2023年07月21日

米インフレ低下に弾み-消費者物価の総合指数は順調に低下、コアインフレの低下スピードは今後の賃金動向が鍵

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
 
  1. 米国の消費者物価(CPI)は総合指数が23年6月に前年同月比+3.0%と21年3月以来の水準に低下。物価の基調を示すコア指数は年初から概ね横這いと、高止まりが続いていたが6月は+4.8%と前月の+5.3%から低下し、21年10月以来の水準となるなど明確に低下。
     
  2. 6月のCPIの内訳はエネルギーや食料品価格の低下が続く中、23年3月を底に反発に転じていたコア財価格も4ヵ月ぶりに低下。また、コアサービス価格は+6.2%と依然高水準も23年2月の+7.3%から4ヵ月連続で低下し、22年8月以来の水準。
     
  3. コア財価格は供給制約の解消や自動車生産の回復に伴い中古車価格が下落に転じており、今後も物価は低位安定が見込まれる。
     
  4. コアサービス価格は、これまで物価を押し上げてきた住居費の低下が見込まれる一方、労働需給の逼迫を背景に賃金上昇圧力が燻っており、今後の低下スピードは賃金動向が鍵を握るとみられる。
     
  5. CPIの総合指数はウクライナ侵攻に伴うエネルギーや食料品価格の高騰が回避される前提で低下基調は持続するとみられる。一方、コア指数は労働需給の逼迫を背景とする賃金の高止まりから、当面はFRBの物価目標(2%)を上回る状況が続こう。

 
(図表1)消費者物価主要指数
■目次

1.はじめに
2.米国のCPI等の動向
  (6月CPIの振り返り)物価の基調を示すコア指数が明確に低下
  (原油・商品価格)原油・商品価格は22年6月から大幅に低下
  (生産者物価)財価格中心に低下も、サービス価格は足元で横這い推移
  (コア財価格)上昇要因となっていた供給制約や中古車価格の上昇は緩和
  (コアサービス価格(住居費))住居費は高水準もピークアウトした可能性
  (コアサービス価格(除く住居費))ピークアウトも今後は賃金動向が左右
  (期待インフレ率)金融市場や専門家調査はインフレの緩やかな低下を予想
3.今後の見通し
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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