2023年06月30日

鉱工業生産23年5月-4-6月期は3四半期ぶりの増産へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.生産指数は4ヵ月ぶりの低下

経済産業省が6月30日に公表した鉱工業指数によると、23年5月の鉱工業生産指数は前月比▲1.6%(4月:同0.7%)と4ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.9%、当社予想も同▲0.9%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比▲0.6%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比1.5%と2ヵ月ぶりの上昇となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 なお、鉱工業指数は23年4月確報公表時に15年基準から20年基準に切り替えられている。

5月の生産を業種別に見ると、4月に前月比▲6.3%と大きく落ち込んだ生産用機械は同3.6%の上昇となったが、グローバルなITサイクルの調整を反映し低迷が続いている電子部品・デバイスが同▲4.0%の低下となったほか、供給制約の緩和から持ち直しの動きが続いていた自動車が同▲8.9%と大きく落ち込んだ。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は23年1-3月期の前期比▲6.5%の後、4月が前月比1.1%、5月が同2.6%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は23年1-3月期の前期比▲1.2%の後、4月が前月比▲0.7%、5月が同▲2.3%となった。
財別の出荷動向 GDP統計の設備投資は、22年10-12月期に前期比▲0.6%と3四半期ぶりに減少した後、23年1-3月期は同1.4%となった。高水準の企業収益を背景に、設備投資は基調としては持ち直しが続いていると判断される。

消費財出荷指数は23年1-3月期の前期比0.8%の後、4月が前月比0.7%、5月が同3.2%となった。5月は耐久消費財が前月比2.0%、非耐久消費財が同0.1%となった。

23年1-3月期のGDP統計の民間消費は、前期比0.5%と22年10-12月期の同0.2%から伸びを高めた。物価高による下押し圧力は残っているものの、新型コロナウイルス感染症の5類への移行を受けて、サービス消費の回復ペース加速が見込まれるため、民間消費は4-6月期も増加が続くことが予想される。

2.4-6月期は3四半期ぶりの増産へ

製造工業生産予測指数は、23年6月が前月比5.6%、7月が同▲0.6%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(5月)、予測修正率(6月)はそれぞれ▲5.3%、▲1.2%であった。

予測指数を業種別にみると、生産用機械(6月:前月比10.0%、7月:同1.6%)、電子部品・デバイス(6月:前月比1.9%、7月:同5.6%)、電気機械(6月:前月比3.1%、7月:同0.5%)が高めの伸びとなっている。ただし、これらの業種はいずれも5月の実現率が大幅なマイナス(生産用機械:▲10.1%、電子部品・デバイス:▲7.2%、電気機械:▲7.5%)となっており、実際の生産は大きく下振れすることが見込まれる。
最近の実現率、予測修正率の推移/電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス
23年5月の生産指数を6月の予測指数で先延ばしすると、23年4-6月期の生産は前期比2.8%となる。実際の生産は予測指数から大きく下振れる傾向があるが、3四半期ぶりの増産は確保できそうだ。先行きについては、個人消費を中心とした国内需要の底堅さを背景に持ち直しの動きが続くことが見込まれるが、海外経済の減速を背景に輸出の伸び悩みが続くことから、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年06月30日「経済・金融フラッシュ」)

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