2023年06月02日

米住宅市場に回復の兆し-住宅ローン金利の低下もあって、住宅指標の一部に改善の兆し。ただし、本格的な回復には程遠い

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
 
  1. 実質GDPにおける住宅投資は23年1‐3月期が前期比年率▲5.4%(前期:▲25.1%)と8期連続のマイナス成長となったものの、前期からは大幅にマイナス幅が縮小した。住宅着工件数(3ヵ月移動平均、3ヵ月前比年率)も4月は1年ぶりに増加に転じた。
     
  2. また、新築住宅販売件数が昨年夏場を底に、中古住宅販売件数も年初から反発するなど、一部の住宅関連指標は住宅市場が底入れした可能性を示唆。
     
  3. 一方、高騰していた住宅価格は前年同月比で昨年の春以降は低下基調が持続しているものの、足元では前月比で住宅価格が上昇。
     
  4. 住宅ローン金利が22年11月の7.1%台で頭打ちし、住宅ローン需要を増加させた一方、3月上旬のシリコンバレー銀行の破綻をきっかけに広がった金融不安から中堅銀行に対するリスク管理が強化されることが不可避となっており、住宅ローンの貸出基準の厳格化が住宅ローン需要の足枷となる可能性。
     
  5. 住宅ローン金利はFRBによる政策金利の打ち止めから、来年にかけて低下が見込まれることに加え、住宅価格が落ち着くことで住宅需要を回復させることが見込まれる。一方、住宅ローン貸出基準の厳格化に加え、年後半から来年にかけて景気後退が見込まれる中で雇用不安が住宅需要を低下させる可能性がある。このため、足元で住宅市場の底入れの兆しを示す住宅関連指標がみられるものの、住宅市場の本格的な回復には程遠いだろう。

 
(図表1)住宅着工件数と実質住宅投資の伸び率
■目次

1.はじめに
2.住宅市場の動向
 (住宅投資、住宅着工・許可件数)足元で戸建て中心に回復の兆し
 (新築・中古住宅販売)最悪期は脱したものの、足元で明暗
 (住宅価格)住宅価格は前年同月比での低下基調が持続も、足元では価格上昇に転じた可能性
 (住宅ローン)住宅ローン金利の低下は追い風とみられるものの、懸念される貸出厳格化の影響
 (住宅購入センチメント指数)住宅需要の改善を示唆
3.今後の見通し
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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