2022年12月02日

ユーロ圏失業率(2022年10月)-失業率は低いが若年層では悪化傾向

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率は6.5%まで低下

12月1日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。

【ユーロ圏19か国失業率(2022年10月、季節調整値)】
失業率は6.5%、市場予想1(6.6%)を下回り、前月(6.6%)からやや低下した(図表1)
失業者は1087.2万人となり、前月(1101.4万人)から14.2万人減少した

(図表1)失業率と国別失業者数/(図表2)若年失業率と国別若年失業者数
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:若年失業率の悪化傾向が鮮明に

ユーロ圏の22年10月の失業率は6.5%で、前月(6.6%)からやや低下し、統計データ公表以来の最低値を更新した。なお、9月以前のデータは改定値でほとんど修正されなかった。

失業者数は10月の前月差で14.2万人減となり、減少幅は9月(同3.6万人減)から拡大した(図表3・4)。主要国の10月の失業者数変化は前月差でフランス(▲4.7万人)が大幅に減少、イタリア(▲0.7万人)とドイツ(▲0.2万人)がやや減少、スペイン(0.0万人)が横ばいだった。

10月の若年失業率は15.0%となり、6月(15.2%)からやや低下した(図表2)。ただし、9月以前の数値が大幅に悪化方向に改定されている(9月14.6→15.2%、8月14.4→15.0%、7月14.4→14.7%など)。単月で見ると若年失業率は低下したが、改定後のデータでは22年5月(14.1%)をボトムにした悪化傾向が鮮明になっている。

若年失業者数は10月で232.6万人(前月差▲2.5万人)となり、9月(+3.9万人)の増加からマイナスに転じた(図表4)。失業者数は、総数で見るとコロナショック時(20年3月)を大幅に下回っているが、若年失業者はコロナショック時と同水準で推移している。
(図表3)ユーロ圏(19か国)の累積失業者数変化/(図表4)ユーロ圏(19か国)の累積失業者数変化
国別の10月のデータを見ると、失業率はデータが公表されている19か国中、悪化した国が4か国、改善が8か国、横ばいが7か国だった(図表5)。また、若年失業率は公表されている16か国中、悪化した国が7か国、改善が7か国、横ばいが2か国だった(図表6)。
(図表5)ユーロ圏の失業率(国別)/(図表6)ユーロ圏の若年失業率(国別)
最後に詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、イタリアでは失業者と非労働力人口が減少し、就業者は増加、労働参加率は65.7%とやや改善している(図表7)。一方、ポルトガルでは失業率は減少したが、非労働力人口が大幅に増加、就業者数も減少している。労働参加率は高水準だが(図表8)、就業者数は3か月連続の減少で冴えない結果だった。
(図表7)イタリアの失業者・非労働力人口・労働参加率/(図表8)ポルトガルの失業者・非労働力人口・労働参加率
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年12月02日「経済・金融フラッシュ」)

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