コラム
2023年05月11日

内外株式ファンドに利益確定売り発生~2023年4月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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2020年12月以降で最小の資金流入

2023年4月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、4月は主に国内株式と国内債券を投資対象とするもの以外すべての資産クラスのファンドに資金流入があった【図表1】。ただし、国内株式ファンドで資金流出に転じた他、SMA専用のものを除くとその他の資産クラスのファンドでもすべてで3月から資金流入が鈍化した。そのため、ファンド全体でみると800億円の資金流入と3月の6,500億円から急減し、2020年12月以降で最小となった。
 
なお、4月は資産クラス別だとSMA専用ファンド(紺棒)の資金の出入りが目立ったが、SMA専用ファンド全体でみると100億円程度の純流入しかなかった。つまり、国内株式、外国REIT、外国株式の組入を増やし、国内債券と外国債券の組入を減らすリバランスを行ったラップ口座があったと推測され、あくまでも、そのリバランスの影響が大きかっただけのようだ。
【図表1】 2023年4月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

インデックス型の国内株式ファンドで利益確定売り

まず、4月は国内株式ファンドが400億円の資金流出に転じた。国内株式ファンドではSMA専用のものに400億円の資金流入があったため、一般販売されているものに限ると、資金流出が実に800億円まで膨らんでいた。特に、インデックス型(黄棒)の国内株式ファンドからの流出額は1,100億円に迫った【図表2】。2021年9月の900億円を上回り、日経平均株価が概ね2万6,000円から2万9,000円のレンジで推移するようになった2020年12月以降で最大の流出であった。
 
インデックス型の国内株式ファンドの資金流出入を詳しくみると、日経平均株価が2万8,000円と2万8,500円の水準を意識して売却した投資家が多かったようだ。2万8,000円を超えた翌営業日の3日には210億円の資金流出があり、さらに2万8,500円に肉薄した翌営業日の17日には3日を超える290億円もの資金流出があった。4月に1日あたりの流出額が200億円を超えたのがこの3日と17日みであったことからも、切りよい日経平均株価の水準が意識されていたことがうかがえる。
【図表2】 国内株式ファンドの資金流出入
そもそも日経平均株価が一時2万6,000円前後まで下落した2022年の9月や12月に1,500億円を超える大規模な資金流入があった。この4月は、昨年9月や12月に購入した投資家にとって絶好の売却機会になったのかもしれない。なお、一部の国内株式のベア型ファンド(青太字)に大規模な資金流入があったことから、国内株式の短期的な下落を見込む投資家も多かったようだ【図表3】。

その一方でアクティブ型の国内株式ファンド(緑棒)には、一般販売されているものに4月も300億円の資金流入があった。2022年12月以降、毎月300億円以上の安定した資金流入があり、販売は堅調であった。アクティブ型の国内株式ファンドは2020年と2021年に累計で1.4兆円の資金流出があるなど盛大に売られてきたが、足元で一部の投資家から見直されてきているのかもしれない。
【図表3】 2023年4月の推計純流入ランキング

外国株式ファンドでも一部で利益確定売り

4月に流出超過となったのはSMA専用ファンドを除外すると資産クラス別では国内株式ファンドのみであったが、外国株式ファンドでも流入額が1,000億円と3月の4,200億円から大幅に減少した。大規模な資金流入が始まった2020年7月以降で最小となった【図表4】。
 
外国株式ファンドを一般販売されているものに限ってタイプ別にみると、アクティブ型(緑棒)が500億円の純流出に転じた。毎月分配型のものや4月に新規設定されたものなど、資金流入があったアクティブ型の外国株式ファンド(【図表3】赤太字)もあるにはあった。しかし、それ以上に2022年以前に人気を集めたファンドの一部が売却され、再び流出超過に転じた。
 
インデックス型(黄棒)の外国株式ファンドでも一般販売されているものに4月は1,400億円の資金流入があったが、3月の3,400億円から6割減となった。インデックス型への資金流入が1,500億円を下回ったのは、実に2021年2月以来2年2カ月ぶりのことである。インデックス型には引き続き積立投資などの買付があったが、4月上旬から中旬にかけて純流出に転じている日があるなど、一部の投資家は売却していたようだ。たとえば「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は4月通してだと推計で337億円の資金流入があったが、4月20日、21日の2日間に限ると31億円も流出していた。
【図表4】 外国株式ファンドの資金流出入
4月は上げ幅こそ3月に及ばなかったが世界的に株価が続伸し、しかも為替市場で円安に振れたため、基準価額が上昇した外国株式ファンドが多かった。そのため、外国株式ファンドでもアクティブ型、インデックス型関係なく、インデックス型の国内株式ファンドと同様に、一部で利益確定の売却が出た様子である。

外国REITファンドや国内REITファンドも、4月は販売がふるわなかった。内外問わず株式以上にREITが上昇したため、追加購入を見合わす、もしくは売却する投資家が多かったものと推測される。元々、国内REITファンドは2月以降、販売が低迷している。低迷している背景には、4月の日銀の金融政策決定会合でこそ現行の金融緩和政策が維持されたが、金融緩和政策の修正に伴う基準価額の下落が警戒されていることも考えられるだろう。
 
さらにバランス型ファンドと外国債券ファンドでも、ともに4月は100億円程度の資金流入と3月の1,000億円から10分の1に減少した。バランス型ファンドは株式、REITと同様に投資環境、外国債券ファンドは限定追加型の新設ファンドの不在などが影響したと思われるが、5月以降も販売低迷が続くのか注目される。

東欧株式ファンドが高パフォーマンスに

4月に高パフォーマンスであったファンドをみると、東欧株式ファンド(青太字)が総じて好調であった【図表5】。なお、東欧株式ファンド3本ともファンド名にロシアが入っており、以前はロシア株式を中心に運用していたものと思われる。しかし、足元の月次レポートを確認したところ現在はロシア株式が全く組入れておらず、主にポーランド、トルコ、ハンガリー、チェコといった東欧の新興国の株式を組入れているファンドとなっている。
 
その他に4月は、ブラジル・レアル高を受けてブラジル・レアルの通貨選択型が組み込まれたファンド(赤太字)の一部も高パフォーマンスであった。
【図表5】 2023年4月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2023年05月11日「研究員の眼」)

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