2022年08月23日

老後のための2,000万円をどうやって確保するか-目標金額の2,000万円を超えたら、何をすべきか

金融研究部 研究員 熊 紫云

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2|毎月2.5万円の場合の最終的な時価残高
次に、毎月の積立金額が2.5万円の場合で、外国株式型で運用を継続する場合と投資方法を移行する3つのパターンごとに25年後の時価残高の分布をまとめてみた(図表4)。
【図表4】2.5万円の積立投資での25年後の時価残高の分布図
25年後の時価残高の平均値をみると、外国株式型で運用を継続する場合と投資方法を移行する場合を比較しても2,100万円くらいであり、差がほぼなく優劣つけがたい。

しかし、外国株式型で運用を継続すれば25年後の時価残高は最大値と最小値との差額が1,742万円と幅が大きい。目標達成割合は投資方法を移行する場合に比べて68%と高くないが、運が良い人は25年後の時価残高が最大2,979万円にもなる。一方で、運が悪いと最小で1,237万円となる。

半分を元本確保型にすれば25年後の時価残高は最大値と最小値との差額が851万円で、外国株式型で運用を継続するより幅が小さい。

全額をバランス型もしくは元本確保型にすれば、25年後の時価残高は最大値と最小値との差額が400万円台となり幅が抑制できていた。

そもそも積立資産額が25年間ずっと一度も2,000万円を超えずに運用を継続せざるを得ないときもある。このため、全額をバランス型もしくは元本確保型にするケースでは25年後の時価残高の最小値が1,856万円であり、2,000万円を下回っている。しかし、25年間、毎月2.5万円で金利0%の貯金をする場合の資産総額が750万円(2.5万円×12か月×25年)であるのに対して、外国株式型へ積立投資をする場合の資産総額が最小でも1,856万円と相当高く、外国株式型への投資が効果的であったことが分かる。
3|毎月3万円の場合の最終的な時価残高
毎月3万円の場合の25年後の時価残高の平均値をみると、外国株式型での運用継続する場合が2,500万円であるのに対して、投資方法を移行する場合は2,100~2,300万円と幾分低い(図表5)。
【図表5】3万円の積立投資での25年後の時価残高の分布図
外国株式型で運用継続をすれば、25年後の時価残高は最大値と最小値との差額が2,090万円もあり、幅は極めて大きい。目標達成割合が78%と決して高くないが、3,000万円を上回る割合が12.5%以上もあり、25年後に目標金額の1.5倍以上を獲得する割合が高い。

毎月3万円の場合は投資期間中に一度は2,000万円を上回るケースの割合が100%なので、全152ケースにおいて、改善方法として投資方法を移行することができた。

半分を元本確保型にした場合、最大値と最小値との差額が1,061万円まで縮小する。

全額をバランス型にすれば、最終時価残高の最大値と最小値との差額は、548万円と幅は小さいが、全額を元本確保型にすると283万円と更に幅が小さくなる。最終的な時価残高はあまり高くないが、全額を元本確保型にする場合はもちろん、全額をバランス型にする場合も最小値が2,000万円を上回っている。目標金額よりもかなり高い投資成果を獲得するチャンスを失うデメリットがある一方、目標金額の確保をより確実にするメリットがある。

以上で述べてきたように、目標金額を確実に確保したいと思う人は、投資期間中に目標金額を上回ったら、全額を低リスクのバランス型もしくは元本確保型にするのが得策であると思う。特に毎月2.5万円を積立てる場合は、2,000万円を上回ることが相対的に少なく、貴重なチャンスとなるので、目標金額を超えたら、全額を売却して元本確保型にして目標金額を確保するのが良いと思う。
4|投資期間中に2,000万円を超えた時に考えるべきこと
25年間を想定して、投資期間中に目標金額を超えた場合には、目標金額を確実に確保したいと思う人は、全額を低リスクのバランス型や元本確保型にするのが良いと述べたが、低リスクのバランス型と元本確保型のどちらを選んだら良いのか?

ここでは残りの投資期間を判断基準の一つとして説明する。毎月2.5万円と3万円積立投資の場合で残りの投資期間が異なる。ご参考までに2,000万円を上回る時点での残りの投資期間(25年-2,000万円を上回った時点での投資開始からの経過期間)の平均を計算してみた。毎月2.5万円の場合は平均で2年4か月、毎月3万円の場合は平均的で4年1か月であった。

2,000万円を超えた時点で残りの投資期間がある程度長い場合は、中長期的に高いリターンが期待できる資産と言われる外国株式が組み入れられるバランス型にすれば、目標金額を確保しつつも、最終的な時価総額が目標金額よりも比較的高くなることが期待できる。

一方で、残りの投資期間がかなり短い場合は、投資期間終了直前に予測できない株価急落が起きると株価の回復を待っていられないので、安全資産のみの元本確保型にして、目標金額をより確実に確保しておくことを優先すべきである。また、残る投資期間が長いか短いか判断できない場合は、元本確保型をおすすめする。

このように2,000万円を超えた時点では残りの投資期間を考慮すべきだと述べたが、実際に判断する際には、残りの投資期間に加え、各人の年齢、健康状態、財産状況やその時の金融市場環境等を勘案することも重要である。

4――まとめ

4――まとめ

このレポートでは、老後に備え、25年間の積立投資で2,000万円を目標金額とすることを前提に具体的にどうしたら良いのかについて考えてみた。
 
その結果、2,000万円を投資期間25年である程度確実に達成するには、外国株式型に毎月3.5万円以上を積立投資する必要があったことが分かった。毎月2万円だと達成は難しかった。

毎月の積立金額が2.5万円や3万円の場合は投資期間中に目標金額の2,000万円を超えながらも、最終的な時価残高が2,000万円を下回るという非常に残念なケースが多かった。この場合、2,000万円を超えた時点で、全額を低リスクのバランス型や元本確保型にすることで目標達成割合を大幅に改善することができた。

この結果を踏まえると、投資期間中に目標金額の2,000万円を達成した時には、残りの投資期間に加えて、その時の各人の年齢、財産状況や金融市場環境等を勘案することも重要ではあるが、残りの投資期間が短ければ躊躇せずにリスクの低いポートフォリオに移行すべきである。
 
一方で、これまで繰り返し述べてきたが、老後までの投資期間が長い若い人の場合は、長期・積立投資のメリットを生かし、リスクを積極的にとって、外国株式型などの高いリターンが期待できる商品に投資した方が良い。その方がより効率的に資産を増やすことができ、目標金額を達成した場合は今回紹介したような改善方法が可能となるなど、将来の選択肢が拡がる。

老後のための資産形成に向けてまだ十分な準備を始めていないのであれば、まずは第一歩として、少額でも良いので、つみたてNISAや確定拠出年金等の税制優遇制度を活用して、目標金額に向けて適切な運用商品への積立投資をなるべく早めにスタートしてみてはどうだろうか。

【補足説明】
補足として、目標金額と投資期間が2,000万円や25年と違う場合に、このレポートの数字をどのように活用すべきかについて説明したい。

目標金額が2,000万円以外の場合で、同じ投資行動をとれば、毎月の積立金額と運用結果は目標金額と比例関係にある。具体的には目標金額を2,500万円に変更した場合について説明する。目標金額の2,500万円が2,000万円の1.25倍なので、毎月の積立金額が3.75万円(3万円の1.25倍)の場合、目標達成割合は3万円積立てた場合の割合と同じになる。全額を元本確保型にすれば、100%目標達成できていたことになる。異なる投資方法を移行するタイミングは2,000万円の代わりに、2,500万円を超えるタイミングである。25年後の時価残高も、図表5の数値に同比例の1.25倍を掛ければ良い。図表3~5はこのような形で読み替えることができる。

投資期間が25年以外の場合で、毎月の積立金額が少額でも投資期間が長ければ目標達成割合が上昇する。長期投資には複利効果が期待できるので、目標金額と違って単純な比例関係にはならない。しかし、そもそも資産形成においては投資期間が長い方が有利で、積立金額が少なくても適切な投資対象を選択すれば目標達成割合が高くなる。例えば、投資期間が25年の倍で50年の場合は、詳細な数値分析はしていないものの、必要な毎月の積立金額は半分以下になると考えられる。また、毎月の積立金額が同額なら、目標金額は倍以上にできると考えられる。

将来が過去と同じ結果になるとは限らないが、自ら立てた目標金額の達成に向かう際に、このレポートが少しでも参考になればと思う。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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金融研究部   研究員

熊 紫云 (ゆう しうん)

研究・専門分野
資産運用・資産形成

経歴
  • 【職歴】
     2020年   日本生命保険相互会社入社
     2021年4月 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2022年08月23日「基礎研レポート」)

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【老後のための2,000万円をどうやって確保するか-目標金額の2,000万円を超えたら、何をすべきか】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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