2023年04月10日

ロシアGDP(2022年10-12月期)-前年比伸び率のマイナス幅はさらに縮小

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年同期比のマイナス幅が縮小

4月7日、ロシア連邦統計局は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(未季節調整系列)】
2022年10-12月期の前年同期比伸び率は▲2.7%、予想1(同▲3.5%)を上回り、前期(同▲3.5%)からマイナス幅が縮小した(図表1・2)

(図表1)ロシアの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ロシアの実質GDP成長率(供給項目別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:交易条件は改善傾向が続いている

ロシアの22年10-12月期の実質GDP伸び率は▲2.7%となり、7-9月期(▲3.5%)からマイナス幅が縮小した。また、季節調整系列の前期比で見ると、10-12月期は0.5%(年率換算2.2%)となった。4-6月期(▲4.8%、年率換算▲17.7%)には大幅マイナスになったものの、その後7-9月期には0.5%(年率換算2.1%)とプラスに転じ、10-12月期もほぼ同率で成長したことになる。なお、22年10-12月期はコロナ禍前の水準(19年10-12月期)とほぼ同水準となっている。

需要項目別には、今回、ロシアがウクライナに侵攻して以降、公表されていなかった輸出入のデータが(過去分も含めて)公表された。前年同期比では輸出入ともに4-6月期以降は2桁減の大幅マイナスとなっているが、輸入の減少はGDPを押し上げるため、成長率の寄与で見ると輸出減によるマイナスと輸入減によるプラスが相殺される形になっている(図表1)。なお、前期比では輸入の減少が続く一方、輸出は7-9月期を底に10-12月期は反発している。ただし水準で見ると、輸出入ともにウクライナ侵攻後に大きく低下している状態が続いている(図表4)。なお、輸出入以外の主要な需要項目を見ると、前年同期比で家計消費が▲2.7%、投資が+3.0%、前期比では家計消費+1.4%、投資+0.8%となっている。
(図表3)ロシアの実質GDP成長率(22年10-12月期)
(図表4)ロシアの実質GDPの動向(需要項目別)/(図表5)ロシアの実質GDPの動向(供給項目別)
第二次産業と第三次産業(その他)はマイナスとなっている(図表3)3。前期比では、第二次産業がマイナスとなったが、第一次産業と第三次産業(金融・不動産)および第三次産業(その他)はプラス成長となった(図表5)。なお、西側諸国の制裁で注目される原油生産に関連する鉱業は前期比0.1%と小幅プラスとなっている。
(図表6)ロシアの交易利得 名目成長率は10-12月期の前年同期比5.3%で7-9月期の8.2%から低下し、GDPデフレータ伸び率も10-12月期は前年同期比8.2%となり1-3月期の26.5%をピークから大幅に低下した。また、輸出入物価のデータも公表されている。輸出デフレータおよび輸入デフレータは、ともに1-3月期をピークとして下落傾向にある。ただし、輸出デフレータが輸入デフレータより高い水準上昇を維持しており、交易条件は改善傾向が継続していることが明らかになっている(図表6)。
 
3 自家利用の財・サービスは、便宜的に第三次産業(その他)に含めた。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年04月10日「経済・金融フラッシュ」)

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