2023年07月12日

企業物価指数2023年6月~輸入物価の下落が進む~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1. 国内企業物価指数の前年比は6ヵ月連続で伸びが鈍化

企業物価指数の推移 日本銀行が7月12日に発表した企業物価指数によると、2023年6月の国内企業物価の前年比は4.1%(5月:同5.2%)と6ヵ月連続で伸びが鈍化した。

内訳をみると、繊維製品が前年比8.2%と前月(同6.7%)から伸びが高まっている。一方、5月に再生可能エネルギー賦課金の減額によって押し下げられた電力・都市ガス・水道が前年比5.3%と前月(同12.8%)から伸びがさらに縮小した。
国内企業物価の前月比は▲0.2%と2ヵ月連続でマイナスとなった。内訳をみると23類別中、7類別が上昇し、11類別が低下、5類別で横ばいとなった。石油・石炭製品は前月比2.8%と前月の同▲0.7%からプラスに転じたほか、鉱産物は同0.0%と前月の同▲1.7%のマイナスから脱した。一方、電力・都市ガス・水道は前月比▲5.0%と前月の同▲8.5%からマイナス幅は低下したものの大きくマイナスとなったほか、生産用機器は同▲0.1%と前月の同0.8%からマイナスに転じ、窯業・土石製品は同0.2%と前月の同1.5%から伸びが鈍化した。
国内企業物価指数の推移/国内企業物価指数の前月比寄与度分解

2. 輸入物価の前月比は2ヵ月ぶりのマイナス

輸入物価指数変化率の要因分解(契約通貨ベース) 2023年6月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比▲3.1%(5月:同▲0.3%)と9ヵ月連続のマイナスとなった。また、2023年6月の円相場(対ドル)は前月比2.8%の円安水準となったため、円ベースでは前月比▲1.2%(5月:同2.0%)と契約通貨ベースよりマイナス幅が小さかった。また円ベースの前年比は▲11.3%(5月:▲5.6%)と二桁のマイナスとなった。

契約通貨ベースで輸入物価の内訳をみると、電気・電子機器が前月比0.1%と前月の同▲0.1%からプラスに転じたほか、木材・木製品・林産物が同▲0.1%と前月の同▲3.2%からマイナス幅が縮小した。一方、石油・石炭・天然ガスは前月比▲8.4%(4月:同▲1.4%)と、9ヵ月連続でマイナスとなり、マイナス幅が大きく拡大したほか、金属・同製品が同▲3.0%(4月:同2.7%)とマイナスに転じた。資源高や円安の一服で輸入物価は多くの品目で下落傾向にあり、インフレ圧力は弱まっている。今後も引き続き下落基調となる可能性が高い。

3. 今後も国内企業物価指数の前年比は縮小していく

国内企業物価指数の前年比寄与度分解 川下段階における物価上昇圧力は依然として残っているが、資源高が一服したことにより、輸入物価は下落基調にあり、川上段階のインフレ圧力は弱まっている。国内企業物価の先行きは前年の高い伸びの裏がでることもあり、さらに縮小するだろう。


 
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2023年07月12日「経済・金融フラッシュ」)

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