2023年04月13日

ロシアの物価状況(23年3月)-ベース効果で前年比は3%台に

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数、コア指数ともに前年比は3%台

4月12日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(23年3月)】
前年同月比は3.51%、市場予想1(3.40%)より上振れ、前月(10.99%)から低下(図表1)
前月比は0.37%、予想(0.30%)より上振れ、前月(0.46%)から減速した

【コア指数2(23年3月)】
前年同月比は3.72%、前月(12.69%)から低下した(図表2)
前月比は0.37%、前月(0.13%)から加速した

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:前年比でもサービスの伸び率は相対的に高い

3月のロシアのインフレ率は前年比で3.51%となり2月の10.99%から大幅に低下した。前年比伸び率の比較対象となる22年3月のインフレ率がウクライナ侵攻を受けて大幅に加速しており(22年2月9.15%→22年3月16.69%)、ちょうど1年が経過したためベース効果による伸び率鈍化が顕在化した。

インフレ率を大分類別に見ると、3月の前年比伸び率は食料品が2.57%、財(非食料品)は0.12%、サービスが9.73%となっている。サービスはウクライナ侵攻後の伸びの加速(22年2月6.1%→22年3月9.94%)が他の大分類と比較して限定的であったことから、ベース効果による伸び鈍化の影響も小さくなっている。コア指数は3月の前年比で3.72%だった。総合指数、コア指数ともにロシア中銀のインフレ目標(4%)を下回ったことになる。

前月比では、総合指数もコア指数も3月に0.37%となった。総合指数は2月(0.46%)から伸び率が縮小、コア指数は2月(0.13%)から伸び率は加速という形になっている(図表3)。

別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では、最新の4月10日時点の前週比で0.11%であり、最近は0%台から0.1%台前半で推移している。過去と比較してもインフレ圧力はそれほど強くない状況が続いている(図表4)。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は、3月に10.7%となった。21年3月(10.1%)以来の低さだが、前年比インフレ率ほどの極端な低下は見られていない(図表5)。なお、期待インフレ率が実際のインフレ率ほど大幅に低下しない現象は2015年前後の高インフレ時と同じである。
品目別の上昇率では3(図表6)、3月は前年比で海外旅行サービス(31.60%)、保険サービス(17.68%)の上昇率が高い一方、テレビ(▲31.51%)、グラニュー糖(▲25.20%)、電化製品(▲14.07%)が大きく下落している。

前月比では、海外旅行サービス(9.64%)、その他サービス(6.12%)、卵(3.57%)の上昇率が大きく、テレビ(▲3.59%)の下落幅が大きかった。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は住居・公益サービス(1.26%ポイント)、家庭サービス(0.37%ポイント)、旅客サービス(0.26%ポイント)、海外旅行サービス(0.22%ポイント)、乳製品(0.22%ポイント)となった。一方、成果物(▲0.39%ポイント)、電化製品(▲0.18%ポイント)、その他サービス(▲0.16%ポイント)は前年比でのマイナス寄与が大きい。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
一方、前月比上昇率の寄与ではその他サービス(約0.09%ポイント)、海外旅行サービス(約0.07%ポイント)、旅客サービス(約0.06%ポイント)の押し上げ寄与が大きく、肉(▲0.02%ポイント)。は押し下げ寄与が比較的大きい。

なお、現時点において統計局ウェブサイトで公表されていない品目も含む2月の前年比上昇率寄与を見ると、乗用車(1.3%ポイント)や住居・公益サービス(1.3%ポイント)が大きいことが分かる(図表9)。
(図表9)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
(図表10)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度)
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年04月13日「経済・金融フラッシュ」)

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