2023年03月03日

ブラジルGDP(2022年10-12月期)-前期比▲0.2%とマイナス成長に

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比▲0.2%とマイナス成長に

3月2日、ブラジル地理統計院(IBGE)は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(2022年10-12月期)】
前年同期比伸び率(未季節調整値)は1.9%、市場予想1(2.2%)を下回り、前期(3.6%)から減速した(図表1・2)。
前期比伸び率(季節調整値)は▲0.2%、予想(▲0.2%)と一致し、前期(0.3%)からマイナスに転じた。

(図表1)ブラジルの実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ブラジルの実質GDP成長率(産業別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:消費が伸び悩み、投資は前期比マイナス

22年10-12月期の実質GDP伸び率は前期比▲0.2%(季節調整値、年率換算▲0.9%)で、21年4-6月期以来のマイナス成長となった。22年10-12月期のGDP水準をコロナ禍前(19年10-12月期)と比較すると4.1%となっている(図表4・5)。また、2022年の暦年成長率は2.9%となり、21年の5.0%から減速した。

成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費が0.3%(前期:1.0%)、政府消費が0.3%(前期:1.2%)、投資▲1.1%(前期:2.6%)、輸出が3.5%(前期:3.7%)、輸入が▲1.9%(前期:5.5%)となった。消費および投資が7-9月期から落ち込み、特に投資はマイナス成長に転じている。ブラジルでは21年以降に高インフレ進んでおり、22年4月の12.1%をピークに23年1月には5.8%まで低下しているが、伸び率は依然として高い(中銀目標は3.25±1.5%)。中銀は政策金利を22年8月にかけて13.75%まで引き上げ後、高い水準で据え置いていることから、投資の重しになったと見られる。

なお、コロナ禍前との対比では、個人消費が3.8%、政府消費が2.1%、投資が19.1%、輸出が12.8%、輸入が7.1%でこれまで投資が成長をけん引してきたことが分かる(図表4)。
(図表3)業種別のGDP伸び率
(図表4)ブラジルの実質GDPの動向(需要項目別)/(図表5)ブラジルの実質GDPの動向(供給項目別)
(図表6)ブラジルの輸出入物価と交易利得 産業分類別に実質GDPの伸び率を見ると(図表3・5)、第一次産業は前期比0.3%(前期:▲0.5%)、第二次産業は同▲0.3%(前期:0.7%)、第三次産業は同0.2%(前期:0.9%)となり、第三次産業が伸び悩んだ事に加え、第二次産業はマイナス成長となった。より細かい業種では、第二次産業の製造業(前期比▲1.4%)の落ち込み幅が大きく、建設業(▲0.4%)や電気・ガス(▲0.7%)もマイナスだった。第三次産業でも卸・小売業(▲0.9%)や公的・医療(▲0.5%)は前期比でマイナスとなった。

22年10-12月期の名目成長率は前年同期比11.9%(前期:12.8%)となった。名目と実質成長率の差(デフレータに相当)は10.0%(前期:9.2%)とやや上昇した。また、交易条件に関しては、10-12月期は輸出デフレータと輸入デフレータのいずれも下落するなかで、わずかに悪化した(図表6)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年03月03日「経済・金融フラッシュ」)

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