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2023年08月03日
オタク×色-「推し色」からみる推し活市場の広がり
03-3512-1776
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5――オタクにとって「色」はどのような意味があるのか
その意味を考察する前に、推しのイメージカラーについて触れる必要がある。1970年代に散見されたアイドルファンの団体である「親衛隊」8は独自のグッズや方法でお気に入りのアイドルを応援していた。その系譜を特にジャニーズファンは踏んでおり、自身の応援するアイドルの色を基調としたファッションやうちわ、ブロマイドを装備してコンサートに行く傾向がある9。これには、自身が誰のファンであるのかという識別機能や、同じ対象を応援する他のファン(愛好家、同担)と交流を持ちたくないという姿勢を指す「同担拒否」10を可視化するなどの機能を擁している11。
また、今やアーティストのコンサートの定番となったサイリウムも、特にグループアイドルにおいては自分が誰を応援しているのかを、アイドル本人に対してアピールする上でも「色」はオタクとアーティストをつなぐ重要な要素となっていった。現実に存在するアーティストに限らず、マンガやアニメの世界においても登場するキャラクターの服装や髪の色からイメージカラーが設定されることが多く、例えば赤塚不二夫生誕80周年記念として制作され、2015年10月に放送スタートした大ヒットTVアニメ「おそ松さん」は、登場する6つ子それぞれイメージカラーが設定されており、公式グッズのみならず、おそ松さんファンへのアプローチを意識したグッズや日用品においてもそれぞれのイメージカラーが実装され、「それぞれの色を揃えました」「6つ子ファン必見」といったポップでファンの購買意欲を刺激していた。
この頃から元々アイドルファン界隈を中心に行われていた「色」による識別は、アニメやマンガ市場においても強く意識されるようになり12、持ち歩くカバンや持ち物、服装、自身の髪の色に至るまで自分がどの色が好きか=どのキャラクターが好きか、というメッセージを他人に仄めかしたり、その色に囲まれている=推しキャラクターの概念に囲まれているから幸せ、安心するといった安寧感が期待されており、推し活をする者にとって自分の好きなキャラクターの色を消費することは、推しと自身との間に自分だけの意味を見出す要素になっていると筆者は考える。
また、アクリルスタンドやぬいぐるみ、ブロマイド等を持ち歩いて、旅行先で写真に収めたり、食事する際に机に置いておくと言った行動は以前よりオタクの中では散見されていた。これはいつでも推しが近くにいてくれるという喜びや、日常の何気ない1シーンも推しがいれば華やかになるといったことが期待されており13、推しという存在が彼らにとってなくてはならないモノであるという事を象徴している行動であると言える。このような背景から自分の推しを見栄え良く撮影できる施設や推しのイメージカラーのフードと写真を撮るという行為は、ある意味誰かを推しているからこそできる特権でもあり、そのような場所に足を運ぶことで、誰かを推しているという事実に喜びを得たり、色を通して推しとの間に繋がりを見出しているのだと、筆者は考える。これも、前述した自分の好きなモノに対して向き合うという意味での推し活同様に、直接コンテンツを消費するわけではないが、自分なりの意味を見出し、そこでの体験が精神的充足に繋がっているのだろう。
また、今やアーティストのコンサートの定番となったサイリウムも、特にグループアイドルにおいては自分が誰を応援しているのかを、アイドル本人に対してアピールする上でも「色」はオタクとアーティストをつなぐ重要な要素となっていった。現実に存在するアーティストに限らず、マンガやアニメの世界においても登場するキャラクターの服装や髪の色からイメージカラーが設定されることが多く、例えば赤塚不二夫生誕80周年記念として制作され、2015年10月に放送スタートした大ヒットTVアニメ「おそ松さん」は、登場する6つ子それぞれイメージカラーが設定されており、公式グッズのみならず、おそ松さんファンへのアプローチを意識したグッズや日用品においてもそれぞれのイメージカラーが実装され、「それぞれの色を揃えました」「6つ子ファン必見」といったポップでファンの購買意欲を刺激していた。
この頃から元々アイドルファン界隈を中心に行われていた「色」による識別は、アニメやマンガ市場においても強く意識されるようになり12、持ち歩くカバンや持ち物、服装、自身の髪の色に至るまで自分がどの色が好きか=どのキャラクターが好きか、というメッセージを他人に仄めかしたり、その色に囲まれている=推しキャラクターの概念に囲まれているから幸せ、安心するといった安寧感が期待されており、推し活をする者にとって自分の好きなキャラクターの色を消費することは、推しと自身との間に自分だけの意味を見出す要素になっていると筆者は考える。
また、アクリルスタンドやぬいぐるみ、ブロマイド等を持ち歩いて、旅行先で写真に収めたり、食事する際に机に置いておくと言った行動は以前よりオタクの中では散見されていた。これはいつでも推しが近くにいてくれるという喜びや、日常の何気ない1シーンも推しがいれば華やかになるといったことが期待されており13、推しという存在が彼らにとってなくてはならないモノであるという事を象徴している行動であると言える。このような背景から自分の推しを見栄え良く撮影できる施設や推しのイメージカラーのフードと写真を撮るという行為は、ある意味誰かを推しているからこそできる特権でもあり、そのような場所に足を運ぶことで、誰かを推しているという事実に喜びを得たり、色を通して推しとの間に繋がりを見出しているのだと、筆者は考える。これも、前述した自分の好きなモノに対して向き合うという意味での推し活同様に、直接コンテンツを消費するわけではないが、自分なりの意味を見出し、そこでの体験が精神的充足に繋がっているのだろう。
8 平山朝治(2018)「〈論説〉アイドル150年:アイドルブームと長期波動」『筑波大学経済学論集』70, pp.1-123.
9 徳田真帆(2010)「ジャニーズファンの思考」『くにたち人類学研究』5, pp.21-46.
10 オタクのコミュニティやインターネットで使用されるジャーゴン(専門用語)。昨今ではメディアで散見されることも増
えた。
11 コンテンツ市場で消費されているモノの多くは、食品のような一般消費財市場とは対極的で、どちらかと言うとブラン
ド品のような贅沢品市場に性質が似ている。珍しいグッズやイベントほど希少価値が高く、価値も高騰する。その結果、購入する際の倍率も上がるため、購入機会を死守するために、他のオタクを排除しようとするオタクも存在する。併せて自身の方がそのキャラクターやコンテンツに対する愛が強まると「ガチ恋勢」と呼ばれるような、真剣にそのキャラクターを恋愛対象としてみる者や、他のオタクが自身の推しを応援しているのを見てやきもちを焼いたり、自分以外のオタクに対してファンサービスするのを見て嫉妬したりする者もいる。同担拒否の根底にはそのキャラクターや芸能人を「独占」したいという欲求があると言える。
12 それ以前からもコンテンツによってはアニメやマンガのキャラクターの推し色がグッズに反映されることはあったし、キャラクターのイメージカラーに留まらず、キャラクターが所属するチームカラーがグッズやファンの持ち物に反映されていたことがあったことは留意したい。ただここで筆者が言いたいのは公式グッズに留まらず、例えばアパレル店で靴下や、雑貨屋などで箸やカップに至るまで推しカラーを意識した商品展開やプロモーションが意識されるようになったのは「おそ松さん」がヒットした頃からであったという点である。
13 他人へのオタクアピールや、そのような行動をすることで自分はオタクであると再帰的に認識するきっかけとしている者もいる。
6――直接コンテンツを消費しない意味
このように、昨今の推し活市場は、公式グッズ、推し活充足グッズ、推し色グッズの3つが主な消費対象と言えるのではないだろうか。公式グッズを買う事が主な推し活・オタ活であった従来の推し活市場においては、当然のことならがそのコンテンツを嗜好しているもの以外、そのグッズを買う事もなかったし、コンセプトカフェにおいても、そのファン以外足を運ぶことはなかった。
しかし、推し活充足グッズや推し色グッズは、誰か特定のキャラクターやコンテンツがデザインされているわけではなく、その色が明確に誰を示しているのか、提供サイドが提示していないが故に、アイドル、アニメ、マンガなど、今やどのコンテンツにおいてもそれぞれのキャラクターがイメージカラーを持っているため、「推し活充足グッズ」「推し色」という直接コンテンツを消費しない市場が、様々なジャンルのオタクにとっての大きな受け皿となっているわけだ。ある意味直接コンテンツを消費する側面以上に、自分流で応援したり、推しを持ち運びしたりすることで得られる自己満足やそこから自分が意味を見出すことも推し活にとっての重要な要素になっているのだろう。
公式グッズの購入やイベントへの参加は費用が掛かるため、支出に限度があるオタクからしたら、そのような自己満足の消費は、限られた中でできる推しとの接点なのかもしれないし、オタク的な趣味が多いが故に推し活する対象が流動的に変化する者にとっては、グッズという有形物を所有することは心理的負担となり、アクリルスタンドやトレカデコなどを持ち歩き、推しのイメージカラーという概念を消費することだけでも、十分なのかもしれない。オタクという言葉が大衆化し、推し活やオタ活がよりカジュアルに行われるようになったからこそ、自己満足の側面での推し活だけで満足できてしまう者も増えたのだろう。
筆者自身過去のレポート14で記した通り、今後益々他人の存在に自分にとっての意味を見出し、エンターテインメント性や生きがいを見出そうとするものが増えていくと考える。その中で今回紹介したような、推しとの繋がりを見出すきっかけを与える「概念」はより需要が高まるだろう。
14 廣瀨涼「現代消費潮流概論-消費文化論からみるモノ・記号・コト・トキ・ヒト消費-」2022/01/19
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=69930?site=nli
しかし、推し活充足グッズや推し色グッズは、誰か特定のキャラクターやコンテンツがデザインされているわけではなく、その色が明確に誰を示しているのか、提供サイドが提示していないが故に、アイドル、アニメ、マンガなど、今やどのコンテンツにおいてもそれぞれのキャラクターがイメージカラーを持っているため、「推し活充足グッズ」「推し色」という直接コンテンツを消費しない市場が、様々なジャンルのオタクにとっての大きな受け皿となっているわけだ。ある意味直接コンテンツを消費する側面以上に、自分流で応援したり、推しを持ち運びしたりすることで得られる自己満足やそこから自分が意味を見出すことも推し活にとっての重要な要素になっているのだろう。
公式グッズの購入やイベントへの参加は費用が掛かるため、支出に限度があるオタクからしたら、そのような自己満足の消費は、限られた中でできる推しとの接点なのかもしれないし、オタク的な趣味が多いが故に推し活する対象が流動的に変化する者にとっては、グッズという有形物を所有することは心理的負担となり、アクリルスタンドやトレカデコなどを持ち歩き、推しのイメージカラーという概念を消費することだけでも、十分なのかもしれない。オタクという言葉が大衆化し、推し活やオタ活がよりカジュアルに行われるようになったからこそ、自己満足の側面での推し活だけで満足できてしまう者も増えたのだろう。
筆者自身過去のレポート14で記した通り、今後益々他人の存在に自分にとっての意味を見出し、エンターテインメント性や生きがいを見出そうとするものが増えていくと考える。その中で今回紹介したような、推しとの繋がりを見出すきっかけを与える「概念」はより需要が高まるだろう。
14 廣瀨涼「現代消費潮流概論-消費文化論からみるモノ・記号・コト・トキ・ヒト消費-」2022/01/19
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=69930?site=nli
(2023年08月03日「基礎研レポート」)
03-3512-1776
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