2023年05月10日

資産形成に向いている投資商品とは何か-何に投資をしたら良いか迷うのであれば、iDeCoやつみたてNISAなどを活用すべき

基礎研REPORT(冊子版)5月号[vol.314]

金融研究部 研究員 熊 紫云

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人の一生においては、結婚と出産の費用、教育費、住宅購入、老後資金など、大きな支出を伴うライフイベントに備えるため、働いて得たお金を貯蓄や資産運用などで、まとまったお金を準備する必要がある。特に人生100年時代において、多くの人は公的年金だけでは経済的に老後を安心して生活するのが難しく、老後を見据えた資産形成が必要である。

しかし、世の中には、預貯金、株式、債券、不動産、FX取引、暗号資産、NFTなど多種多様な商品が溢れている。安心してお金を増やしていくために、どのような金融商品を購入したら良いのかを考えてみたい。特に、資産形成に向いていない投機やギャンブルと、資産形成に向いている投資との違いについて説明してみたい。資産形成をする際に少しでも参考になれば幸いである。

1―ゼロ、マイナス、プラスサムゲームとは

ゲーム理論でのゼロ、マイナス、プラスサムゲームについて説明したい。

ゼロサムゲームというのは麻雀と同じで、どれだけゲームをしても、参加者全員の持ち分合計が一定で、利益と損失の合計がゼロとなるゲームである。

マイナスサムゲームは参加者全員の利益と損失の合計がマイナスになるゲームである。

プラスサムゲームは参加者全員の利益と損失の合計がプラスのゲームである。

ゼロ、マイナス、プラスサムゲームに参加した結果はこのように全く違う。また、ゲームによってはゼロ、マイナス、プラスのどれなのか、良く分からないものもある。

2―投機、ギャンブルと投資

「投機」、「ギャンブル( 賭け事)」と「投資」は損をするかもしれない不確実性、つまりリスクがあるが、ここでは、それぞれについて参加者全員の利益合計がプラス、マイナス、ゼロ、不明のどれなのかによって資産形成に向いているかどうかを見分けることとしたい(図表)。 
[図表]投機、ギャンブルと投資
麻雀のような参加者全員の持ち分合計が一定で、利益合計がゼロのゼロサムゲームの場合、または参加者全員の将来の持ち分合計と利益合計が不明、すなわち将来の価値がどうなるかわからない場合を「投機」とする。つまり、投機の場合、参加者全員の利益の平均がゼロか不明で、参加者それぞれが期待できる利益もゼロか不明なので、資産形成に向いていない。

さらに、参加者全員の持ち分合計が必ず小さくなるマイナスサムゲームは資産形成に最も向いていない。参加者全員の持ち分合計が減っていき、利益合計がマイナスになるからである。ギャンブルであるパチンコ、競馬、競艇等はマイナスサムゲームである。「ギャンブル」はあくまで娯楽として楽しむものであり、長期の資産形成には向いていない。

プラスサムゲームであれば、参加者全員の持ち分合計が今後増えていくと期待できるため、長期的に利益合計がプラスになる。参加者それぞれが期待できる利益もプラスであり、長期の資産形成に向いている。結論から言うと、長期の「投資」はプラスサムゲームと考えて良いため、普通の人にとっては、長期の資産形成のためには「投資」を有効活用することが必要であり望ましい。

3―資産形成に向いている投資商品とは何か

それでは、投資商品の代表例である債券や株式や不動産について資産形成に向いている理由を説明してみたい。

尚、株式、債券などの証券商品は投資手法によって、長期投資と短期売買に分けることができるが、この章では長期投資を前提に説明する。ちなみに筆者は投資商品であっても短期売買の取引をするとゼロサムゲームとなり「投機」に該当すると考えている。
【債券】
日本で発行されている債券の大部分は、あらかじめ定められた利息というインカムを定期的にもらえる仕組みがある。そのため、会社が倒産しない限り、今後の投資家全員の持ち分合計がインカム分だけ増えていき、投資家全員の利益合計がプラスであることが合理的に期待できるため、債券の長期保有は「投資」であり、長期の資産形成に向いている。
【株式】
業績が好調な会社の株式はインカムである配当と長期的に価値が増加していくことの両方が期待できる商品である。投資する会社の商品が好調に売れ、売上が増加し、利益が出ていれば、その利益の一部が配当として株主に支払われたり、内部留保として事業拡大に向けた投資などが行われたりする。

株式には配当がある銘柄が多い。ただし、債券と違って配当が実際に支払われるのか、いくら支払われるのかは確定しておらず、あくまでも予想や期待である。

さらに、今後も業績が好調で利益が見込まれる場合、企業価値が中長期的に増加していくとともに、株価も上がっていくことが十分期待できる。このように、株式には長期的に価値が増加していく仕組みがある。

株式は良い会社を数多く選択し分散投資すれば、今後の投資家全員の持ち分合計が増えていき、将来の投資家全員の利益合計がプラスとなるプラスサムゲームであることが合理的に期待できる。従って、株式の長期保有は「投資」であり、資産形成に向いている。適切な方法での株式投資は、けっしてギャンブルでも投機でもない。
【不動産】
不動産は、債券の利息や株式の配当に相当するインカムである家賃収入がある。ここではワンルームマンションやアパートをイメージして説明する。

大家さんが購入した不動産を入居者に貸し出し、毎月、入居者が家賃を大家さんに支払う。良い物件であれば、修繕費や管理費用等のコストはかかるものの、長期的に利益が出て、安定したインカムが期待できる。普通の会社員などにおすすめできるJリートであれば、複数の優良物件に分散投資することができるので、分配金を定期的に受け取ることが十分期待できる。複数の優良不動産やJリートの長期保有はプラスサムゲームで「投資」であり、資産形成に向いている。

4―貯蓄と投資の違い

リスクを取って長期保有をすることでお金を増やすことが期待できる「投資」と異なり、お金を貯めることで家計の基本となる「貯蓄」は元本保証があって基本的にリスクがない。

預貯金や元本保証型保険等、貯蓄商品は信用力がある銀行や保険会社などにお金を預けて運用してもらうことになるため、不確実性がなく安全性が高い。

また、多少ではあるが、貯蓄商品は利子がついたりするので、参加者全員の持ち分合計が大きくなり、利益合計が少しプラスになる。プラスサムゲームの貯蓄は資産形成に向いていると考えられる。

入学時期がほぼ決まっている教育資金など近い将来に必要な資金や、必要な時期が決まっている資金の準備は、安全性と換金性がより求められるので、元本毀損リスクがない貯蓄商品で対応すべきである。

一方、老後資金といった残りの投資期間が長い資金の準備であれば、積極的にリスクを取って長期保有のメリットを享受できる投資商品を購入して効率的に資産形成すべきである。

5―まとめ

投機やギャンブル等はゼロサムゲームもしくはマイナスサムゲーム、または将来の価値が不明なので資産形成に向いていない。

投資は、インカムもしくは価値増加を期待できるプラスサムゲームである。債券には利息、株式には配当、不動産には賃料収入、Jリートには分配金という定期的にインカムを受け取る仕組みがある。さらに、株式には将来的な企業価値の増加を期待できる仕組みもある。これらは投資商品であり、長期で分散投資するなど、適切な投資手法で活用すれば、長期の資産形成に向いている。

尚、貯蓄は多少だが利子がついたりするので、参加者全員の利益合計が少しプラスになっており、プラスサムゲームなので資産形成に向いている。

多種多様な金融商品から、何に投資をしたらよいか迷う人は、良質な投資商品が数多くある現行つみたてNISA、新NISA(つみたて投資枠)、確定拠出年金制度(企業型DC及び個人型のiDeCo)等の税制優遇諸制度の対象である投資商品から選択すべきであろう。それでも迷う人は株式インデックス商品やバランス型などを選択しておけば良いと思う。
(参考:熊 紫云「確定拠出年金では何に投資したら良いのか?」)

そして、十分な資産形成をするためには、適切な投資商品をよく吟味し慎重に選択して、少額でも良いので積立投資を始めるなど、資産形成に向けて、なるべく早く準備を始めることが何より重要であると考えている。まずは実際に投資を始めてみてはどうだろうか。
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金融研究部   研究員

熊 紫云 (ゆう しうん)

研究・専門分野
資産運用・資産形成

(2023年05月10日「基礎研マンスリー」)

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