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「みなし入院」に対する入院給付金、支払対象見直しへ-どう見直され、いつの診断まで支払われるのか-いつまで請求できるのか-

保険研究部 上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長 有村 寛
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1――はじめに
そういった中、岸田総理は、8月24日、自治体の判断で患者届出の範囲を高齢者などに限定することを可能とすることを発表(その結果、9月2日付で宮城、茨城、島根、佐賀の4県、9月9日付で三重、長崎の2県が先行導入済)したが、続いて9月6日付で厚生労働省から事務連絡1が発出され、9月26日より全国一律で発生届の対象を限定することとなった。
また、入院給付金2についても、特に4月以降、「みなし入院」に対する支払が著しく急増している等の状況にあったが、上記の政府の動きに伴い、9月1日、生命保険協会から、「みなし入院」に対する入院給付金支払について、支払対象も含めた取扱い等について検討するよう、会員会社宛周知している旨、公表され、同9日、大手生保等が取扱いについて、公表したところである。
当レポートでは、「みなし入院」に対する入院給付金支払いに関し、見直しの方向性について現時点で把握できる範囲で整理した。
なお、ここでの記載内容は、あくまで筆者の個人的見解に基づくものである。
1 令和4年9月6日付厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡「Withコロナの新たな段階への移行に向けた療養の考え方の見直しについて」。
2――「みなし入院」による入院給付金支払対象等の見直しの内容
【2022年9月1日付、生命保険協会「新型コロナウイルス感染症による宿泊施設・自宅等療養者に係る療養証明書の取扱い等について」の要旨】
<保健所等に療養証明書の発行を求めない事務構築の検討>
・2022年8月30日付での金融庁からの要請を受け、医療従事者や保健所の更なる負担軽減のため、給付金等の支払いにあたり、療養証明書の発行を医療従事者や保健所に求めない事務構築の検討が行われるよう、会員各社に周知した。
<「みなし入院」による入院給付金の支払対象等の検討>
・2022年9月1日付での金融庁からの要請を受け、新型コロナウイルス感染症にかかる発生届の範囲については、政府において、全国一律に重症化リスクの高い方々に限定する方向で検討が行われていることも踏まえ、会員各社において、いわゆる「みなし入院」による入院給付金の支払対象も含めた取扱い等について、検討が行われるよう、周知した。
(1) 支払対象の見直し
上記を受け、9月9日付で大手生保等が「みなし入院」による入院給付金等の支払対象の見直しについてプレス発表している3その概要は以下の通りであり、その他の保険会社も多くは同様の取扱いとするものと考えられる。
<「みなし入院」による入院給付金等の支払対象>
9月26日以降に新型コロナウイルス感染症と診断された方のうち、以下の重症化リスクの高い方
(1) 65歳以上の方
(2) 入院を要する方
(3) 重症化リスクがあり、新型コロナ治療薬の投与または新型コロナ罹患により酸素投与が必要な方
(4) 妊娠されている方
3 なお、各社のプレスリリースでは、全国一律での発生届の対象の限定に伴い、発生届の対象とならない方は、新型コロナウイルス感染症に罹患しただけでは「入院が必要な状態」と判断できない等により、これまでの特別取扱について見直す等、記載されている。
通常、新型コロナウイルス罹患の時期と請求時期にはタイムラグが発生することから、第7波による請求ピークを迎える中、新型コロナウイルスに罹患したのは取扱い見直し前だが、請求は見直し後になるようなケース(例えば、8月に新型コロナウイルスと診断され、10月に入院給付金を請求)が多数発生することが予想される。診断が取扱い見直し前であれば、請求が見直し後になっても入院給付金は支払われるのではないかと考えられるところ、大手生保等では、新型コロナウイルス感染症の診断年月日が9月25日までであれば(請求が9月26日以降であった場合でも)、従前どおり重症化リスクの高い方以外に対しても入院給付金を支払うことを公表している4。各社とも同様の考え方を取るものと考えられるが、具体的な取扱や詳細は個別にHP等で確認する必要があろう。
4 なお、約款上、保険金等の時効は3年と定められているのが一般的であるが、一部の会社では、3年を越えて請求があった場合も支払っている。
一方、保健所等に療養証明書を求めない事務構築については、都道府県の判断による発生届の限定の取扱い開始が9月2日であり、先行して発生届の限定を実施する都道府県の契約者等の不安を解消するため、可及的速やかな対応が望まれるところとなっていた。
生命保険協会では、療養証明書以外に新型コロナウイルスに罹患したことが確認できる代替書類として、以下を例示している。
【療養証明書以外に新型コロナウイルスに罹患したことが確認できる代替書類として利用可能性のある書類例】(生命保険協会公表)
・My HER-SYSの証明
・医療機関等で実施されたPCR検査や抗原検査の結果がわかるもの
・医療明細書(医学管理料に「二類感染症患者入院診療加算」(外来診療・診療報酬上臨時的取扱を含む)が記載されたもの)
・コロナ治療薬が記載された処方箋・服用証明書
・自治体が設置している健康フォローアップセンターの受付結果(SMS・LINE等)
・保健所と陽性者がやりとりしたメールの写し
・保健所から陽性者に出された案内文(健康観察や生活支援の留意点などが記載)
・PCR検査や抗原検査を実施する検査センター(医療機関除く)の検査結果(※市販の検査キットは除く)など
3――おわりに
今回の見直しの動きについては、様々な意見もあるものと考えられるが、「みなし入院」に対して入院給付金を支払うことを保険会社が決めた令和2年4月の状況から考えると、状況は大きく変容したものと考えられる。2、3日で回復する風邪類似症状が多いと報道されており、それでも入院給付金が請求できる状況は、新型コロナウイルス罹患者以外の契約者との間の公平性等の観点もあり、今日的な視点での見直しが必要な状況になっていたものと考えられる。
具体的な対応は、大手生保等より公表し始めているところだが、丁寧な顧客対応が求められると考えられることから、引き続き、状況について注視して参りたい。
(2022年09月09日「基礎研レポート」)

03-3512-1822
- 【職歴】
1989年 日本生命入社
1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職
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