2022年12月14日

英国雇用関連統計(22年11月)-非労働力人口の低下で失業率は3.7%に上昇

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率はやや上昇

12月13日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【11月】
失業保険申請件数1前月(152.65万件)から3.04万件増の155.69万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は3.9%となり、前月(同3.9%)から横ばいだった
給与所得者数2前月(2983.2万人)から10.7万人増の2993.9万人となった。
増減数は前月(+7.9万人)から増加、市場予想3(+4.2万人)を上回った。

【10月(22年8-10月の3か月平均)】
失業率は3.7%で前月(3.6%)から上昇、市場予想(3.7%)と一致した(図表1)。
就業者は3277.3万人で3か月前の3274.6万人から2.7万人の増加となった。
増減数は前月(▲5.3万人)からプラスに転じ、市場予想(▲1.7万人)を上回った。
週平均賃金は、前年同期比6.1%で前月(6.0%)からやや加速したが、市場予想(6.0%)と一致した(図表2)。

(図表1)英国の失業保険申請件数、失業率/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
2 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85%のデータから推計(22年7月から推計方法変更)。
3 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:実質賃金はマイナス幅を拡大

まず、11月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は22年9-11月の平均で118.7万件となり3-5月平均(130.0万件)をピークにした減少傾向が続いており(図表4)、産業別に見ても幅広い業種で求人数の減少が見られる。ただし、単月の求人数で見ると11月は111.9万件と21年12月(117.7万件)以来の110万件台に低下した4

給与所得者データでは、産業別に見ると11月は卸・小売業が前月比で大幅マイナスとなる一方、事務・支援サービスが引き続き大きく増加し、全体でも増加した(図表4)。月あたり給与額(中央値)は前年同月比8.0%で10月(6.9%)から伸び率が大きく加速した。
(図表3)求人数の変化(要因分解)/(図表4)給与取得者データの推移
10月までのデータ(労働力調査)を確認すると、22年8-10月期の失業率は3.7%とやや上昇した。前月比で失業者が増加する一方、非労働力人口が減少したため、就業者は増加した。足もと、労働参加率は63.0%となりやや改善したものの、コロナ禍後の最低値付近で推移している。なお、非労働力人口はコロナ禍以降には高齢者を中心に増加していたが、足もとの非労働力人口は高齢層を中心とした減少となっている(図表5)。労働市場に参入しない理由としては、引退したと回答する層の減少が目立つ。
(図表5)英国の非労働人口の増減(コロナ禍前比)/(図表6)英国の名目賃金水準(週あたり賃金)
労働時間については、31.6時間(前年同期差+0.1時間)、フルタイム労働者で36.3時間(同+0.1時間)となり横ばい推移が続いている(前掲図表2)。週間総労働時間は7-9月期時点でコロナ禍前ピーク(19年8-10月)から1.8%低い水準であり、足もとやや低下している。賃金は、名目賃金が22年8-10月の前年同期比で6.1%と高めの伸び率を維持している。ボーナスを除く定期賃金の伸び率は名目で6.1%(7-9月期5.8%)と加速、ボーナスも依然として高い水準にある(図表6)。ただし、実質賃金は▲2.7%(7-9月期▲2.6%)とマイナス圏であり、またコロナ禍以降の最低値を更新している(前掲図表2)。
 
4 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年12月14日「経済・金融フラッシュ」)

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