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- 今時の専業主婦世帯のプロファイル-夫婦のいる勤労者世帯の3割へ減少、約半数が55歳以上
今時の専業主婦世帯のプロファイル-夫婦のいる勤労者世帯の3割へ減少、約半数が55歳以上

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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- 共働き世帯の増加で専業主婦世帯は夫婦のいる勤労者世帯の3割にまで減少している。女性の活躍推進政策以降、特に若い年代で共働き世帯が増えることで、足元では専業主婦世帯の方が多いのは妻の年齢が65歳以上のみ(約6割)となり、54歳以下では専業主婦世帯は4分の1程度となっている。その結果、専業主婦世帯の妻の年齢分布を見ると、55歳以上が約半数を占めるようになっている(全体では約3割)。
- 仕事と家庭の両立環境の整備が進み、若い年代ほど就業希望を叶える妻が増えていることで、専業主婦の就業希望は44歳以下で大幅に減っている。ただし、就業希望があっても求職活動をしていない理由には「出産・育児のため」や「適当な仕事がありそうにない」があがり、依然として両立の困難さから就業をあきらめている女性が少なからず存在し、キャリアの中断は、その後の復職状況にも影響を与えている。
- 夫の年収分布を見ると、2002年では500万円~699万円を中心に、専業主婦世帯も共働き世帯も同様に分布している。昔ながらの価値観から専業主婦世帯の夫は高年収という印象もあるのかもしれないが、20年前の時点でこの図式は成り立っていない。2022年でも共働き世帯の夫の年収分布は同様だが、高齢化がより進行する専業主婦世帯では、定年後の再雇用の夫が増えたことなどから、300万円未満が増えている(約3割)。
- 消費市場では、企業業績に直結するため、世帯構造の変化や消費者要望の把握は丁寧に、かつ素早く実行される。一方、日本の税制や社会保障制度においては、すでに少数派の専業主婦世帯を前提とするものが根強く存在し、現状との乖離は広がっている。また、共働き世帯といっても「106万円の壁」に見られるように、就業時間を調整する女性は少なくない。さらに、近年、未婚者や高齢単身者などの単身世帯も増えている。
- このような中、内閣府「男女共同参画白書 令和5年版」では「働きたい女性が就業調整を意識しなくて済む仕組み等を構築する観点から、税制や社会保障制度等について、総合的な取組を進める」としている。すでに働き方や家族形成に対する価値観が多様化し、世帯構造も多様化している中で個人の選択に対して中立的な税制や社会保障制度の実現に向けて、一層スピード感を持った改革が求められるようになっている。
■目次
1――はじめに
~増え行く共働き世帯、専業主婦世帯は夫婦のいる勤労者世帯の3割へ減少
2――年齢階級別に見た特徴
~「女性の活躍」で若い世代ほど専業主婦減少、25~34歳世帯の4分の1へ
3――妻の年齢階級分布に見た特徴
~共働き世帯より専業主婦世帯で高齢化進行、55歳以上が約半数へ
4――専業主婦世帯の就業希望状況
~若い年代ほど希望多い、非求職理由の大半は「出産・育児のため」
5――夫の年収階級別に見た特徴
~専業主婦世帯は再雇用等で300万円未満層が約3割へ増加
6――おわりに
~多様化する世帯構造、個人の選択に中立な税制・社会保障制度の実現を
(2023年08月22日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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