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- 不動産投資市場動向(2023年第1四半期)~不動産売買は急減速。国内市場外で高まるリスクに注視
コラム
2023年06月13日
国内全体の不動産取引の動向(2023年第1四半期)
過去5年程の都市別の取引額は、概算で東京が約5割、大阪が約1割、東京以外の関東が1~2割、その他が約2~3割であった。しかし、直近の動向を見ると、東京への投資割合は2022年第1四半期が66%、2023年第1四半期が67%となっており、東京への投資割合が増加している。不動産の価格は市況後退局面において、競争力の高い物件・エリアほど価格が下落しにくい傾向があるため、東京に取引が集中しているということから、不動産投資市場でリスク回避的な動きが強まっていると見ることもできる。
用途別の不動産取引額が全体に占める割合は、開発用地は10%(2022年10月から▲9%)、オフィスが30%(同▲6%)、賃貸マンションは15%(同▲3%)、と減少する一方で、物流施設が21%(同+14%)に増加した。オフィス賃貸市場の低迷や減速懸念の発生とともに、これまで強かった賃貸マンションへの投資需要が一服し、消去法的に物流施設への投資需要が高まっていると見られる。
用途別の不動産取引額が全体に占める割合は、開発用地は10%(2022年10月から▲9%)、オフィスが30%(同▲6%)、賃貸マンションは15%(同▲3%)、と減少する一方で、物流施設が21%(同+14%)に増加した。オフィス賃貸市場の低迷や減速懸念の発生とともに、これまで強かった賃貸マンションへの投資需要が一服し、消去法的に物流施設への投資需要が高まっていると見られる。
外国資本の国内不動産購入の動向(2023年第1四半期)
前の期である2022年第4四半期の購入額をみると約500億円の増額修正がされており、一旦は2023年の取引と公表されたが、実際には2022年内の取引であったことが判明した案件が多かったようだ。売り主の内訳を見ると、外国資本の売却が48.1%と、2022年通年の25.9%より大幅に増加している。諸外国では、12月が決算期末である会社が相対的に多いため、12月には財務改善目的の売却希望が生じやすい。「2022年の決算期内で現金または売り上げを確保する必要があり、市場価格が下落していない日本国内の不動産を売却した外国資本(売り主)」と、「価格が安定した日本の不動産への投資姿勢を強めた外国資本(買い主)」が一定数あったものと推定される。
世界の不動産投資市場の動向と外国資本の拠点別の動向
世界の不動産投資市場をみると、売買額が急減速している。2023年第1四半期の全世界の不動産売買額は2,108億ドル、前年同期比▲51.8%と、2022年第4四半期から2四半期連続の前年同期比大幅減となった。またエリア別ではヨーロッパ・中東・アフリカは▲64.0%、南北アメリカは▲57.8%であるのに対し、アジア太平洋は▲35.6%と比較的少ない減少幅となった。国内不動産市場よりも世界全体のほうが取引額の落ち込みが大きく、特に海外の不動産投資市場および賃貸市場が停滞している国・都市に拠点を持つ外国資本には、昨年よりも不動産に投資しづらい環境になっているようだ。
過去の各資本の拠点国・地域別の投資額をみると、米国拠点の外国資本のシェアが全体の4割強を占めており、シンガポールと香港拠点の外国資本も以前から全体の各1割程度を投資している。また、ここ3年ほどで英国とフランス(5%前後程度)がシェアを増加させている(図表3)。
過去の各資本の拠点国・地域別の投資額をみると、米国拠点の外国資本のシェアが全体の4割強を占めており、シンガポールと香港拠点の外国資本も以前から全体の各1割程度を投資している。また、ここ3年ほどで英国とフランス(5%前後程度)がシェアを増加させている(図表3)。
コロナ禍前後の動向を見るために、各国・地域の2018年の購入総額を100として、4四半期移動平均を比較すると1、コロナ禍で増加させた投資額を以前の水準に戻しつつあるのは米国とフランスである。2023年第1四半期は、米国が138.0と、フランスが127.5となり、前年比、前々年比では低下しているものの、長い目で見れば投資姿勢が極端に弱まったわけではない。また、香港が693.2、シンガポールが905.8、英国が203.7と、国内不動産市場への投資姿勢を強めている(図表4)。一方で、中国は5.8と投資を大きく減少させている。中国資本については、以前の直接投資から、いずれかの国や地域を経由しての投資へと資金の流れが変わった可能性がある。
なお、同じ国・地域でも、事業者の判断や運営するファンドの運用方針によっても投資スタンスが異なり、外国資本とひとくくりにした一様の傾向を見つけるのは特に難しい局面と考える。
なお、同じ国・地域でも、事業者の判断や運営するファンドの運用方針によっても投資スタンスが異なり、外国資本とひとくくりにした一様の傾向を見つけるのは特に難しい局面と考える。
1 例えば、2023年第1四半期であれば2022年4月1日から2023年3月31日までの合計と2018年の取引総額を比較した。
以前よりも崩れにくい不動産投資市場と、海外および市場外のリスクの高まり
以前の不動産投資市場なら、(1)同じ物件が何度も転売されて一定の需要を満たすとともに、(2)転売が繰り返された物件の価格が高まりすぎたどこかのタイミングで資金繰りに窮した企業が損失覚悟で不動産を売却し、(3)そういった投げ売りの事例が増えて不動産の価格水準が下落し、(4)市況が停滞する、といった一定のサイクルが見られた。
しかし、現在の不動産投資市場は、以前に比べて格段に崩れにくくなっている。理由の一つは、国内外のREIT、政府系投資機関、私募リートなど、長期保有目的で、一度不動産を取得すれば容易に転売しない投資家や事業者が増加していることだろう。市場に供給される物件の数は以前より少なく、高値かつ品薄な状態が継続し、物件取得競争に拍車がかかっている。都心部の競争力のある物件であれば驚くような価格で落札されることが珍しくなく、仮に1度目の売却活動が不調であっても売り主は別の購入希望者を容易に見つけることができる状況にある。
一方で物件やエリアにより2極化しており、郊外部のオフィスなどの買い手がなかなか現れない物件もあるようだ。海外不動産投資市場や、金利、経済情勢の動向など、外部の金融環境から国内不動産投資市場の停滞を招く要因の懸念も高まっており、しばらくは多角的に情勢を注視する必要があると考える。
しかし、現在の不動産投資市場は、以前に比べて格段に崩れにくくなっている。理由の一つは、国内外のREIT、政府系投資機関、私募リートなど、長期保有目的で、一度不動産を取得すれば容易に転売しない投資家や事業者が増加していることだろう。市場に供給される物件の数は以前より少なく、高値かつ品薄な状態が継続し、物件取得競争に拍車がかかっている。都心部の競争力のある物件であれば驚くような価格で落札されることが珍しくなく、仮に1度目の売却活動が不調であっても売り主は別の購入希望者を容易に見つけることができる状況にある。
一方で物件やエリアにより2極化しており、郊外部のオフィスなどの買い手がなかなか現れない物件もあるようだ。海外不動産投資市場や、金利、経済情勢の動向など、外部の金融環境から国内不動産投資市場の停滞を招く要因の懸念も高まっており、しばらくは多角的に情勢を注視する必要があると考える。
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(2023年06月13日「研究員の眼」)
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03-3512-1853
経歴
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
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