2023年01月31日

2022年10-12月期の実質GDP~前期比0.3%(年率1.0%)を予測~

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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● 10-12月期は年率1.0%を予測~2四半期ぶりのプラス成長

2022年10-12月期の実質GDPは、前期比0.3%(前期比年率1.0%)と2四半期ぶりのプラス成長になったと推計される1

民間消費が前期比0.3%と堅調を維持する一方、設備投資(前期比▲0.2%)、住宅投資(同▲1.5%が減少したことなどから、国内需要は5四半期ぶりに減少したが、外需寄与度が前期比0.3%(年率1.3%)と成長率を押し上げた。

実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が▲0.1%(うち民需▲0.2%、公需0.1%)、外需が0.3%と予測する。

名目GDPは前期比1.7%(前期比年率7.1%)と2四半期ぶりの増加となり、実質の伸びを大きく上回るだろう。GDPデフレーターは前期比1.5%(7-9月期:同▲0.5%)、前年比1.2%(7-9月期:同▲0.3%)と予測する。輸入物価の上昇を国内に価格転嫁する動きが広がり、国内需要デフレーターが前期比0.9%の上昇(7-9月期:同0.6%)となったことに加え、原油価格の下落や円安の一服を反映し、輸入デフレーターが前期比▲1.4%の低下となり、輸出デフレーターの伸び(前期比0.3%)を下回ったことがGDPデフレーターを押し下げた。
交易利得の推移 輸出入デフレーターの差によって生じる所得の実質額を表す交易利得(損失)は、2021年1-3月期から減少が続いてきたが、原油安や円高に伴う輸入デフレーターの低下によって、2022年10-12月期は前期差1.7兆円と8四半期ぶりの増加となることが見込まれる。

この結果、実質GDPに交易利得を加えた実質GDIは、実質GDPの伸びを大きく上回り、前期比0.7%(前期比年率2.8%)の高成長となることが予想される。

2/14に内閣府から2022年10-12月期のGDP速報が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2022年7-9月期の実質GDP成長率は民間消費の上方修正などにより、前期比年率▲0.8%から同▲0.4%へ上方修正されると予測している。

この結果、2022年(暦年)の実質GDP成長率は1.1%(2021年は2.1%)、名目GDP成長率1.4%(2021年は1.9%)といずれも2年連続でプラスとなることが見込まれるが、実質GDP、名目GDPともにコロナ前の2019年の水準に届かない。

四半期ベースでは、2022年10-12月期の実質GDPは、コロナ前(2019年10-12月期)の水準を1.2%上回るが、消費税率引き上げ前のピーク(2019年7-9月期)を▲1.5%下回ることが見込まれる。経済の正常化にはまだかなりの距離がある。

2023年1-3月期は、民間消費、設備投資などの国内需要は底堅い動きが続く一方、欧米を中心とした海外経済の減速を主因として輸出が減少に転じることから、現時点では年率ゼロ%台の低成長を予想している。
 
1 1/31までに公表された経済指標をもとに予測している。今後公表される経済指標の結果によって予測値を修正する可能性がある。

●主な需要項目の動向

● 主な需要項目の動向

・民間消費~物価高や感染拡大の逆風下でも底堅さを維持~ 
民間消費は前期比0.3%と3四半期連続の増加を予測する。物価高や新型コロナウイルスの感染拡大という逆風を受けながらも、高水準の貯蓄や全国旅行支援による下支えもあって、消費は一定の底堅さを維持した。
消費関連指標の推移 2022年10-12月期の消費関連指標を確認すると、自動車販売台数は、供給制約の緩和を受けて、前期比9.8%(7-9月期:同0.7%)の増加となったが、物価高の影響などから、外食産業売上高(7-9月期:前期比0.0%→10-12月期:同▲0.3%)、百貨店売上高(7-9月期:前期比1.9%→10-12月期:同▲1.8%)はほぼ横ばいの動きにとどまっている(いずれもニッセイ基礎研究所による季節調整値、外食産業売上高、百貨店売上高は消費者物価指数で実質化)。
・住宅投資~資材価格の高騰が下押し要因に~
住宅投資は前期比▲1.5%と6四半期連続の減少を予測する。
新設住宅着工戸数の推移 新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2019年10月の消費税率引き上げ後に90万戸を割り込んだ後、新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化した2020年度入り後に80万戸程度へと水準を大きく切り下げた。2021年度以降は80万戸台半ばで一進一退の推移が続いているが、資材価格の高騰が住宅投資の下押し要因となっている。
 
・民間設備投資~高水準の企業収益を背景に底堅さを維持~ 
民間設備投資は前期比▲0.2%と3四半期ぶりの減少を予測する。

設備投資の一致指標である投資財出荷指数(除く輸送機械)は2022年7-9月期の前期比8.5%の後、10-12月期は同▲5.8%と3四半期ぶりに低下した。また、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2022年7-9月期に前期比▲1.6%と2四半期ぶりに減少した後、10、11月の平均は7-9月期を▲4.1%下回っている。

日銀短観2022年12月調査では、2022年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア投資、除く土地投資額)が、前年度比16.1%の高い伸びとなった。

設備投資は、高水準の企業収益を背景に、基調としては持ち直しの動きが続いていると判断されるが、10-12月期は輸出、生産活動の停滞を受けて足踏みとなった。
設備投資関連指標の推移/設備投資計画(全規模・全産業)
・公的固定資本形成~ほぼ横ばいの動き~ 
公的固定資本形成は前期比0.1%と3四半期連続の増加を予測する。
公共工事請負金額、出来高の推移 公共工事の先行指標である公共工事請負金額は2020年10-12月期から9四半期連続で減少し、2022年10-12月期は前年比▲5.4%となり、2022年7-9月期の同▲1.8%から減少幅が拡大した。一方、公共工事の進捗を反映する公共工事出来高(建設総合統計)は、2022年7-9月期に前年比▲0.6%と5四半期連続で減少したが、2022年10、11月の平均は同1.0%と増加に転じている。

公的固定資本形成は、予算前倒し執行の影響が一巡したことから、横ばいの動きとなっている。
・外需~2四半期ぶりのプラス~ 
外需寄与度は前期比0.3%(前期比年率1.3%)と2四半期ぶりのプラスを予測する。財貨・サービスの輸出が前期比1.8%の増加となる一方、財貨・サービスの輸入が前期比0.2%の低い伸びにとどまったため、外需は成長率の押し上げ要因となった。

財、サービス別にみると、財輸出は海外経済減速の影響で低い伸びにとどまったが、水際対策の緩和に伴う訪日客数の増加からサービス輸出が高い伸びとなった。一方、サービス輸入が7-9月期の高い伸びの反動で減少に転じたことが、輸入全体の伸びを押し下げた。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 22年10-12月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲5.6%(7-9月期:同▲3.5%)、EU向けが前期比0.5%(7-9月期:同2.8%)、アジア向けが前期比▲6.8%(7-9月期:同▲1.3%)、うち中国向けが前期比▲13.5%(7-9月期:同4.5%)、全体では前期比▲3.4%(7-9月期:同▲0.4%)となった。

EU向けは堅調を維持しているが、ゼロコロナ政策と同政策解除後の感染拡大で経済の低迷が続く中国向けが急速に落ち込み、景気が減速している米国向けは低迷が続いており、輸出数量全体としては弱い動きとなっている。

品目別には、世界的な半導体関連需要の低迷を受けて、半導体等電子部品、通信機などのIT関連が減少しているほか、供給制約の影響が残る自動車が一進一退の動きとなっている。

先行きの輸出は、金融引き締めの影響で景気減速がより鮮明となることが見込まれる欧米向けを中心に低迷が続く可能性が高い。

 
日本・月次GDP 予測結果
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年01月31日「Weekly エコノミスト・レター」)

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