2023年04月18日

急成長を遂げるインド保険市場-2032年には生保収入保険料世界第5位に-

保険研究部 上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長 有村 寛

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1――はじめに

2022年の新車販売では日本を抜いて世界第3位、同年のGDPも英国を抜き世界第5位、人口も2023年には中国を抜いて世界一になったと言われている等、各方面におけるインドの成長が著しい1

それらに伴い、保険市場についても急成長が予想されており、Swiss Re Instituteでは、2023年1月4日付で「India’s insurance market: poised for rapid growth」とのレポートを公表、2032年における収入保険料は、生損保合計で世界第6位(2021年現在第10位)、生保では世界第5位(同第9位)になることが予想されている。

ここでは、上記以外のSwiss Re Institute作成のデータも参照しつつ、上記レポートの概要について紹介したい。
 
1 「インド「我々の時代来る」グローバルサウスの盟主自任‐目覚めた大国、インドの実像①」日本経済新聞電子版2023年4月4日、「インド2022年6.7%成長、中国上回る GDP英国抜き5位」日本経済新聞電子版2023年2月28、「インドの自動車販売、日本抜き世界第3位に 22年」日本経済新聞電子版2023年1月5日等。

2――インドの経済成長場

2――インドの経済成長場

【図表1】今後10年間の実質GDP成長率 (図表1)は、G20中、今後10年で高成長が予想される国の実質GDP成長率を示している。インドのGDPは、2022年に英国を抜いて世界第5位になったことは前述の通りだが、Swiss Re Instituteでは、2022年から2032年の間の年平均実質GDP成長率を6.7%と予想しており、インドネシア(同5.0%)、中国(同4.3%)を上回り、G20の中で、最も急速に成長する、としている。そのような状況を受け、2027年までにはドイツ、日本を追い越す、と報道も見られる2
 
2 「インド「人口世界一」の光と影 ゴータム・クムラ氏‐マッキンゼー・アンド・カンパニー アジア会長」日本経済新聞電子版2023年2月15日、「インド 人口世界一か」西日本新聞2023年1月18日等。

3――経済成長に伴い、著しい成長を遂げる保険市場

3――経済成長に伴い、著しい成長を遂げる保険市場

高い経済成長に伴い、インド保険市場も著しい発展を遂げることが予想されている。

Swiss Re Institute では、インドの生損保合計の収入保険料は、年平均実質9%成長し、その結果、2021年の世界第10位から、2032年には世界第6位になると予想している(図表2)。
【図表2】収入保険料(生損合計)世界トップ10市場(単位;1兆ドル)
外国会社による保険会社の直接投資の上限の引き上げ(2021年に49%から 74%に引き上げられ、将来的には100%となることが期待されている)等の規制の整備や、インシュアテックへの投資の急増を受け、保険へのアクセスや保険加入が容易になること等も、保険市場の高成長を下支えする、とされている3
【図表3】2021年 収入保険料(生保)世界トップ10市場(単位;10億ドル) 一方、生保市場は、2021年における収入保険料で世界第9位だったが(図表3)、今後10年間で年平均実質9%成長し、2032年には同5位になることが予想されている(2032年はデータがないため図表なし)。

このように急拡大が見込まれるインド生保市場だが、Swiss Re Institute の試算によれば、2021年のインドにおいては、世帯の大黒柱に万一があった場合に、「遺族の生活や借金の返済にあてるために必要な金額」に対する、「実際に使える金額」の比率は、世帯平均で9%にも満たない。また、同社による2019年の調査によれば、インドでは44%の世帯で「大黒柱に万一があった場合の『必要額』に対する『使える金額』が10%に満たない」状況となっており、このような状況にある世帯の割合はアジアの中でも最も高い国のうちの1つであった、とのことである4
 
3 Swiss Re Institute 「「India's insurance market: poised for rapid growth」(Jan 2023) P7。
4 具体的な金額(いくら不足しているか)については触れていないが、米国や日本における生保のニーズギャップについては、小著「米国消費者の生保加入動向」『保険・年金フォーカス』(2023年3月28日)でも紹介している。

4――おわりに

4――おわりに

これまで述べてきた通り、経済や人口に加え、保険においても今後のインドの成長は著しいことが見込まれている。規制の整備やインシュアテックを始めとする急速なデジタル化も進んでおり、業界を取り巻く動きも激しい。一方で、家計の大黒柱に万が一のことがあった際の必要な準備と、実際の準備の差は、アジア諸国の中でも際立って大きい、という課題もあることがわかってきた。

各方面の成長に伴い、今後、インドに対する関心はますます高まるものと考えられる中、市場動向はじめインド保険事情については、今後も引き続き注視していきたい。
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保険研究部   上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長

有村 寛 (ありむら ひろし)

研究・専門分野
保険商品・制度

経歴
  • 【職歴】
    1989年 日本生命入社
    1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
    1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職

(2023年04月18日「保険・年金フォーカス」)

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