2022年12月26日

人口構成からみる社会の変化(1)-人口ピラミッドおよび年齢3区分人口構成比からみた変化-

生活研究部 井上 智紀

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1――はじめに

総務省統計局「人口推計」によれば、2021年10月1日現在の日本人人口は1億2,278万人、65歳以上人口が占める高齢化率は29.3%に達している。周知の通り、我が国の人口は2000年代半ばに減少に転じており、総務省統計局「国勢調査」の結果を遡ってみると、2020年の1億2,321万人と同水準であったのは、1990年(1億2,328万人)ごろである。一方、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によれば、今後も我が国の人口は減少の一途をたどり、2050年代には1億人を割り込むものと予測されているが、人口が1億人を突破したのは1960年代後半と、奇しくも前回の東京オリンピックが開催されていた頃と重なっている。当然のことながら、60年近く前である1960年代後半と2050年、30年ほど前の1990年ごろと現在とでは、人口の規模が似通っていたとしても、社会経済環境をはじめ、人々の生活全般に至るまで、社会のあり様は全く異なる。しかし、我々の意識の面では、当時の社会環境に紐づく価値意識が固定観念となって、足元の、あるいは、今後の社会の姿に対する理解の妨げとなっている側面もあるのではないだろうか。

そこで本稿では、こうした時代背景の差異の一端として、人口構成に着目し、総務省統計局「国勢調査」における1965年と1990年、2020年の人口および国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」における2030年の推計人口の4時点間を比較してみたい1
 
1 最新の国勢調査の結果に基づく国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口は、新型コロナウィルス感染症拡大の影響から、2023年前半の公表を予定されていることから、本稿では参照できない。また、推計の前提となる基礎データと、足元の出生・死亡といった人口動態との間には相応の乖離が生じている可能性もあることから、最新の推計人口が公表されたとしても、推計結果については慎重に見ていく必要があるものと思われる。

2――平均年齢と人口比率

2――平均年齢と人口比率

1|人口ピラミッドと平均年齢
はじめに、性・年齢5歳階級別の人口の推移について比較するために人口ピラミッドをみると、1965年時点の“富士山型”から、70年代以降の少子化の影響を受け、1990年には男女それぞれ40代前半の団塊世代および10代後半の団塊ジュニア世代の2つのピークをもつ“星型”に近い形へと変わっている。また、2020年以降は85歳以上を中心に高齢女性が大きく増加したほか、少子化に加え子どもをもつ世代の人口の減少も相まって左右非対称の“つぼ型”に変わっている。

人口構成の簡易な代表指標の一つであり、社会全体の年齢的な重心を示す平均年齢に着目してみると、これらの4時点における平均年齢は1965年時点では29.9歳であったものが、1990年の37.2歳を経て2020年には47.4歳にまで上昇している。平均年齢は今後も高齢化の進展とともに上昇し、2030年には49.8歳と50歳近くになるものと予測されている。
図表1 人口ピラミッドと平均年齢の推移
新入社員の入社や、定年を迎えたり再雇用期間を終えたりするなどでの退職等で世代交代していく職場環境に近づくよう、生産年齢人口に限定して平均年齢を計算してみても、1965年時点の34.5歳から1990年には38.6歳、2020年には41.2歳と、人口全体の平均ほどではないものの、平均年齢は緩やかに上昇していることがわかる。高校進学率が70年代に9割を超え、概ね横ばいで推移しており、職場に10代後半がいるケースも限られることを踏まえれば、実際には、多くの職場における平均年齢はさらに高い水準にあり、かつ、上昇しているものと思われる。こうした職場における高齢化の進展が、旧態依然とした仕事の進め方への固執や新商品・サービスの導入・採用の敬遠につながるなど、業務効率化の阻害要因となっているおそれもあるのではないだろうか。
2|人口比率
15歳未満の「年少人口」、15~64歳の「生産年齢人口」、65歳以上の「高齢者人口」の3つの区分ごとの構成比としてみると、1965年当時には25.7%と4分の1を占めていた年少人口比率は少子化の進展に伴って低下の一途を辿っており、1990年時点で18.2%と2割を下回り、2020年には12.1%と約1割にまで低下している。一方で、高齢者人口の割合である高齢化率では、1965年時点では6.3%に過ぎず、1990年時点でも12.1%と、足元の年少人口比率と同程度の割合であったものが、2020年には28.7%にまで上昇し、2030年には31.2%に達するものと予測されている。

もはや15歳未満の子どもは人口全体の1割程度と、1990年当時の高齢者と同程度しかおらず、今後ますます減少していくことが見込まれている。コロナ禍で出生数が大きく減少している影響を踏まえれば、このような年少人口減少の速度はさらに加速していくことが危惧されよう。
図表2 年齢3区分別人口構成比の推移
また、全体としての人口が減少する中、人口ピラミッドでみたとおり年少人口の減少と高齢者人口の増加が進んだ結果、両者を合わせた従属人口2比率は1990年以前には30%程度であったものが、足元では40%を超え、2030年には42.3%まで上昇する見込みである。こうした従属人口比率の上昇が、生産年齢人口にあたる世代にかかる負担と不可分の関係にあることは明らかであり、足元の社会のあり様にあわせて定義を見直していくことも必要ではないだろうか。

社会保障制度を始め、社会全体に対する定着まではまだ多くの時間を要すると思われるものの、既に高齢者の定義については75歳以上に変更してはどうかとの提言も示されるなど、議論が進められている。一方で、高齢者や年少者を扶養する立場とされる生産年齢人口については、現時点では定義に対する疑義を示されることもないままである一方、前述の通り国内における高校進学率の高さを鑑みれば、15~19歳の大半が実態としては扶養される立場にありながら比率の計算上だけでは支え手側にカウントされている。今年から実施された成人年齢の引下げに反する面はあるものの、年少人口を19歳までに拡張すること(生産年齢人口に含める年齢下限の引き上げ)も検討に値するとはいえないだろうか。実際に、高齢者の定義のみを75歳以上に限定した場合の従属人口比率は2020年時点で26.9%であり、2030年でも30.3%と1990年の従属人口比率と同水準に留まることとなる。現実に即して生産年齢人口から15~19歳を除外し、年少人口と併せてみても2020年時点では31.5%と1990年時点と同程度に留まることになる。

これらの定義は、現実社会における諸制度の根幹にかかわるものでもあり、定義の見直しはそのまま、諸制度の見直しの議論に直結する。制度の変更は相応の痛みが伴うこともあり、影響の範囲や規模の大きさなど、多方面から議論を尽くし、慎重に検討を進めていくことが求められよう。しかし、支え手である現役世代の負担が限界に達するまでに残された時間もまた、そう多くはないのではないだろうか。
 
2 従属人口は、15歳未満の年少人口と65歳以上の老年人口を合計したものである。
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