2023年06月02日

ユーロ圏消費者物価(23年5月)-総合指数の伸び率が大幅に低下

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数、コアともに前年比伸び率は低下

6月1日、欧州委員会統計局(Eurostat)は5月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は6.1%、市場予想1(6.3%)を下回り、前月(7.0%)から低下した(図表1)
前月比は0.0%、予想(0.2%)を下回り、前月(0.6%)から減速した

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は5.3%、予想(5.5%)を下回り、前月(5.6%)から低下した(図表2)
前月比は0.2%、前月(1.0%)から減速した

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細サービス物価へのインフレ圧力は根強い

23年5月のHICP上昇率3(前年同月比)は全体で6.1%となり、4月の7.0%から大幅に低下した。5月は「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」も5.3%となり、3月(5.7%)をピークに2か月連続で低下した。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が3月6.6%→4月6.2%→5月5.8%、「サービス」(エネルギーを除く)が3月5.1%→4月5.2%→5月5.0%となり、いずれも低下した。特に財は3か月連続の低下で、22年9月以来の5%台まで下がった。前年同月比寄与度は、「財」が1.43%ポイント程度、「サービス」が2.01%ポイント程度と見られる。コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で3月▲1.0%→4月2.4%→5月▲1.7%と再びマイナスとなり、前月比では▲2.2%と4か月連続のマイナスになった。エネルギーの前年同月比寄与度は▲0.25%ポイント程度(4月は0.38%ポイント)と見られる(前掲図表1)。
(図表3)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳/(図表4)
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で12.5%(4月13.5%)と2か月連続で大幅に低下した(図表3)。飲食料のうち加工食品の伸び率は13.4%(4月14.6%)、未加工食品は9.6%(4月10.0%)といずれも減速している。飲食料の前年同月比寄与度は2.68%ポイント程度(4月は2.75%ポイント)と見られる。

総じて見ると、5月はエネルギー以外の部分でも、飲食料や財の伸び率が大きく低下しており、コア物価のピークアウト感も強まっている。物価上昇の勢いをECBが公表する季節調整済系列で確認すると、3か月移動平均後の3か月前比年率で総合指数が4.1%、エネルギーを除く財が4.3%、サービスが5.7%、コアが5.2%となっており、財価格上昇の勢いが弱まっている(図表4)。一方で、サービス物価は高めの伸び率が続いており、インフレ圧力は依然強い状況にあると言える。
(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表6)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
国別のHICP上昇率は、前年同月比で20か国中、上昇したのはオランダのみで残りの19か国は低下した(図表5)。前月比では12か国がプラスの伸び率で、8か国はマイナスの伸び率となった(図表6)。
 
3 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ(以降も特に断りがない限り同様)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年06月02日「経済・金融フラッシュ」)

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