2023年01月25日

2035年、85歳以上人口1,000万人時代の到来~埼玉、千葉、神奈川3県では2021年より8~9割増加

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子

文字サイズ

1――はじめに

2年後の2025年は、「団塊の世代」(1947~1949年生まれ)がすべて後期高齢者入りし、高齢化率が30%に到達するとして注目されてきた。前期高齢者ではまだまだ元気な人が多いが、70歳代も後半となれば、様々な心身機能が衰え始める人も多いため、そのボリュームが拡大すれば、社会保障や社会インフラ、各種のサービスに様々な受け皿が必要となる。さらにその先にあるのが、団塊世代の加齢による「85歳以上」のボリューム拡大である。80歳代後半にもなると、多くの場合、心身機能の衰えが一段階進み、認知症の人や要介護の人も大きく増える。国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の推計によると、2035年、そのような85歳以上人口が全国で1,000万人を超えると推計されている。大胆に移民政策を変更することがなければ、住民のおよそ10人に1人が85歳以上、という時代が訪れる。そこで本稿では、社人研や政府統計などから、都道府県別の85歳以上高齢者人口や増加率を地域ごとにまとめ、必要となるサービス等についてみていきたい。

2――高齢化の状況

2――高齢化の状況

まずは高齢者人口の概況について、前期高齢者である「65~74歳」と、後期高齢者のうち「75~84歳」、「85歳以上」の3つの区分に注目して、これまでの推移と将来推計をみていきたい(図表1)。

高齢者全体(65歳以上)の人口増加は続いているが、年齢区分別にみると、前期高齢者の人口は既に減少が始まっている。総務省「人口推計」(国勢調査がベース)の月ごとの年齢階級別人口推計の毎月推計値によると、それまで増加し続けてきた前期高齢者人口は、2016年半ばに約1,770万人で頭打ちとなり、以降、緩やかに減少している。社人研の将来推計によると、今後も減少が続く。ただし、団塊ジュニアが高齢者入りするため、2035~2040年頃には再び増加する。

これに対して、後期高齢者(75歳以上)人口は増加が続いており、同推計値によると、2018年3月に前期高齢者人口を上回り、ボリュームが逆転した。「高齢者の高齢化」が明白になったと言える。社人研の将来推計によると、2035年頃まで続いた後、いったん減少するが、団塊ジュニアが後期高齢者入りすることで、2050年から再び増加の見込みである。
図表1 「75歳~84歳」と「85歳以上」の人口推移と将来見通し
次に、高齢者を「65歳~74歳」と「75~84歳」、「85歳以上」の3階級に分けて、2020年から5年ごとの人口と人口増加率を見ると、図表2のようになっている。3階級の人口を比較すると、2045年までは「65~74歳」が最多である。しかし、時間軸による推移に着目すると、「85歳以上」は2020年の602万人から2035年には1,000万人超に急増し、2040年には1,024万人となる。

3階級の5年ごとの人口増加率を比較しても、「85歳以上」が顕著に増加していることが分かる。2035年までは二けた台のプラスが続いているからである。このような85歳以上高齢者の急増ぶりが、現在から2040年までの高齢化に伴う大きなトピックスの一つと言えるだろう。
図表2 年齢階級別にみた5年ごとの将来推計人口と人口増加率

3――都道府県別の状況

3――都道府県別の状況

1|都道府県別の85歳以上人口
次に、社人研の5年ごとの将来推計人口で「85歳以上」が最多となる2035年の、都道府県別の状況をみていきたい。まず85歳以上人口を多い順に並べたものが図表3である。最多の東京都は約88万人となっているほか、神奈川県(約70万人)、大阪府(約69万人)、埼玉県(55万人)と、大都市圏が続いている。最小は鳥取県(約5万人)、徳島県(約6万人)、島根県(約6万人)などとなっている。
図表3 都道府県別に見た2035年の85歳以上人口
2|都道府県別の85歳以上人口増加率
次に、社人研の将来推計人口と総務省の人口推計から、最新の2021年から2035年までの、85歳以上人口の増加率を都道府県別に算出し、大きい順に並べたものが図表4である。増加率が最大なのは埼玉県で、2035年までに9割以上増える見込みである。次に千葉県(+84.3%)、神奈川県(+77%)がトップ3で、愛知県(+76.1%)、大阪府(+73.4%)などの大都市圏が並んでいる。既に高齢化と人口減少が進行している東北、四国、九州、山陰などでは、増加率は2~3割にとどまった。
図表4 都道府県別に見た85歳以上人口の増加率(2021年~2035年)

4――85歳以上高齢者の心身の状態

4――85歳以上高齢者の心身の状態

次に、「85歳以上高齢者」の心身の状態の特徴について述べたい。詳しくは筆者の基礎研レポート「高齢化と移動課題(上)~現状分析編~」(2022年11月22日)で説明したが、加齢に伴う心身の変化を表すものとして、ADL(食事、排せつ、着脱衣、移動、入浴など日常生活を送る上で必要な最も基本的な生活機能) と IADL(買い物、洗濯、掃除など家事全般、金銭管理や服薬管理、外出して乗り物に乗るなど、日常生活を送る上で必要な生活機能)を指標とした自立度、要介護認定率、認知症有病率、疾病の受療率が挙げられる。85歳以上高齢者について、これらの状態を整理すると、自立度は顕著に低下し、要介護率、認知症有病率、受療率は大きく上昇する(図表5)。
図表5 85歳以上高齢者の特徴
Xでシェアする Facebookでシェアする

生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子 (ぼう みおこ)

研究・専門分野
中高年女性の雇用と暮らし、高齢者の移動サービス、ジェロントロジー

経歴
  • 【職歴】
     2002年 読売新聞大阪本社入社
     2017年 ニッセイ基礎研究所入社

    【委員活動】
     2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
     2023年度  日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【2035年、85歳以上人口1,000万人時代の到来~埼玉、千葉、神奈川3県では2021年より8~9割増加】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

2035年、85歳以上人口1,000万人時代の到来~埼玉、千葉、神奈川3県では2021年より8~9割増加のレポート Topへ