が創設された2022年の民間企業の男性の育休取得率は過去最高の17.13%にのぼる。16業種中13業種で上昇し、首位は「金融業,保険業」(37.28%)、2位「医療,福祉」(25.99%)、3位「生活関連サービス業,娯楽業」(25.53%)、4位「情報通信業」(24.58%)、5位「学術研究,専門・技術サービス業」(23.38%)と続く。「医療,福祉」と「生活関連サービス業,娯楽業」は前年の約2倍にのぼる。
     
  • 一方、男性の育休取得率の低い「卸売業,小売業」(8.42%)や「宿泊業,飲食サービス業」(9.06%)では女性でも低い傾向がある。これらの業種では非正規雇用者が多く、非正規雇用者も条件を満たせば育休を取得可能だが、正規雇用者と比べて育休を取得しにくい雰囲気や周知の徹底に課題がある。また、コロナ禍の収束が見えて需要が増す産業でもあり、人手不足から休業を申し出にくいといった状況もあるだろう。
     
  • 事業所規模別には、大規模であるほど男性の育休取得率は高く(500人以上25.36%)、上昇幅も大きいが、30人未満では僅かながら低下していた。育休取得者の代替方法は、大規模事業所や正規雇用者の多い産業では同僚や人事異動による対応が多く、日頃から雇用が安定的に確保され、人手に比較的余力がある一方、小規模事業所や非正規雇用者の多い産業では人手不足も育休取得の障壁となっている様子がうかがえた。
     
  • 2025年に男性の育休取得率30%との政府目標に向けた今後の課題は代替要員の確保や質の向上だ。中小企業には行政による具体的な支援(助成金や人員計画の策定支援など)、大企業には評価制度の見直しや取得率向上・取得期間拡大を念頭においた採用計画などが求められる。育休取得が進む国家公務員男性の雇用管理上の課題等の共有も有意義であり、社会全体の価値観を変えていく息の長い取り組みが求められる。


■目次

1――はじめに~2021年10月の「産後パパ育休」創設や育児・介護休業法改正の効果は?
2――育休取得率~2022年の男性の育休取得率は17.13%、引き続き「金融・保険」が首位で
 37.28%
  1|全体の状況
   ~「産後パパ育休」創設の2022年の男性の育休取得率は17.13%で過去最高
  2|産業別の状況
   ~男性は「金融、保険」が首位で37.28%、「医療,福祉」や「情報通信」は男女とも上位
  3|事業所規模別の状況
   ~大規模ほど男性の育休取得率・上昇幅も共に大きく、小規模では人手不足感
3――育休取得者の代替方法~補充なし8割、大規模事業所では日頃から人手に充足感、小規模に
 課題
4――おわりに~今後の課題は代替要員の確保や質の向上、既に人手不足の中小企業には具体的支援
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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