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- 不動産投資市場動向(2023年第2四半期)~物流施設とホテルへの投資が増加、投資戦略は賃収増に変化
2023年08月21日
国内全体の不動産取引の動向(2023年第2四半期)
とはいえ、国債金利が安定し、不動産価格が下落する懸念が少ない日本の不動産市場は他国の市場に比べて相対的に取引額が多い。2023年上期のアジア太平洋地域内の各国・地域への投資額は日本が最多で163億ドル(前年比▲25%)、都市別の投資額は東京が83.6億ドル(前年比▲26.4%)で域内1位(2022年通年も1位)、大阪が16.1億ドル(前年比▲16.2%)で9位(12位)となった(図表2)。
2023年上期の用途別の取引額が全体に占める割合は、物流施設が22.6%(+11.8%)、ホテルが12.8%(+5.8%)と増加したが、オフィスが27.2%(前年通年より▲9.7%)、賃貸マンションが15.1%(▲3.1%)、開発用地が11.8%(▲3.4%)と減少した(図表3)。
オフィスは海外市況の悪化から外国資本の投資が控えられているほか、国内市場では2025年の東京等の大都市での新規オフィス大量供給を控えて、これから2次空室の発生が予測され、先行きの不透明感が強くなっている。一方、物流施設への投資需要は依然として強く、第2四半期としては過去10年間で最高額となった。また、旅行需要の回復が続くホテルの取引も多くみられた。
2023年上期の用途別の取引額が全体に占める割合は、物流施設が22.6%(+11.8%)、ホテルが12.8%(+5.8%)と増加したが、オフィスが27.2%(前年通年より▲9.7%)、賃貸マンションが15.1%(▲3.1%)、開発用地が11.8%(▲3.4%)と減少した(図表3)。
オフィスは海外市況の悪化から外国資本の投資が控えられているほか、国内市場では2025年の東京等の大都市での新規オフィス大量供給を控えて、これから2次空室の発生が予測され、先行きの不透明感が強くなっている。一方、物流施設への投資需要は依然として強く、第2四半期としては過去10年間で最高額となった。また、旅行需要の回復が続くホテルの取引も多くみられた。
外国資本の国内不動産購入の動向(2023年第2四半期)
世界の不動産投資市場では取引額の減少が続いている。2023年第2四半期の世界の不動産売買額は約2,690億ドル(約39兆円)、前年同期比▲47.4%となった。エリア別ではアジア太平洋が▲30.1%、ヨーロッパ・中東・アフリカが▲57.2%、南北アメリカが▲62.4%といずれも減速しているが、アジア太平洋の落ち込みが比較的緩やかな状態が続いている(図表4)。国別では資金力のある先進国のほとんどで取引額が停滞している。自国の不動産市況が低調な中では他国への積極的な投資も進みにくい。
ただし、このような状況のなかでも用途や国・地域を選別して投資している投資家もいる。英国のオルタナティブ投資データの会社であるプレキンの調査によると、2023年第2四半期の世界の投資家の不動産投資戦略(今後12ヶ月)は、コア(48%、前年同期比▲7%)と、コア・プラス(40%、前年同期比▲7%)が減少し、バリュー・アッドが56%(前年同期比+12%)に増加した(図表5)。つまり、世界的な不動産価格の下落傾向から不動産投資戦略は「高額であっても優良な物件に長期投資する方針」から変化し、「収益性が高まる見込みの不動産に投資して賃料を引き上げ、資産価値を向上させる方針」が主流となっている。
ただし、このような状況のなかでも用途や国・地域を選別して投資している投資家もいる。英国のオルタナティブ投資データの会社であるプレキンの調査によると、2023年第2四半期の世界の投資家の不動産投資戦略(今後12ヶ月)は、コア(48%、前年同期比▲7%)と、コア・プラス(40%、前年同期比▲7%)が減少し、バリュー・アッドが56%(前年同期比+12%)に増加した(図表5)。つまり、世界的な不動産価格の下落傾向から不動産投資戦略は「高額であっても優良な物件に長期投資する方針」から変化し、「収益性が高まる見込みの不動産に投資して賃料を引き上げ、資産価値を向上させる方針」が主流となっている。
今後は国内外の貸出債権の処理動向に注意か
世界の不動産市場では、オフィス用途を中心に厳しい投資環境が続いている。これに対して、好調を維持する国内不動産市況が、世界の不動産市況の影響をどのくらい受けるのかが目下の着目点だろう。
2023年第2四半期の国内不動産投資市場では外国資本を中心にオフィスへの投資需要が減退し、代わりに物流施設とホテルの取引が増加して、全体の取引額減少を補った。この結果、国内不動産投資市況は比較的安定して推移している。
MSCIリアル・キャピタル・アナリティクスのレポートでは「東京都心5区オフィスの利回りは、ゆっくりと上昇し始めた」との記述はある2ものの、国内キャップレートについての主要な公表データである日本不動産研究所やCBREのレポートでは利回りの上昇はまだ確認できない。また、仮に理論上のキャップレートが上昇し始めているとしても、実際に所有者が下落した価格で不動産を売却しなければキャップレートの上昇が取引事例として顕在化することはない。つまり、売買数量の停滞はあるものの、現時点では国内不動産の価格の上昇傾向が大きく転換しているわけではないと考えることができる。
仮に市況が大きく転換するとすれば、従来の水準よりも下落した価格で売買が成立するようになる前に、それを見越して不動産取得資金の借入金の債権者による債権売却などの処理が発生し始めたときだろう。アジア太平洋地域内に拠点を置く不動産投資家の一部には、このような不動産関連の債権売却や借り換えの獲得を海外不動産市場における今後の戦略とするケースも増加している。国内不動産投資市場の今後については、海外市場と同様なことが起きるかどうか、国内不動産を担保とする貸出債権の動向に注意したい。
2 取引事例から得られた利回りのトレンドを把握したものではあるが、市況のトレンドと見るには追加の事例の蓄積が必要だろう。
2023年第2四半期の国内不動産投資市場では外国資本を中心にオフィスへの投資需要が減退し、代わりに物流施設とホテルの取引が増加して、全体の取引額減少を補った。この結果、国内不動産投資市況は比較的安定して推移している。
MSCIリアル・キャピタル・アナリティクスのレポートでは「東京都心5区オフィスの利回りは、ゆっくりと上昇し始めた」との記述はある2ものの、国内キャップレートについての主要な公表データである日本不動産研究所やCBREのレポートでは利回りの上昇はまだ確認できない。また、仮に理論上のキャップレートが上昇し始めているとしても、実際に所有者が下落した価格で不動産を売却しなければキャップレートの上昇が取引事例として顕在化することはない。つまり、売買数量の停滞はあるものの、現時点では国内不動産の価格の上昇傾向が大きく転換しているわけではないと考えることができる。
仮に市況が大きく転換するとすれば、従来の水準よりも下落した価格で売買が成立するようになる前に、それを見越して不動産取得資金の借入金の債権者による債権売却などの処理が発生し始めたときだろう。アジア太平洋地域内に拠点を置く不動産投資家の一部には、このような不動産関連の債権売却や借り換えの獲得を海外不動産市場における今後の戦略とするケースも増加している。国内不動産投資市場の今後については、海外市場と同様なことが起きるかどうか、国内不動産を担保とする貸出債権の動向に注意したい。
2 取引事例から得られた利回りのトレンドを把握したものではあるが、市況のトレンドと見るには追加の事例の蓄積が必要だろう。
(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経歴
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
(2023年08月21日「不動産投資レポート」)
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