- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- ジェロントロジー(高齢社会総合研究) >
- 高齢化問題(全般) >
- 2035年、85歳以上人口1,000万人時代の到来~埼玉、千葉、神奈川3県では2021年より8~9割増加
2035年、85歳以上人口1,000万人時代の到来~埼玉、千葉、神奈川3県では2021年より8~9割増加
生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
5――85歳以上高齢者のニーズ
例として挙げれば、道路や駅、公共施設等のバリアフリー化、交通事故から守る歩道の整備、休憩できるベンチ等の設置、サービス付き高齢者住宅といったハードの整備、災害発生時の避難・援助態勢の整備といったソフト施策、高齢者が借りやすい賃貸住宅、外出の際の送迎サービス、認知機能が低下した顧客向けの金融サービス、移動販売車や配食サービス、介護予防に資する運動・共食・交流の場、家事支援、見守りサービス、犯罪被害を防ぐための声掛け、本人や家族の健康・生活相談窓口の設置などが考えられる。
地域ごとに、85歳以上高齢者のニーズを検討する際の一つの参考資料となるのが、介護保険法に基づいて、市区町村等が要介護認定を受けていない高齢者を対象に3年ごとに実施している「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」である。この調査には、地域に居住している高齢者の困りごとや心配ごと、自治体に対して充実を希望する施策等に関する設問がある。中には、「85歳以上」などと年齢階級別に回答結果を紹介しているケースもある。
例として、図表3でみた、2035年時点の85歳以上高齢者人口が上位の都道府県の中から、「85歳以上」の結果が公表されている自治体3団体(千代田区、大阪市、名古屋市)を選び出し、日常生活上のニーズに関する設問の結果を抜粋したものが、図表6である。これを見ると、85歳以上高齢者のニーズは、食事や掃除など家事援助や、外出時の送迎、健康づくりなど様々なものがある。市区町村によって設問と選択肢が異なるため、ニーズの全てを表している訳ではないが、備えを考える上で、一つの参考になるだろう。
また、要介護認定を受けている高齢者のニーズについては、厚生労働省が発表している「在宅介護等実態調査」の集計が参考になる1。全国集計で「在宅で暮らし続けていく上で必要なこと」(複数回答)という設問への回答をみると、「移送サービス(介護・福祉タクシー等)」(21.1%)、「外出同行(通院、買い物等)」(19%)、「見守り、声掛け」(14.6%)などが上位となっている。
1 坊美生子(2022)「高齢化と移動課題(上)~現状分析編~」(基礎研レポート)
6――おわりに
85歳以上高齢者向けに提供するサービスとなると、援助の度合いが強まるため、民間事業として成立させるには高いハードルが予想される。かと言って、必要なサービスをすべて公的保険や公的財源で賄うことはできない。官民が協力し、行政サービスや保険サービスなどの公的サービスと、民間による保険外サービスを組み合わせて提供していくことが必要になるだろう。地域ごとにその仕組みを検討し、必要な人材やネットワークを育成・構築するには時間がかかる。「85歳以上1,000万人時代」にどう備えるか、今から検討が必要ではないだろうか。
03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
(2023年01月25日「基礎研レポート」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年05月07日
今週のレポート・コラムまとめ【4/30-5/2発行分】 -
2024年05月02日
為替介入再開、既に連発か?~状況の整理と今後の注目ポイント -
2024年05月02日
米FOMC(24年5月)-予想通り、6会合連続で政策金利を据え置き。量的引締めペースの減速を決定 -
2024年05月01日
ユーロ圏消費者物価(24年4月)-総合指数は横ばい、コア指数は低下 -
2024年05月01日
ユーロ圏GDP(2024年1-3月期)-前期比0.3%、プラス成長に転じる
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【2035年、85歳以上人口1,000万人時代の到来~埼玉、千葉、神奈川3県では2021年より8~9割増加】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
2035年、85歳以上人口1,000万人時代の到来~埼玉、千葉、神奈川3県では2021年より8~9割増加のレポート Topへ