「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向(1)~良好な需給環境と低金利を背景に、東京23区の新築マンション価格は過去10年間で+69%上昇 | ニッセイ基礎研究所
- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 不動産市場・不動産市況 >
- 「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向(1)~良好な需給環境と低金利を背景に、東京23区の新築マンション価格は過去10年間で+69%上昇
「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向(1)~良好な需給環境と低金利を背景に、東京23区の新築マンション価格は過去10年間で+69%上昇
金融研究部 主任研究員 吉田 資
このレポートの関連カテゴリ
1. はじめに
そこで、本稿では、3回に分けて、東京23区の新築マンション市場の動向を概観する。第1回は、まず、新築マンション市場を取り巻く需給環境を確認する。その後、東京23区の新築マンションの販売データ(2005年~2022年)を用いて、品質調整をした「新築マンション価格指数」を作成し、その価格動向について解説する。
続く第2回以降では、「新築マンション価格指数」について、エリア別の動向や「タワーマンション価格」の動向について解説する。あわせて、新築マンション価格の決定構造が過去20年間でどのように変化したかについても確認したい。
1 「持家」かつ「3階建て以上の共同住宅」に居住する世帯
2 五大全国紙で2022年に「新築マンション」について取り上げた記事は224本。
3 日本経済新聞電子版 「全国マンション10年で1300万円高く 6年連続最高更新」2023/02/21
2. 新築マンション市場を取り巻く需給環境
不動産経済研究所によれば、首都圏の新築分譲マンションの新規供給戸数は、2005年の8.4万戸から2022年の2.9万戸へ約1/3の水準に大幅減少した(図表-3)。同様に、2022年の東京23区の新規供給戸数は1万797戸(2005年対比▲65%減少)となり、2005年以降で最も低い水準にとどまる。各マンションデベロッパーは市場環境をみながら慎重な供給姿勢を維持している。
首都圏の供給戸数を地域別にみると、東京23区の割合は、2007年の27%をボトムに増加傾向で推移し2013年には50%に上昇した(図表-4)。しかし、その後は緩やかな低下傾向にあり、2022年は37%となっている。
次に、新築マンションの供給戸数や販売価格に影響を及ぼす建築コストの動向を確認する。
建設物価調査会「建築費指数」によれば、東京の「集合住宅(RC造)」の建築費は、世界金融危機の影響により2008年から2010年にかけて一時的に低下したものの、長期的には上昇基調で推移している。2022年は「133.8」(前年比+8%)となり2005年対比で+35%上昇した(図表-5)。
国土交通省「建設労働需給調査」によれば、建設業の労働需給を示す「建設技能労働者過不足率」は、2011年以降、一貫してプラス(人手不足)で推移している。2020年の新型コロナ感染拡大を受けて、「過不足率」は緩やかに低下したが、2022年に入り再び上昇している(図表-6)。
このように、構造的な人手不足を背景に建築コストの上昇が続いており、コスト上昇が新築マンションの供給戸数を押し下げる要因の1つとなっている。
4 吉田資 『深刻化する建設業の人手不足と外国人労働者への期待』 ニッセイ基礎研究所、年金ストラテジー (Vol.271) January 2019
国土交通省「不動産価格指数」によれば、東京都の住宅地価格は、2008年の世界金融危機を受けて下落した後、2010年から2019年にかけて上昇基調で推移した。2020年のコロナ禍を受けてやや弱含んだものの、2021年以降は再び上昇基調が強まっている(図表-8)。
また、土地総合研究所「不動産業業況等調査」によれば、「住宅・宅地分譲業」の「用地取得件数」の動向指数は、2013年以降マイナス(取得件数減少)で推移している。デベロッパーの開発用地の取得は低調な状況にある(図表-9)。
このように、マンション開発適地がもともと限定的である東京23区ではマンション用地価格が高止まりするなか、今後も供給戸数が増えにくい状況が続くと考えられる。
続いて、人々の住宅購入の意向について確認する。
国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」によれば、東京圏在住者を対象に「今後望ましい住宅形態」を質問したところ、一貫して「一戸建て」が最も多く、次いで「戸建て・マンションどちらでもよい」、「マンション」の順となっている(図表-10)。ただし、「一戸建て」の比率が減少傾向(2006年79%⇒2021年48%)にあるのに対して、「戸建て・マンションどちらでもよい」(10%⇒24%)及び「マンション」(13%⇒22%)の比率が増加している。東京圏では、依然として「一戸建て」を望む人が約半数を占めるものの、都心部を中心に「マンション」居住を志向する人が増加しているようだ。
総務省「住民基本台帳人口移動報告」によれば、東京23 区の転入者数は、2007年まで約37万人で推移していたが、2008年以降減少に転じ、2010年には約33万人まで減少した。その後は、増加傾向で推移していたが、コロナ禍を経て、再び減少に転じた。しかし、2022 年はプラスに転じ前年比+3.7%の34.7 万人となった(図表-11)。
一方、転出者数は、長らく30万人近辺で推移していたが、2020 年以降増加に転じ、2022 年は前年比+4.5%の約32.8万人となった。
この結果、「転入超過数」は2013年以降増加傾向にあり、2019年は+7.0万人の「転入超過」となった。しかし、コロナ禍以降、「転入超過数」は大幅に減少し、2022年は+1.9人万人とコロナ禍前の1/3の水準に留まっている。
(2023年04月11日「不動産投資レポート」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/09/26 | 「東京都心部Aクラスビル市場」の現況と見通し(2024年9月時点) | 吉田 資 | 不動産投資レポート |
2024/08/13 | 「札幌オフィス市場」の現況と見通し(2024年) | 吉田 資 | 不動産投資レポート |
2024/08/02 | 「仙台オフィス市場」の現況と見通し(2024年) | 吉田 資 | 不動産投資レポート |
2024/07/16 | 産業集積でみる東京オフィスエリアの特色-探索的空間解析によるオフィス需要の「ホットスポット」検出 | 吉田 資 | ニッセイ基礎研所報 |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年11月06日
情報伝達・取引推奨による内部者取引-東証職員によるインサイダー取引疑惑 -
2024年11月06日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その9)-カッシーニの卵形線・レムニスケート等- -
2024年11月06日
EUのAI規則(4/4-最終回)-イノベーション支援、ガバナンス、市販後モニタリング等 -
2024年11月06日
自動移換問題―継続をデフォルトに -
2024年11月06日
異常気象、政治イベントと気候変動リスクの影響
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向(1)~良好な需給環境と低金利を背景に、東京23区の新築マンション価格は過去10年間で+69%上昇】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向(1)~良好な需給環境と低金利を背景に、東京23区の新築マンション価格は過去10年間で+69%上昇のレポート Topへ