2023年02月27日

米個人所得・消費支出(23年1月)-PCE価格指数が前月比+0.6%と市場予想(+0.5%)を上回り、22年6月以来の高い伸び

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を下回った一方、個人消費は市場予想を上回る

2月24日、米商務省の経済分析局(BEA)は1月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.6%(前月改定値:+0.3%)と+0.2%から上方修正された前月を上回った一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+1.0%は下回った(図表1)。個人消費支出は前月比+1.8%(前月改定値:▲0.1%)と▲0.2%から上方修正された前月から大幅なプラスに転じたほか、市場予想の+1.4%も上回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+1.1%(前月:▲0.3%)と大幅なプラスに転じた一方、市場予想の+1.1%に一致した(図表5)。貯蓄率1は4.7%(前月:4.5%)と前月から+0.2%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.6%(前月改定値:+0.2%)と+0.1%から上方修正された前月、市場予想(+0.5%)を上回った。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.6%(前月改定値:+0.4%)とこちらも+0.3%から上方修正された前月、市場予想(+0.4%)を上回った(図表6)。前年同月比は総合指数が+5.4%(前月改定値:+5.3%)と+5.0%から上方修正された前月、市場予想(+5.0%)を上回った。コア指数も+4.7%(前月改定値:+4.6%)と+4.4%から上方修正された前月、市場予想(+4.3%)を上回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:23年入り後に個人消費は大幅に増加

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)は名目ベースで10月に+0.8%と高い伸びとなった後、11月に▲0.2%、12月に▲0.1%と2ヵ月連続でマイナスとなり、年末にかけて減速した(図表1)。しかしながら、1月は+1.8%と21年3月以来の伸びに加速し、23年入り後に個人消費の伸びが再び加速したことを示した。

また、所得対比では、労働需給の逼迫を背景に賃金・給与が高い伸びとなったほか、税負担の減少などから、1月の可処分所得が前月比+2.0%と大幅な増加となったこともあって、貯蓄率は4.7%と22年1月以来の水準に上昇しており、足元で消費余力を残す状況となっている。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は総合指数、コア指数ともに1月は前月比で大幅な伸びとなったほか、前年同月比でも前月から伸びが加速しており、足元でインフレが高止まるリスクが示された。12月時点のFOMC参加者の政策金利見通し(中央値)は23年に残り+0.5%ポイントの引上げ方針が示されていたが、インフレの高止まりや雇用、個人消費の堅調を受けて次回3月のFOMC会合で政策金利見通しの上方修正は不可避だろう。このため、FRBによる金融引締めが長期化する可能性が高まった。

3.所得動向:賃金・給与の伸びが加速

1月の個人所得(前月比)は労働需給の逼迫を背景に賃金・給与が+0.9%(前月:+0.4%)と22年7月以来の伸びとなったほか、利息配当収入も+0.5%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した(図表2)。一方、移転所得は横這い(前月:+0.1%)と伸びが鈍化した。これは、1月に社会保障と補足保障所得の年間生活費調整がインフレ上昇を反映して+8.7%増加した結果、社会保障受取額が前月から年率+1,097億ドル増加した一方、米国救済計画で延長された児童税額控除の期限切れや州による1回限りの支払い減少により、社会保障受取額が▲1,202億ドル減少した結果、合計の社会保障受取額が前月から▲21億ドルと小幅に減少したことを反映している。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、1月の名目が+2.0%(前月:+0.4%)と前月から大幅に伸びが加速した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)も+1.4%(前月:+0.2%)と大幅に伸びが加速した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財、サービス消費ともに前月から伸びが加速

1月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+2.8%(前月:▲1.6%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じたほか、サービス消費が+1.3%(前月:+0.6%)と前月から伸びが加速した(図表4)。

財消費は、耐久財が+5.5%(前月:▲2.0%)、非耐久財も+1.2%(前月:▲1.3%)といずれも前月からプラスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が+11.4%(前月:▲3.8%)と2桁のプラスに転じたほか、家具・家電が+2.6%(前月:▲1.0%)、娯楽財・スポーツカーが+2.7%(前月:▲1.0%)といずれも3ヵ月ぶりにプラスに転じた。

非耐久財では、食料・飲料が+0.4%(前月:▲0.1%)、衣料・靴が+3.6%(前月:▲1.4%)と前月からプラスに転じた一方、ガソリン・エネルギーが▲0.2%(前月:▲7.6%)と減少幅は縮小したものの、3ヵ月連続のマイナスとなった。

サービス消費は、住宅・公共料金が+0.3%(前月+0.9%)、輸送サービスが+1.9%(前月:+2.9%)、医療サービスが+0.6%(前月:+0.8%)と前月から伸びが鈍化した一方、娯楽サービスが+2.0%(前月:+1.2%)、金融サービスが+1.0%(前月:+0.2%)と伸びが加速したほか、外食・宿泊が+5.3%(前月:▲0.2%)とプラスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格(前月比)が3ヵ月ぶりに上昇

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+2.0%(前月:▲3.6%)と3ヵ月ぶりにプラスに転じたほか、食料品価格指数が+0.4%(前月:+0.4%)と26ヵ月連続のプラスとなった(図表6)。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+9.6%(前月:+9.3%)と7ヵ月ぶりに前月から伸びが加速した(図表7)。一方、食料品価格指数は+11.1%(前月:+11.6%)と67ヵ月連続のプラスとなったものの、前月から伸びが鈍化した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年02月27日「経済・金融フラッシュ」)

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