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- 消費者物価(全国23年5月)-コアCPI上昇率は鈍化したが、6月には再加速へ
2023年06月23日
1.コアコアCPIの上昇ペースがさらに加速
総務省が6月23日に公表した消費者物価指数によると、23年5月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比3.2%(4月:同3.4%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:3.1%、当社予想は3.2%)を上回る結果であった。
食料(生鮮食品を除く)の伸びは前月から高まったが、再生可能エネルギー発電促進賦課金の引き下げにより電気代の下落率が大きく拡大したことがコアCPIを押し下げた。
一方、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比4.3%(4月:同4.1%)と12ヵ月連続で伸びが加速した。基調的な物価上昇圧力は一段と高まっている。
食料(生鮮食品を除く)の伸びは前月から高まったが、再生可能エネルギー発電促進賦課金の引き下げにより電気代の下落率が大きく拡大したことがコアCPIを押し下げた。
一方、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比4.3%(4月:同4.1%)と12ヵ月連続で伸びが加速した。基調的な物価上昇圧力は一段と高まっている。
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(4月:前年比▲3.3%→5月:同▲1.7%)、灯油(4月:前年比▲3.0%→5月:同▲2.5%)の下落率が縮小したが、電気代(4月:前年比▲9.3%→5月:同▲17.1%)の下落率が大きく拡大し、ガス代(4月:前年比4.8%→5月:同2.0%)の上昇率が鈍化したことから、エネルギー価格の下落率は4月の前年比▲4.4%から同▲8.2%へと拡大した。
食料(生鮮食品を除く)は前年比9.2%(4月:同9.0%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント拡大した。外食は前年比6.4%(4月:同6.6%)と2ヵ月連続で上昇率が鈍化したが、原材料費の上昇を価格転嫁する動きが続き、食用油(前年比21.3%)、麺類(同11.5%)、菓子類(同11.3%)などが引き続き前年比で二桁の高い伸びとなっている。
サービスは前年比1.7%(4月:同1.7%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。外食は伸びが鈍化したが、宿泊料(4月:前年比8.1%→5月:同9.2%)、入浴料(4月:前年比9.2%→5月:同9.4%)などの教養娯楽サービスが4月の前年比2.4%から同2.6%へと伸びを高めた。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.72%(4月:▲0.39%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.86%(4月:1.79%)、その他財が1.20%(4月:1.13%)、サービスが0.91%(4月:0.91%)、全国旅行支援が▲0.05%(4月:同▲0.05%)であった。
食料(生鮮食品を除く)は前年比9.2%(4月:同9.0%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント拡大した。外食は前年比6.4%(4月:同6.6%)と2ヵ月連続で上昇率が鈍化したが、原材料費の上昇を価格転嫁する動きが続き、食用油(前年比21.3%)、麺類(同11.5%)、菓子類(同11.3%)などが引き続き前年比で二桁の高い伸びとなっている。
サービスは前年比1.7%(4月:同1.7%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。外食は伸びが鈍化したが、宿泊料(4月:前年比8.1%→5月:同9.2%)、入浴料(4月:前年比9.2%→5月:同9.4%)などの教養娯楽サービスが4月の前年比2.4%から同2.6%へと伸びを高めた。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.72%(4月:▲0.39%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.86%(4月:1.79%)、その他財が1.20%(4月:1.13%)、サービスが0.91%(4月:0.91%)、全国旅行支援が▲0.05%(4月:同▲0.05%)であった。
2.物価上昇品目の割合がさらに上昇
3.物価上昇の中心は財からサービスへ
23年5月のコアCPIは、再生可能エネルギー発電促進賦課金の引き下げに伴う電気代の下落率拡大を主因として上昇率が縮小した。しかし、6月には電力各社が申請していた値上げが認可され、電気代が上昇すること、ガソリン補助金の縮減によりガソリン、灯油価格が上昇することから、エネルギー価格の前年比下落率は大きく縮小することが見込まれる。コアCPI上昇率は6月には3%台半ばまで上昇するだろう。
物価高の主因となっていた輸入物価の上昇には歯止めがかかっている。このため、今後は原材コストを価格転嫁する動きが徐々に弱まり、財価格の上昇率は鈍化する公算が大きい。
一方、下落が続いていたサービス価格は22年8月に上昇に転じた後、23年5月には前年比1.7%まで伸びを高めている。今後は賃上げに伴う人件費の増加を価格転嫁する動きが一段と広がることが予想される。23年のベースアップが2%程度となったことを考慮すれば、サービス価格の上昇率は2%台まで高まるだろう。これまで長期にわたって値上げが行われていなかった分、今後のサービス価格の上昇ペースは非常に速いものとなる可能性がある。
物価上昇の中心は、これまでの財からサービスへ徐々にシフトしていく公算が大きい。コアCPI上昇率は財価格の上昇ペース鈍化を主因として、秋頃には2%台に鈍化するが、日銀が物価安定の目標としている2%を割り込むのは24年入り後となることが予想される。
物価高の主因となっていた輸入物価の上昇には歯止めがかかっている。このため、今後は原材コストを価格転嫁する動きが徐々に弱まり、財価格の上昇率は鈍化する公算が大きい。
一方、下落が続いていたサービス価格は22年8月に上昇に転じた後、23年5月には前年比1.7%まで伸びを高めている。今後は賃上げに伴う人件費の増加を価格転嫁する動きが一段と広がることが予想される。23年のベースアップが2%程度となったことを考慮すれば、サービス価格の上昇率は2%台まで高まるだろう。これまで長期にわたって値上げが行われていなかった分、今後のサービス価格の上昇ペースは非常に速いものとなる可能性がある。
物価上昇の中心は、これまでの財からサービスへ徐々にシフトしていく公算が大きい。コアCPI上昇率は財価格の上昇ペース鈍化を主因として、秋頃には2%台に鈍化するが、日銀が物価安定の目標としている2%を割り込むのは24年入り後となることが予想される。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年06月23日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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