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グリーンウォッシュを乗り越える-ESGを単なるブームにしないために
基礎研REPORT(冊子版)10月号[vol.307]
金融研究部 取締役 研究理事 兼 年金総合リサーチセンター長 兼 ESG推進室長 德島 勝幸
1―ESGに対する批判は不可避だが
ESGやSDGsは地球や社会のために取り組むものであり、中長期的には、企業の持続可能性を高め、投資家に収益をもたらすものである。ESG投資によって市場インデックスと同等のパフォーマンスを得られるのであれば否定する必要がないし、中長期で超過収益をもたらす蓋然性が高いという考えが根底にある。
環境を悪化させて収益拡大のみを目指す行為は、公害の発生で否定されている。投資においても同様であり、儲けるためなら何をしても良いという考えは、現代の資本主義にそぐわない。その一方で、ESGなどの基準となる考え方は、時代によって変遷する。何がESGやSDGsの観点に適うものかどうかは、人々の意識や環境、状況などによって変わり、決して長期間に固定されたものではない。
2―グリーンウォッシュを乗り越える
近年の投資信託の販売状況を見ると、“ESGファンド”が設定され、資金を集めている。様々な金融商品を通じて、ESGやSDGsに対する意識を高めることを否定しないが、一時的なブームに乗るだけであれば、単なるテーマ型ファンドのパターンに留まる。また、企業の余資運用においてESGファンドを購入してESG経営への取り組みを示す例があるように仄聞するが、投資を本業とする機関投資家とは異なり、一般的な企業は本業においてESG経営を志向するべきである。
「グリーンウォッシュ」の動きが少なからず見られる背景には、企業側も投資家側も、ESGやSDGsにおける本質的な意義を十分に理解せず、表面的に取り組んでいることがあるのだろう。ESGなどに中長期的に取り組むことは、企業収益の拡大のみを目指すものでなく、経済や社会においての存在意義を高めることにも繋がっているのである。
3―名ばかりのESGを排する
グリーンウォッシュを排除するために必要なのは、市場参加者の意識と目である。オピニオンを発表している認定機関が適切な判断を下しているか、利益相反の状況にないかといった視点は重要である。また、債券発行以降に発行体が十分な情報開示を行っているかどうかも重要である。グリーンボンドなどに投資することは、投資家自らが継続的な確認を行う責務を負っていると考える必要があろう。
名ばかりのESGやSDGsを唱え、社会や地球の改善だけを主張することは、良識ある営利企業の行う行為ではない。政府系機関やNPO、宗教団体などに任せればよい。企業も機関投資家も、あくまでも収益獲得を目的とする法人であり、ESGやSDGsを唯一の目的にすることは好ましくない。
近年は、若年層がESGやSDGsを強く意識しているとされるが、本質を理解せずに、TVで見たから、学校で教わったから、といった表層的な取り組みに留まるのであれば、熱し易く冷め易い活動でしかない。若者だけではない。企業もESG経営のみを行えば良いのではない。ESG投資やESG経営を意識しても、主となる目的は中長期的に、かつ、継続的に「利潤を獲得する行動」が、資本主義の根幹であることを忘れてはならない。
(2022年10月06日「基礎研マンスリー」)
03-3512-1845
- 【職歴】
・1986年 日本生命保険相互会社入社
・1991年 ペンシルバニア大学ウォートンスクールMBA
・2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社に出向
・2008年 ニッセイ基礎研究所へ
・2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・日本ファイナンス学会
・証券経済学会
・日本金融学会
・日本経営財務研究学会
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