2018年04月11日

国保の都道府県化で何が変わるのか(上)-制度改革の背景と意義を考える

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳

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■要旨

2018年4月から国民健康保険の運営が市町村単位から都道府県単位に変わった。これは約50年ぶりと言われる大規模な制度改革であり、恒常的な赤字財政に苦しむ国民健康保険の財政安定化に加えて、医療費適正化に関する都道府県の役割強化という目的がある。

では、国民の保険料負担はどう変わるのだろうか。あるいは共同して財政運営に当たることとなった都道府県と市町村の役割はどう変わり、都道府県はどのように臨もうとしているのだろうか、今回から3回シリーズで都道府県化の意義や論点を探ることとしたい。

まず、(上)では国民健康保険の財政構造や都道府県化の背景を探るとともに、制度化を通じて都道府県と市町村の役割がどう変わったのかを考察する。その上で、(1) 負担と給付の関係の明確化による「見える化」、(2) 医療行政の地方分権化――という2点が都道府県化の意義であることを論じる。

さらに、(中)は(上)で挙げた背景や意義を踏まえつつ、各都道府県がどのように制度改革に臨んだのか、各都道府県が3月までに策定した運営方針を基に分析を試みるほか、(下)では主に1980年代以降の国民健康保険を巡る歴史を振り返ることで、都道府県化の意義を再考する。

■目次

1――はじめに~都道府県化を考える論点~
2――国民健康保険財政の概要
  1|複雑な国民健康保険財政の全体像
  2|多額の税財源が投入されている理由
3――なぜ都道府県化されたのか
  1|厚生労働省の説明資料
  2|財政安定化の目的
  3|医療費適正化の目的
4――都道府県化の意義(1)~負担と給付の関係の「見える化」~
  1|都道府県化による2つの意義
  2|保険料徴収の流れ
  3|納付金と標準保険料
  4|財政安定化基金の創設と一般会計繰入の制限
  5|保険料を統一する可能性
  6|負担と給付の明確化による「見える化」
5――都道府県化の意義(2)~医療行政の地方分権化~
  1|保険制度と提供体制の「両面」を見た対応
  2|保険料を統一した場合の想定
6――おわりに
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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     1995年4月~ 時事通信社
     2011年4月~ 東京財団研究員
     2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
     2023年7月から現職

    【加入団体等】
    ・社会政策学会
    ・日本財政学会
    ・日本地方財政学会
    ・自治体学会
    ・日本ケアマネジメント学会

    【講演等】
    ・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
    ・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

    【主な著書・寄稿など】
    ・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
    ・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
    ・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
    ・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
    ・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

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