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- Z世代を1000文字くらいで語りたい-「タンピン族」ってなんだろう?
2023年08月08日
1―「タンピン族」って聞いたことがありますか?
タンピン族という言葉を聞いたことがあるだろうか。躺平(タンピン)とは中国語で「寝そべる」という意味で、そこから「欲張らない」「頑張らない」「競争しない」という意味に転じ、中国のZ世代にて広まっている競争社会や行き過ぎた消費社会に抵抗するライフスタイルのことを指す。そして、このようなライフスタイルを志向し、「家を買わない」「車を買わない」「恋愛しない」「結婚しない」「子供を作らない」「低水準の消費」をモットーに低意欲、低欲望の生活を送っている人々はタンピン族と呼ばれている。タンピンという語は、2021年4月17日に中国のインターネット掲示板「百度貼吧」に「寝そべりは正義だ」と投稿されたことがきっかけとなり、その言葉に対して多くの若者が共感したことで、ネット上の流行として拡散された。同投稿では「この2年間、まったく仕事をせずに遊んでいるが、何も間違っているとは思わない」と始まり、現代社会では身近な人と比較されることや結婚や出産を重視する伝統的観念によって人びとが圧力を受けていると指摘し、「人間はそうある必要はない」と呼びかけている。
2―日本の若者の○○離れとの違い
また、昨今ではタイムパフォ-マンスやコストパフォーマンスの点から、結婚することや子どもを持つことに抵抗感を示すものもいる。ただ、日本におけるこれらの若者の消費に対する消極性や結婚などのライフイベントに対して費用対効果を考える背景は、中国でタンピンの思想が支持されている理由とは異なる。若者離れが進んでいると言われているモノも、極論するとどれもタダでもらえたり、実現する上でコストがかからない商品やサービスであるならば、拒む人などそんなにいないのではないだろうか。だとすると、そのモノやそのようなサービス自体が拒まれているわけではなく、自分自身の生活や収入などを考慮したうえで「必要ない」「購入する事が出来ない」「実現が難しい」と判断し、自らの意思をもって消費行動に移していないだけにすぎない。自身にとって不必要な消費をすることにより、生活が困窮するくらいなら消費しない、という価値観が生じることは至極当たり前だといえる。つまり日本におけるこれらの消費に対する価値観は「不景気(余裕のある生活を送ることができないこと)」が大きな要因となっているのだ。
しかし、中国におけるタンピン主義は、社会抗議運動としての側面を有しており、自身の生活水準を引き下げることで、消費社会に抗い、資本家たちに搾取されることを拒むという意思の表れであり、厳しい受験戦争、学歴社会、就職困難、996工作制(朝9時から夜9時まで週6日間勤務)による過労とそれに見合わない賃金、世間から期待される結婚や出産など、「こうあるべき」という伝統的な価値観に対して、サイレントデモの様に無関心の態度を示しているともいえる。
また、社会の階層はすでに固定化されているため格差は広がり、生活費が高騰する中で、伝統的な意味での成功(こうあるべき)は手の届かないものになりつつある。2015年まで続いた「一人っ子政策」時代に生まれた世代にとっては、親の期待を一身に受けてプレッシャーに苦しんできたけれども、頑張っても報われないという閉塞感から解放されたいという意味合いでタンピン主義を支持する者も多い。つまるところ、日本における若者の消極的な消費志向は、自身の環境下における支出の合理化や自分が困窮した生活を送らないようにするための選択の結果と言えるが、タンピン族は社会や政府への抵抗の結果と言えるだろう。
同じZ世代で、同じように消費に対して消極的であっても、国によってその本質は異なる。また、北米においては主にZ世代の思想や政治へのスタンス、多様化する社会での役回りなどに焦点が当てられることが多いが、日本におけるZ世代論は概ね彼ら・彼女たちが何に興味があり、何を消費したいのか、という消費の側面が大きい。Z世代という言葉も、その言葉自体がその国で主に何を意図して使われているかというのは、それぞれの国の事情に強く影響を受けるのだ。
しかし、中国におけるタンピン主義は、社会抗議運動としての側面を有しており、自身の生活水準を引き下げることで、消費社会に抗い、資本家たちに搾取されることを拒むという意思の表れであり、厳しい受験戦争、学歴社会、就職困難、996工作制(朝9時から夜9時まで週6日間勤務)による過労とそれに見合わない賃金、世間から期待される結婚や出産など、「こうあるべき」という伝統的な価値観に対して、サイレントデモの様に無関心の態度を示しているともいえる。
また、社会の階層はすでに固定化されているため格差は広がり、生活費が高騰する中で、伝統的な意味での成功(こうあるべき)は手の届かないものになりつつある。2015年まで続いた「一人っ子政策」時代に生まれた世代にとっては、親の期待を一身に受けてプレッシャーに苦しんできたけれども、頑張っても報われないという閉塞感から解放されたいという意味合いでタンピン主義を支持する者も多い。つまるところ、日本における若者の消極的な消費志向は、自身の環境下における支出の合理化や自分が困窮した生活を送らないようにするための選択の結果と言えるが、タンピン族は社会や政府への抵抗の結果と言えるだろう。
同じZ世代で、同じように消費に対して消極的であっても、国によってその本質は異なる。また、北米においては主にZ世代の思想や政治へのスタンス、多様化する社会での役回りなどに焦点が当てられることが多いが、日本におけるZ世代論は概ね彼ら・彼女たちが何に興味があり、何を消費したいのか、という消費の側面が大きい。Z世代という言葉も、その言葉自体がその国で主に何を意図して使われているかというのは、それぞれの国の事情に強く影響を受けるのだ。
03-3512-1776
経歴
- 【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
ニッセイ基礎研究所入社
・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員
【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会
(2023年08月08日「基礎研マンスリー」)
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