2023年05月26日

中国経済の見通し-XBB流行で人流の回復は遅れるものの、反動増に加え政策支援が期待できるため2023年は前年比5.3%増と予想

三尾 幸吉郎

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■要旨
 
  1. 2023年第1四半期(1-3月期)の経済成長率は実質で前年同期比4.5%増と政府目標「5%前後」に届かなかった。しかし、前期比では2.2%増(年率換算+9.1%前後)と急回復した。但し、設備稼働率が正常とされるレベルを下回り、若年労働者の調査失業率が高止まりするなど経済活動の水準は依然として低い。他方、インフレは概ね安定しており、今年1-4月期の消費者物価は前年同期比1.0%上昇と政府目標「3.0%前後」を下回る水準で推移した。
     
  2. 第1四半期の最終消費は+3.0ポイント寄与となり、昨年通期(+1.0ポイント)を上回ったものの、弊社の2023年予測(+4.8ポイント)を下回る寄与にとどまった。投資は+1.6ポイント寄与となり、弊社の2023年予測(+0.8ポイント)を上回る堅調さだった。インフラ投資の堅調は想定通りだが、製造業投資が予測したほど鈍化しなかった。純輸出は▲0.1%ポイント寄与となり、弊社の2023年予測(▲0.3ポイント)よりもマイナス幅が小さかった。
     
  3. 第1四半期の「第1次産業」は前年同期比3.7%増と前四半期(同4.0%増)をやや下回ったものの、弊社の2023年予測(同2.5%増)を大幅に上回った。第2次産業は同3.3%増と前四半期(同3.4%増)から横ばいで、弊社の2023年予測(同3.4%増)とほぼ一致した。第3次産業は同5.4%増と前四半期(同2.3%増)を大幅に上回ったものの、弊社の2023年予測(同7.1%増)を下回った。「不動産業」の低迷は想定通りだったが、コロナ悪化3業種(「交通・運輸・倉庫・郵便業」「卸小売業」「宿泊飲食業」)の回復が想定したほど早くなかった。
     
  4. 今年の全人代では2023年の成長率目標を「5%前後」と昨年より達成しやすい水準に設定した上で、財政赤字(対GDP比)を「3%」へ、地方特別債を「3.8兆元」へとそれぞれ引き上げるなど財政政策の積極性を高め、金融面でも「実体経済の発展を支持する」として、目標達成に強い意欲を示した。変異株(XBB)流行で目標達成が危うくなれば預金基準金利を引き下げることもあり得る。一方、目標達成が確実な状況となれば、中国政府は年度途中でも過剰債務の圧縮に動き出す。
     
  5. 2023年の経済成長率は実質で前年比5.3%増、2024年は同4.6%増と予想している。リスクとしては、(1)欧米景気の想定を超える悪化に伴う輸出の激減、(2)住宅バブル再発に伴う不動産規制の再強化、(3)変異株(XBB)の流行で「セロコロナ政策」再開、の3点を挙げられる。

 
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三尾 幸吉郎

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