- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 資産運用・資産形成 >
- 資産運用 >
- 資産形成に向いている投資商品とは何か-何に投資をしたら良いか迷うのであれば、iDeCoやつみたてNISAなどを活用すべき
資産形成に向いている投資商品とは何か-何に投資をしたら良いか迷うのであれば、iDeCoやつみたてNISAなどを活用すべき
基礎研REPORT(冊子版)5月号[vol.314]

金融研究部 熊 紫云
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
しかし、世の中には、預貯金、株式、債券、不動産、FX取引、暗号資産、NFTなど多種多様な商品が溢れている。安心してお金を増やしていくために、どのような金融商品を購入したら良いのかを考えてみたい。特に、資産形成に向いていない投機やギャンブルと、資産形成に向いている投資との違いについて説明してみたい。資産形成をする際に少しでも参考になれば幸いである。
1―ゼロ、マイナス、プラスサムゲームとは
ゼロサムゲームというのは麻雀と同じで、どれだけゲームをしても、参加者全員の持ち分合計が一定で、利益と損失の合計がゼロとなるゲームである。
マイナスサムゲームは参加者全員の利益と損失の合計がマイナスになるゲームである。
プラスサムゲームは参加者全員の利益と損失の合計がプラスのゲームである。
ゼロ、マイナス、プラスサムゲームに参加した結果はこのように全く違う。また、ゲームによってはゼロ、マイナス、プラスのどれなのか、良く分からないものもある。
2―投機、ギャンブルと投資
さらに、参加者全員の持ち分合計が必ず小さくなるマイナスサムゲームは資産形成に最も向いていない。参加者全員の持ち分合計が減っていき、利益合計がマイナスになるからである。ギャンブルであるパチンコ、競馬、競艇等はマイナスサムゲームである。「ギャンブル」はあくまで娯楽として楽しむものであり、長期の資産形成には向いていない。
プラスサムゲームであれば、参加者全員の持ち分合計が今後増えていくと期待できるため、長期的に利益合計がプラスになる。参加者それぞれが期待できる利益もプラスであり、長期の資産形成に向いている。結論から言うと、長期の「投資」はプラスサムゲームと考えて良いため、普通の人にとっては、長期の資産形成のためには「投資」を有効活用することが必要であり望ましい。
3―資産形成に向いている投資商品とは何か
尚、株式、債券などの証券商品は投資手法によって、長期投資と短期売買に分けることができるが、この章では長期投資を前提に説明する。ちなみに筆者は投資商品であっても短期売買の取引をするとゼロサムゲームとなり「投機」に該当すると考えている。
日本で発行されている債券の大部分は、あらかじめ定められた利息というインカムを定期的にもらえる仕組みがある。そのため、会社が倒産しない限り、今後の投資家全員の持ち分合計がインカム分だけ増えていき、投資家全員の利益合計がプラスであることが合理的に期待できるため、債券の長期保有は「投資」であり、長期の資産形成に向いている。
業績が好調な会社の株式はインカムである配当と長期的に価値が増加していくことの両方が期待できる商品である。投資する会社の商品が好調に売れ、売上が増加し、利益が出ていれば、その利益の一部が配当として株主に支払われたり、内部留保として事業拡大に向けた投資などが行われたりする。
株式には配当がある銘柄が多い。ただし、債券と違って配当が実際に支払われるのか、いくら支払われるのかは確定しておらず、あくまでも予想や期待である。
さらに、今後も業績が好調で利益が見込まれる場合、企業価値が中長期的に増加していくとともに、株価も上がっていくことが十分期待できる。このように、株式には長期的に価値が増加していく仕組みがある。
株式は良い会社を数多く選択し分散投資すれば、今後の投資家全員の持ち分合計が増えていき、将来の投資家全員の利益合計がプラスとなるプラスサムゲームであることが合理的に期待できる。従って、株式の長期保有は「投資」であり、資産形成に向いている。適切な方法での株式投資は、けっしてギャンブルでも投機でもない。
不動産は、債券の利息や株式の配当に相当するインカムである家賃収入がある。ここではワンルームマンションやアパートをイメージして説明する。
大家さんが購入した不動産を入居者に貸し出し、毎月、入居者が家賃を大家さんに支払う。良い物件であれば、修繕費や管理費用等のコストはかかるものの、長期的に利益が出て、安定したインカムが期待できる。普通の会社員などにおすすめできるJリートであれば、複数の優良物件に分散投資することができるので、分配金を定期的に受け取ることが十分期待できる。複数の優良不動産やJリートの長期保有はプラスサムゲームで「投資」であり、資産形成に向いている。
4―貯蓄と投資の違い
預貯金や元本保証型保険等、貯蓄商品は信用力がある銀行や保険会社などにお金を預けて運用してもらうことになるため、不確実性がなく安全性が高い。
また、多少ではあるが、貯蓄商品は利子がついたりするので、参加者全員の持ち分合計が大きくなり、利益合計が少しプラスになる。プラスサムゲームの貯蓄は資産形成に向いていると考えられる。
入学時期がほぼ決まっている教育資金など近い将来に必要な資金や、必要な時期が決まっている資金の準備は、安全性と換金性がより求められるので、元本毀損リスクがない貯蓄商品で対応すべきである。
一方、老後資金といった残りの投資期間が長い資金の準備であれば、積極的にリスクを取って長期保有のメリットを享受できる投資商品を購入して効率的に資産形成すべきである。
5―まとめ
投資は、インカムもしくは価値増加を期待できるプラスサムゲームである。債券には利息、株式には配当、不動産には賃料収入、Jリートには分配金という定期的にインカムを受け取る仕組みがある。さらに、株式には将来的な企業価値の増加を期待できる仕組みもある。これらは投資商品であり、長期で分散投資するなど、適切な投資手法で活用すれば、長期の資産形成に向いている。
尚、貯蓄は多少だが利子がついたりするので、参加者全員の利益合計が少しプラスになっており、プラスサムゲームなので資産形成に向いている。
多種多様な金融商品から、何に投資をしたらよいか迷う人は、良質な投資商品が数多くある現行つみたてNISA、新NISA(つみたて投資枠)、確定拠出年金制度(企業型DC及び個人型のiDeCo)等の税制優遇諸制度の対象である投資商品から選択すべきであろう。それでも迷う人は株式インデックス商品やバランス型などを選択しておけば良いと思う。
(参考:熊 紫云「確定拠出年金では何に投資したら良いのか?」)
そして、十分な資産形成をするためには、適切な投資商品をよく吟味し慎重に選択して、少額でも良いので積立投資を始めるなど、資産形成に向けて、なるべく早く準備を始めることが何より重要であると考えている。まずは実際に投資を始めてみてはどうだろうか。
(2023年05月10日「基礎研マンスリー」)
関連レポート
- 資産形成に向いている投資商品とは何か-何に投資をしたら良いか迷うのであれば、iDeCoやつみたてNISAなどを活用すべき
- 確定拠出年金やNISAでは何に投資したら良いのか【2023年3月版】-国内債券型、国内株式型、外国株式型等でパフォーマンスを比較してみた
- 確定拠出年金では何に投資したら良いのか?-外国株式型、国内株式型、バランス型、外国債券型と国内債券型でパフォーマンスを比較してみた
- 資産形成、やってはいけないこと-FX取引、暗号資産、NFTに手を出してはいけない
- 老後のための資産形成で、いつどのようにリスクを落としたら良いのか?-DC、つみたてNISAの終わり方、ターゲットデート型とは何か
金融研究部
熊 紫云
熊 紫云のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/18 | 長期投資の対象、何が良いのか-S&P500、ナスダック100、先進国株式型で良かった | 熊 紫云 | 基礎研レター |
2025/03/14 | 株式インデックス投資において割高・割安は気にするべきか-長期投資における判断基準について考える | 熊 紫云 | 基礎研レポート |
2025/01/22 | 日本の株式インデックスは長期投資に向いているのか~なぜ海外の主要な株式インデックスは上昇してきたのか | 熊 紫云 | 基礎研レポート |
2024/11/26 | 新NISA、積立投資と一括投資、どっちにしたら良いのか~なぜ米国株式型が強かったのか~ | 熊 紫云 | ニッセイ景況アンケート |
新着記事
-
2025年04月24日
若年層のサステナビリティをめぐるジレンマ-「責任意識」が動きだす、ゴールデンウィークという非日常のスイッチ -
2025年04月23日
IMF世界経済見通し-トランプ関税で世界成長率は3%割れに -
2025年04月23日
トランプ関税で激動の展開をみせる米中摩擦-中国は視界不良の難局にどう臨むか -
2025年04月23日
中国経済:25年1~3月期の評価-春風に潜む逆風。好調な出だしとなるも、米中摩擦の正念場はこれから -
2025年04月22日
小学生から圧倒的人気【推しの子】-今日もまたエンタメの話でも。(第4話)
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【資産形成に向いている投資商品とは何か-何に投資をしたら良いか迷うのであれば、iDeCoやつみたてNISAなどを活用すべき】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
資産形成に向いている投資商品とは何か-何に投資をしたら良いか迷うのであれば、iDeCoやつみたてNISAなどを活用すべきのレポート Topへ