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消費者の節電意識と行動~高齢層ほど熱心、若年層の方が消極的
生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
次に、世帯年収別に特徴をみると、まず節電の取組に関しては、年収区分が最も低い「200万未満」では「使わない家電のプラグを抜く」が全体より高かった一方、「省エネ家電を購入、使用する」は全体より低かった(図表6)。低所得世帯では、心がけ次第ですぐに実行できる取組に対しては積極的だが、一時的に支出が必要となる取組に対しては消極的だと言える。「省エネ家電を購入、使用する」は、概ね世帯所得が上がるほど回答率も高かった。また、「空調の効いた施設などでの滞在時間を長くし、自宅であまり電気を使わないようにする」についても高所得層の方が高い傾向があった。小売や交通事業者などでは、家庭の節電につながる「お出掛け」を呼びかける取組もあるが、外出すれば、目的地や移動で何らかの支出を伴うことが多いため、高所得世帯の方がマッチしやすい取組だと言える。また、所得に余裕が無ければ、生活時間や場所の調整ということ自体が、ハードルが高いのかもしれない。
節動機については、1,200万円以上の高収入層では、「電気代の節約のため」の回答率が全体より低かったが、「電力不足に陥って、大規模停電が発生するのを防ぐため」や「温室効果ガス削減のため」など、その他の項目については概ね高かった。高収入層の方が、自身の家計への懸念が相対的に低く、社会的・政治的なテーマに対する意識が相対的に高いとも言えるだろう。
最後に、ライフステージ別に特徴をみたものが図表7である。全体的に、ライフステージが上がるほど取組が積極的だと言える。「電気の消し忘れに注意する」や「重ね着をして暖房器具の設定温度を下げる」は、「未婚(独身)」と「第一子誕生」では全体より低かったのに対し、「第一子大学入学」から「孫誕生」までは高かった。2|で述べたように、若い世代は相対的に取組に消極的だということに加え、乳幼児がいる家庭では、空調設定は子どもの状態や体調を優先するために、節電目的の調整が難しい、という可能性もある。ただし、上述したように、高齢者も体温調節は難しくなるため、高齢者がいる家庭でも室温の下げすぎや体調変化には注意が必要だろう。
「省エネ家電を購入、使用する」は「第一子独立(結婚・就職)」以降で全体より高かった。子育てを卒業した世帯の方が、省エネ家電を新たに購入する余裕が生まれやすいことや、家庭を形成してから経過した年数が長い方が、家電の使用年数が長いことも考えられる。
節電の動機についても、全体的に、ライフステージが下がるほど低く、ライフステージが上がるほど高い傾向がみられた。ライフステージが上がるほど、大規模停電や地球温暖化など、社会的テーマに対して関心が高いようだ。
4――おわりに
家計負担の軽減という面では、政府の物価高対策として、今月から小売事業者への補助が開始される。ただし、2で述べたように、2021年末以降、消費者物価指数の光熱・水道は前年同月比で二けた台のプラスが続いてきたため、各家庭において、どの程度まで負担感が軽減されるかは分からない。さらに東北電力や中国電力など5社は値上げを申請している2。従って、今後しばらくは、消費者の節約意識と節電意識は高いまま維持されるだろう。
また、本調査を通して、今後取り組むべき課題として見えてきたのは、上述した通り、相対的に節電姿勢が消極的な若年層に向けた対策である。従来、Z 世代を含む若年層の方が、環境意識が高いようにみられることもあったが、実際の節電行動や節電意識を見てみると、寧ろ、高齢層の方が節電に対して熱心で、若年層の方が消極的であることが分かった。本稿ではその要因までは明らかにできていないが、背景の一つとして、若年層のエネルギー問題と節電に対する理解不足は挙げられるだろう。今後は若年層がエネルギー消費を、自身の問題として理解し、行動につなげられるように、分かりやすい啓発が必要だと言えるだろう。
2 経済産業省電力・ガス取引監視等委員会第料金制度専門会合(第28回)配布資料。
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- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
(2023年01月19日「基礎研レポート」)
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