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賃上げは適応力が左右する時代-インバウンドで安さの是正が進むかがポイント

総合政策研究部 専務理事 エグゼクティブ・フェロー・経済研究部 兼任 矢嶋 康次
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1――30年ぶりの賃上げ幅、来年以降、企業の適応力が明暗を分ける
これから先、賃上げのできる企業とそうでない企業は、はっきり分かれて行く。短期的には、世界経済の動向やエネルギー問題、為替などに左右されるだろうが、中長期的には、経営の在り方の変化に付いて行けるか否かが、賃上げを実現できる企業とそうでない企業とを分けるだろう。
消費者は、とにかく値上げを嫌う。しかし、物価上昇が続くこのご時世、値上げを受け入れざるを得ない面もある。ただ、値上げする以上は、付加価値の追加がなければ、当然納得はしない。企業は、これまでの安過ぎた製品やサービスの価格を修正したあとは、新機能を追加し、付加価値を高めた商品を投入して、値段は高いが消費者に受け入れられる商品を出して来るはずだ。
2――コロナ前と 「異なる」インバウンドが試金石
![[図表2]訪日外国人が訪日時に行ったことと、「次回したいこと」](https://www.nli-research.co.jp/files/topics/75047_ext_15_4.jpg?v=1686105895)
また、アンケートで「日本で次回したいこと」を尋ねると、「温泉入浴」「旅館に宿泊」「四季の体感」「自然体験ツアー・農漁村体験」などが挙がる。長期滞在を前提にした体験項目が目立つ。これは正しく、これまで生産性が低いとされた地方や、宿泊・飲食業が活躍の中心に置かれる分野である。「安さの是正」ができる顧客が、そこに居る。
海外からみて「安すぎる」日本の修正が、どこまで進むかは重要なポイントである。これは単なる値上ではなく、過去の安さの修正であり、適正な水準を探る調整だ。
ただ、その後には、継続的な付加価値の引き上げが勝負を決める。毎年の付加価値の向上が、値上げしても、恒常的に受け入れられるモノ・サービスを創る。そうすることで賃上げが可能となり、低賃金だった宿泊・飲食業、そして地域の産業が蘇る。これが全国に拡大し、日本が活性化する。
※ このレポートは、財界 (経済の本質を衝く「付加価値アップの値上げが賃上げを実現する」(6月7日号)を加筆修正したものです。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年06月07日「研究員の眼」)

03-3512-1837
- ・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員
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