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- 日本株に待ち受ける試練~日経平均3万円割れも~
2023年08月22日
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5――中国や米国の景気後退、円高のダブルパンチで日経平均株価3万円割れも
中国景気や米国景気の先行きも気掛かりだ。まず中国に関しては22年12月にゼロコロナ政策を解除したものの、その後の景気回復がおぼつかない。製造業PMIは4月以降4か月連続で好不況の境目となる50を下回った。7月の調査では対象企業の6割超が「需要不足に直面している」と回答している。一方、サービス業PMIは50以上を維持しているものの、3月の58.2をピークに7月の51.5まで低下した。
中国経済の急減速はアメリカなど向けの輸出が減速していることに加えて、内需の停滞が主な要因とされる。中国ではコロナ禍において企業を支援する政策が乏しく、中小企業を中心に200万社以上が倒産に追い込まれたとされる。その結果、若者の失業率が20%を超えており、将来不安から消費を抑制している。
中国経済の急減速はアメリカなど向けの輸出が減速していることに加えて、内需の停滞が主な要因とされる。中国ではコロナ禍において企業を支援する政策が乏しく、中小企業を中心に200万社以上が倒産に追い込まれたとされる。その結果、若者の失業率が20%を超えており、将来不安から消費を抑制している。
これに追い打ちをかけかねないのが中国における不動産バブルの崩壊だ。8月17日、経営再建中の中国不動産大手、恒大集団がニューヨークで破産を申請した。さらに、最大手の碧桂園(カントリー・ガーデン・ホールディングス)の資金繰り難も表面化した。
実は、恒大騒動真っ只中だった21年9月、中国国務院の韓正副総理が深圳にあるファーウェイ本社を訪れ、創業者の任正非氏に会った。その直前にはカナダに軟禁されていたファーウェイ副会長(当時、創業者の娘)を取り戻した。ところが、韓正副総理は同じ深圳市にある恒大には姿を見せなかった。
これは「長期発展戦略上、重要なファーウェイは助けるが、放漫経営で不動産バブルを作った恒大など知ったことではない」という中国政府(共産党)の意志の表れとみられている。「中国発のリーマンショックになりかねない」とも囁かれる今回、中国政府はどう出るか。日本への影響も含めて警戒が怠れない。
米国景気の先行きも楽観できない。利上げの効果や学生ローン返済猶予の終了に伴い消費が減速する懸念に加えて、米金融機関の破綻に伴う貸出厳格化により中小企業を中心に設備投資などが弱まる可能性が指摘されている。
足もとの米国景気は2023年4~6月のGDPが前期比年率2.4%増加するなど好調だが、いずれも実績値で過去のものだ。景気先行指数のひとつであるISM製造業景気指数は、22年11月以降9ヶ月連続で好不況の境目である50を下回っている。直近7月は46.4で。コロナショック直後の20年5月以来の低水準だ。
実は、恒大騒動真っ只中だった21年9月、中国国務院の韓正副総理が深圳にあるファーウェイ本社を訪れ、創業者の任正非氏に会った。その直前にはカナダに軟禁されていたファーウェイ副会長(当時、創業者の娘)を取り戻した。ところが、韓正副総理は同じ深圳市にある恒大には姿を見せなかった。
これは「長期発展戦略上、重要なファーウェイは助けるが、放漫経営で不動産バブルを作った恒大など知ったことではない」という中国政府(共産党)の意志の表れとみられている。「中国発のリーマンショックになりかねない」とも囁かれる今回、中国政府はどう出るか。日本への影響も含めて警戒が怠れない。
米国景気の先行きも楽観できない。利上げの効果や学生ローン返済猶予の終了に伴い消費が減速する懸念に加えて、米金融機関の破綻に伴う貸出厳格化により中小企業を中心に設備投資などが弱まる可能性が指摘されている。
足もとの米国景気は2023年4~6月のGDPが前期比年率2.4%増加するなど好調だが、いずれも実績値で過去のものだ。景気先行指数のひとつであるISM製造業景気指数は、22年11月以降9ヶ月連続で好不況の境目である50を下回っている。直近7月は46.4で。コロナショック直後の20年5月以来の低水準だ。
図表6のとおり、過去、ISM製造業景気指数が50を下回る期間が長引くと米国は景気後退意陥った。現在はまだ非製造業が52.7と50以上を維持しているので明確な景気後退ではないが、前述のように消費が減速した場合は本格的な景気後退に陥るリスクが高まると想定される。
米国の景気後退が意識されると、市場では米国株下落とドル安・円高が同時進行しかねず、日本株にはダブルパンチとなり得る。その場合、日経平均が3万円割れまで下落する可能性を指摘しておきたい。仮にAIバブルが続いて目先の株価が一段高になったとしても、深追いは禁物だ。
米国の景気後退が意識されると、市場では米国株下落とドル安・円高が同時進行しかねず、日本株にはダブルパンチとなり得る。その場合、日経平均が3万円割れまで下落する可能性を指摘しておきたい。仮にAIバブルが続いて目先の株価が一段高になったとしても、深追いは禁物だ。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年08月22日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
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