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全世代社会保障法の成立で何が変わるのか(下)-役割と責任が拡大する都道府県への期待と不安

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
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今年の通常国会に提出されていた「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」は2023年5月の参院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。今回の法律では、出産時に支払われる「出産育児一時金」の引き上げに加えて、身近な病気やケガに対応する「かかりつけ医機能」の強化など数多くの内容が盛り込まれた。
そこで、2回シリーズの(上)では、後期高齢者医療制度の見直しなど、主に医療保険制度改革に関する部分をピックアップし、全体として全世代で応能負担を強化する流れが強まっている点とか、制度の極端な複雑化が進行した点を考察した。
(下)では、医療費適正化計画の強化や国民健康保険運営方針の見直しなど、主に都道府県が絡む制度改正を取り上げることで、都道府県の役割と権限を大きくする「医療行政の都道府県化」の傾向が一層、顕著になっている点を考察し、都道府県に対する期待と不安を論じる。
■目次
1――はじめに~都道府県の役割が拡大、どこまで移譲できるか~
2――改正法の概要と本稿の構成
3――医療費適正化計画の強化
1|医療費適正化計画とは
2|計画が始まった後の推移
3|医療費適正化計画を巡る議論(1)~特定健診でマクロの医療費を抑制できる?~
4|医療費適正化計画の論点(2)~地域医療構想は抑制の手段なのか?~
5|財務省の指摘
6|医療保険部会「議論の整理」の内容
7|制度改正の内容
4――保険者協議会の法定化
1|保険者協議会とは何か
2|制度改正の狙い
5――国民健康保険の運営方針見直し
1|2018年度改正の内容
2|国民健康保険運営方針とは何か
3|今回の改正内容
4|保険料水準統一の加速化
6――地域医療連携推進法人の見直し
7――医療行政の都道府県化という共通点
1|今回の制度改正から見える意図
2|最近の制度改正を振り返ると…
3|都道府県が担えるのか?
4|負担と給付の関係明確化の選択肢
8――おわりに
(2023年08月25日「基礎研レポート」)
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03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
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