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少子化進行に対する意識と政策への期待(2)-これから子育て世代で約3割が期待、経済基盤の安定化と社会の意識改革が必須

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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1――はじめに~政府の「次元の異なる(異次元の)少子化対策」への期待は?
本稿では、政府の「次元の異なる(異次元の)少子化対策」への期待についての調査結果を見ていく。なお、現在、政府は具体的な政策内容や財源についての検討を進めており、6月の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の策定までに公表する予定だ。
1 ニッセイ基礎研究所「第12回新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」の枠組みの一部、調査時期は2023年3月29日~31日、調査対象は20~74歳、インターネット調査、有効回答数2,558、株式会社マクロミルのモニターを利用。
2――「次元の異なる少子化対策」への期待の程度~期待層は約2割だが、これから子育て世代で約3割
年代別に見ると、期待している層は50歳代(14.0%)を底に高年齢層(70~74歳29.1%)や若者(20歳代25.5%)ほど多い。一方、期待していない層は40~60歳代で約半数を占めて多く、若者(20歳代25.5%)ほど少ない傾向がある。よって、20歳代では期待している層と期待していない層が拮抗しているが、30歳代以上では期待していない層が期待している層を上回り、両者の差は50歳代で最もひらいている(期待していない層49.4%が期待している層14.0%より+35.4%pt)。
なお、若者ほど「(次元の異なる(異次元の)少子化対策について)聞いたことがない」が多い傾向もあるため、20歳代では政策を知らない層(28.1%)が、期待している層や期待していない層をやや上回る(それぞれ+2.6%pt)。
ライフステージ別に見ると、期待している層は第一子高校入学(14.4%)や未婚・独身(15.1%)で少ない一方、第一子小学校入学(33.1%)や第一子誕生(30.7%)で3割を超えて多いほか、高齢者の多い孫誕生(26.9%)などでも多い。一方、期待していない層は第一子高校入学(53.9%)や末子独立(50.9%)を中心に多く、第一子誕生(26.8%)や第一子小学校入学(36.7%)で少ない。なお、第一子誕生では、ライフステージ別に見て唯一、期待している層が期待していない層を上回る(+3.9%pt)。
つまり、現在、高校生の子どもがいるなど子育てが後半に入った世代、あるいは子育てがおおむね終了した世代では政策の期待は弱いが、子育て前半世代やこれから子育てをする世代では期待が強い傾向がある。背景には、今回の少子化対策の恩恵を受けられるかどうかがあるのだろう。ただし、これから子育てをする世代でも3割前後は政策に期待をしていないことは留意すべきである。
2 調査では「岸田首相が年頭の会見で掲げた政策で、政府は6月までに、(1)児童手当などの経済支援、(2)学童や病児保育を含めた幼児・保育支援の拡充、(3)育児休業強化などの働き方改革、を三本柱に、現在は年間5~6兆円である子育て支援関連予算を倍増する方針を示している」との説明を記載した上でたずねている。
3――「次元の異なる少子化対策」に期待している理由~日本の重要課題、子育て中の女性は当事者意識
政府の「次元の異なる少子化対策」に期待しているとの回答者に対して、その理由をたずねたところ、最も多いのは「日本にとって重要な課題だから」(56.8%)であり、次いで「少子化の進行を食い止めて欲しいから」(48.8%)が続き、この2つが半数前後を占めて圧倒的に多い(図表2)。以下、「自分や家族、親族に関係がありそうだから」(22.8%)、「日頃から自分の関心のある事柄だから」(19.1%)、「予算規模が拡大されるから」(14.3%)、「(『次元の異なる(異次元)』という)表現に政府の本気度を感じるから」・「近年の政府の少子化対策の効果が出ていると思うから」(どちらも11.0%)までが1割を超える。
つまり、20~74歳の半数前後は少子化の進行が日本の重要課題との認識から、約2割は当事者意識の強さなどから政策に期待を寄せている。しかし、近年の政策効果や政府の課題認識を十分であると感じている割合は約1割にとどまる。
性年代別に見ると、30歳代の女性以外は全体と同様に「日本にとって重要な課題だから」や「少子化の進行を食い止めて欲しいから」が首位と2位を占める(図表3(a))。一方、30歳代の女性の首位は「自分や家族、親族に関係がありそうだから」(50.0%)で半数を占めて圧倒的に多く、次いで「日本にとって重要な課題だから」・「日頃から自分の関心のある事柄だから」(どちらも36.8%)と続き、全体で2位の「少子化の進行を食い止めて欲しいから」(28.9%)を遥かに上回る。
また、「日本にとって重要な課題だから」や「少子化の進行を食い止めて欲しいから」は男女とも高年齢層で、「自分や家族、親族に関係がありそうだから」や「日頃から自分の関心のある事柄だから」といった自分ごとであることは女性の20~40歳代(後者は男性の50歳代も)で多い傾向がある。特に女性の30歳代では、自分ごとであることについて、どちらも全体の2倍程度を占めて多い。
このほか、「予算規模が拡大されるから」は男性の20・50歳代と女性の20・30歳代で、「表現に政府の本気度を感じるから」は女性の20・40歳代で、「近年の政府の少子化対策の効果が出ていると思うから」は男性の30歳代と女性の20歳代で、「政府は課題を十分に認識していると思うから」は女性の20歳代で、「3つの柱の内容が適切であると思うから」は男性の50歳代で、「岸田政権を支持しているから」は男性の50歳代と女性の40歳代で多い。
つまり、子育て世帯も多い30歳代を中心とした女性では当事者意識の強さから、また、比較的若い年代では予算規模の大きさや政府の熱意に加えて、近年の政策に効果を感じており政府の取り組みに比較的ポジティブな印象を持っていることから、そして、高齢者では社会課題であることなどから、政府の少子化対策に期待している様子がうかがえる。
このほか、「予算規模が拡大されるから」は第一子中学校入学や第一子大学入学で、「表現に政府の本気度を感じるから」は第一子中学校入学で、「近年の政府の少子化対策の効果が出ていると思うから」は第一子誕生で、「3つの柱の内容が適切であると思うから」は未婚・独身や第一子大学入学で多く、年代別に見られた傾向とおおむね重なっている。
職業別に見ても、高齢者比率の高い無職や専業主婦・主夫では社会課題であることから、女性比率の高い専業主婦・主夫などでは自分ごとであることから政策へ期待している様子がうかがえる(図表3(c))。このほか、公務員(管理職および一般)や正社員・正職員(管理職)では政策を比較的ポジティブに評価しているために(「予算規模が拡大されるから」や「3つの柱の内容が適切であると思うから」が多い)、政策へ期待している様子がうかがえる。
(2023年04月27日「基礎研レポート」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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