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- ASEANの貿易統計(7月号)~5月の輸出は域内向けを中心に好調続くも、欧米・中国向けが鈍化
2022年07月12日
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22年5月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比17.1%増となり、伸びは前月(同20.7%増)から小幅に鈍化した(図表1)。輸出は20年に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が本格化して一時的に大きく落ち込んだ後、経済活動の再開や半導体需要の増加、商品市況の高騰を受けて増加傾向が続いている。もっとも足元では中国の都市封鎖によるサプライチェーンの混乱や半導体不足、ロシアのウクライナ侵攻を背景とする商品市況の高騰、欧米の景気減速懸念など経済的なリスクが高まっており、輸出に下押し圧力が掛かる展開が続いている。
ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、5月は中国の一部都市で実施された都市封鎖が続いた影響により、東アジア向け(中国を含む)が同12.7%増(前月:同15.2%増)と小幅に鈍化したほか、金融引き締めによる景気減速が懸念される北米向けが同19.7%増(前月:同23.5%増)、EU向けが同12.3%増(前月:同26.0%増)と伸びが鈍化した(図表2)。一方、経済活動の活性化が進む東南アジア向けは同35.3%増(前月:同26.4%増)と好調だった。
ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、5月は中国の一部都市で実施された都市封鎖が続いた影響により、東アジア向け(中国を含む)が同12.7%増(前月:同15.2%増)と小幅に鈍化したほか、金融引き締めによる景気減速が懸念される北米向けが同19.7%増(前月:同23.5%増)、EU向けが同12.3%増(前月:同26.0%増)と伸びが鈍化した(図表2)。一方、経済活動の活性化が進む東南アジア向けは同35.3%増(前月:同26.4%増)と好調だった。
ベトナムの22年5月の輸出額(通関ベース)は前年同月比18.1%増(前月:同25.2%増)の309億ドルと伸びが鈍化したものの、概ね好調を維持した(図表3)。輸出の基調は20年に新型コロナ感染対策として国内外で実施された活動制限措置の影響を受けて一時的に落ち込んだ後、世界的な経済活動の再開や電子機器の需要拡大により増加傾向が続いている。また輸入額は前年同月比14.3%増(前月:同16.1%増)の326億ドルとなり二桁増で推移した。結果として、貿易収支が17.0億ドルの赤字となり、前月から25.5億ドル悪化した。
輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が前年同月比15.2%増(前月:同52.0%増)、電気製品・同部品が同25.1%増(前月:同14.6%増)となり、それぞれ好調を維持した(図表4)。アパレル関連では、履物が同12.0%増(前月:同17.2%増)、織物・衣類が同22.7%増(前月:同27.5%増)と二桁増が続いた。農林水産物を見ると、水産物(同34.7%増)やコーヒー(同33.2%増)、天然ゴム(同36.1%増)、コメ(同2.5%増)が増加する一方、野菜(同23.3%減)とカシューナッツ(同7.0%減)が落ち込むなど、品目毎にばらつきがみられた。
輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同15.7%増(前月:同27.0%増)、地場企業が同19.0%増(前月:同24.5%増)となり、それぞれ二桁増で推移した。
輸出を品目別に見ると、輸出全体の約2割を占める電話・部品が前年同月比15.2%増(前月:同52.0%増)、電気製品・同部品が同25.1%増(前月:同14.6%増)となり、それぞれ好調を維持した(図表4)。アパレル関連では、履物が同12.0%増(前月:同17.2%増)、織物・衣類が同22.7%増(前月:同27.5%増)と二桁増が続いた。農林水産物を見ると、水産物(同34.7%増)やコーヒー(同33.2%増)、天然ゴム(同36.1%増)、コメ(同2.5%増)が増加する一方、野菜(同23.3%減)とカシューナッツ(同7.0%減)が落ち込むなど、品目毎にばらつきがみられた。
輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同15.7%増(前月:同27.0%増)、地場企業が同19.0%増(前月:同24.5%増)となり、それぞれ二桁増で推移した。
タイの22年5月の輸出額(通関ベース)は前年同月比10.5%(前月:同9.9%増)の255億ドルとなり、伸びが小幅に加速した(図表5)。輸出の基調は新型コロナ感染拡大の影響が直撃した2020年に急減した後、世界的な電子機器の需要増加、国際商品市況の上昇などから増加傾向が続いている。5月はロシアのウクライナ侵攻を背景に値上がりした農産物・同加工品の輸出が大きく伸びた。また輸入額も前年同月比24.1%増(前月:同21.5%増)の273億ドルとなり、伸びが加速した。結果として、貿易収支が18.7億ドルの赤字となり、前月から0.3億ドル改善した。
輸出を品目別に見ると、全体の約7割を占める工業製品が同16.0%増(前月:同16.7%増)と伸びが小幅に鈍化したものの、15カ月連続の二桁増となった(図表6)。製造品の内訳を見ると、電子機器(同5.5%増)がプラスに転じたほか、金属・鉄鋼(同36.3%増)や機械・装置(同22.1%増)、家電製品(同12.3%増)、石油化学製品(同12.2%増)、自動車・部品(同7.3%増)などの主要輸出品が増加した。他方、鉱業・燃料が同78.4%増(前月:同54.1%増)と好調を維持、石油製品(同76.7%増)を中心に大幅な増加が続いた。農産物・同加工品は同28.9%増(前月:同13.9%増)と伸びが加速した。コメ(同34.8%増)や加工食品(同43.2%増)、園芸産物(同81.1%増)天然ゴム(同12.2%増)、ドリアン(同20.3%増)が二桁増となるなど、増加した品目が多かった。
輸出を品目別に見ると、全体の約7割を占める工業製品が同16.0%増(前月:同16.7%増)と伸びが小幅に鈍化したものの、15カ月連続の二桁増となった(図表6)。製造品の内訳を見ると、電子機器(同5.5%増)がプラスに転じたほか、金属・鉄鋼(同36.3%増)や機械・装置(同22.1%増)、家電製品(同12.3%増)、石油化学製品(同12.2%増)、自動車・部品(同7.3%増)などの主要輸出品が増加した。他方、鉱業・燃料が同78.4%増(前月:同54.1%増)と好調を維持、石油製品(同76.7%増)を中心に大幅な増加が続いた。農産物・同加工品は同28.9%増(前月:同13.9%増)と伸びが加速した。コメ(同34.8%増)や加工食品(同43.2%増)、園芸産物(同81.1%増)天然ゴム(同12.2%増)、ドリアン(同20.3%増)が二桁増となるなど、増加した品目が多かった。
マレーシアの22年5月の輸出額(通関ベース、ドル換算)の伸び率は前年同月比23.0%増(前月:同16.7%増)の275億ドルと伸びが加速した(図表7)。輸出の基調は20年に新型コロナ感染拡大と国内外の活動制限措置の影響が本格化して一時約3割の減少を記録した後、世界経済の回復や商品市況の高騰、電気電子製品の需要拡大を追い風に増加傾向が続いている。また輸入額も前年同月比29.4%増(前月:同17.9%増)の246億ドルと、伸びが加速した。結果として、貿易収支が+28.8億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から26.2億ドル縮小した。
輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同33.6%増(前月:同21.6%増)となり、主力の電気・電子製品(同36.9%増)を中心に8カ月連続の二桁増となった(図表8)。また鉱物性燃料は同63.6%増(前月:同12.4%増)と伸びが加速した。石油製品(同80.3%増)がプラスに転じたほか、天然ガス(同51.4%増)と原油(同44.0%増)が大幅に増加した。このほか、化学製品(同22.4%増)、動植物性油脂(同43.4%増)の二桁増が続く一方、ゴム手袋(同23.2%減)は昨年好調だった反動で減少が続いている。
輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同33.6%増(前月:同21.6%増)となり、主力の電気・電子製品(同36.9%増)を中心に8カ月連続の二桁増となった(図表8)。また鉱物性燃料は同63.6%増(前月:同12.4%増)と伸びが加速した。石油製品(同80.3%増)がプラスに転じたほか、天然ガス(同51.4%増)と原油(同44.0%増)が大幅に増加した。このほか、化学製品(同22.4%増)、動植物性油脂(同43.4%増)の二桁増が続く一方、ゴム手袋(同23.2%減)は昨年好調だった反動で減少が続いている。
インドネシアの22年5月の輸出額(通関ベース)は前年同月比27.0%増(前月:同47.8%増)の215億ドルと、伸びが鈍化したものの、二桁成長を維持した(図表9)。輸出の基調は20年に新型コロナの感染拡大の影響が直撃して最大約3割減まで落ち込んだ後、経済活動の再開や国際商品市況の上昇により増加傾向が続いているが、22年1月に石炭、22年4月に食用油の輸出禁止措置が実施され、今年に入って輸出が一時的に押し下げられる動きもみられる。一方、輸入額は前年同月比30.7%増(前月:同21.9%増)の186億ドルと、伸びが加速した。結果として、貿易収支が+29.0億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から46.6億ドル縮小した。
全体の9割を占める非石油ガス輸出が同25.3%増(前月:同47.7%増)と伸びが鈍化したものの、石油ガス輸出が同54.5%増(前月:同48.9%増)と好調に推移した(図表10)。品目別にみると、まず国際商品市況の高騰により鉱産物(同89.5%増)が大幅な増加が続いている。また鉄・鉄鋼(同81.3%増)や化学製品(同41.4%増)、自動車・同部品(同34.4%増)、電気機械(同23.3%増)が好調だった。一方、動植物性油脂(同69.2%減)はインドネシア政府が4月下旬に食用油の輸出を禁止した影響で大幅に減少したほか、機械類(同0.8%増)やゴム製品(同4.3%増)が伸び悩んだ。
全体の9割を占める非石油ガス輸出が同25.3%増(前月:同47.7%増)と伸びが鈍化したものの、石油ガス輸出が同54.5%増(前月:同48.9%増)と好調に推移した(図表10)。品目別にみると、まず国際商品市況の高騰により鉱産物(同89.5%増)が大幅な増加が続いている。また鉄・鉄鋼(同81.3%増)や化学製品(同41.4%増)、自動車・同部品(同34.4%増)、電気機械(同23.3%増)が好調だった。一方、動植物性油脂(同69.2%減)はインドネシア政府が4月下旬に食用油の輸出を禁止した影響で大幅に減少したほか、機械類(同0.8%増)やゴム製品(同4.3%増)が伸び悩んだ。
シンガポールの22年5月の輸出額(石油と再輸出除く、通関ベース、ドル換算)は前年同月比8.1%増(前月:同3.9%増)の121億ドルとなり、伸びが加速した(図表11)。輸出は昨年から世界的な電子製品の需要拡大や石油製品の価格上昇により増加傾向が続いているが、今年は昨年と比べて増勢が弱まってきている。なお、総輸出額が同22.0%増(前月:同16.4%増)の434億ドル、総輸入額が同33.3%増(前月:同21.4%増)の416億ドルとなり、それぞれ増加した。結果として、貿易収支が+17.8億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から12.8億ドル縮小した。
輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約2割を占める電子製品は同8.5%増(前月:同10.2%増)となり、伸びが小幅に鈍化して一桁の伸びにとどまった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同21.7%増)が好調で、ディスクメディア(同6.0%増)も増加傾向が続いたものの、PC(同12.0%減)と通信機器(同7.3%減)が減少した。一方、全体の約3割を占める化学品は同0.5%増(前月:同1.8%減)と持ち直したが、小幅の伸びにとどまった。化学品の内訳を見ると、前月に大きく増加した医薬品(同12.1%減)が落ち込んだほか、石油化学製品(同1.6%減)が停滞した。
輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約2割を占める電子製品は同8.5%増(前月:同10.2%増)となり、伸びが小幅に鈍化して一桁の伸びにとどまった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同21.7%増)が好調で、ディスクメディア(同6.0%増)も増加傾向が続いたものの、PC(同12.0%減)と通信機器(同7.3%減)が減少した。一方、全体の約3割を占める化学品は同0.5%増(前月:同1.8%減)と持ち直したが、小幅の伸びにとどまった。化学品の内訳を見ると、前月に大きく増加した医薬品(同12.1%減)が落ち込んだほか、石油化学製品(同1.6%減)が停滞した。
フィリピンの22年5月の輸出額(通関ベース)は前年同月比6.2%増(前月:同6.2%増)の63億ドルと、概ね横ばいの伸びとなった(図表13)。輸出の基調は2020年に新型コロナ感染拡大と国内外で実施された活動制限措置の影響が現れて急減した後、世界経済の再開を受けて増加傾向が続いているが、足元の輸出の勢いは緩やかなものとなっている。一方、輸入額は前年同月比31.4%増(前月:同29.4%増)の119億ドルと大幅な伸びが続いた。結果として、貿易収支が▲56.8億ドルの赤字となり、赤字幅は前月から3.3億ドル拡大した。
輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の6割弱を占める電子製品が同1.3%増(前月:同0.8%増)となり、伸び悩んだ(図表14)。電気製品の内訳を見ると、主力の半導体デバイス(同6.5%増)の伸びが加速したものの、電子データ処理機(同17.8%減)が落ち込んだ。その他9品目については、ココナッツオイル(同180.5%増)とその他鉱業品(同32.9%増)、化学品(同23.6%増)、機械・輸送用機器(同11.9%増)、その他製造品(同2.6%増)がそれぞれ増加した一方、イグニッションワイヤーセット(同17.0%減)と製錬銅(同16.2%減)、生鮮バナナ(同0.6%減)が減少した。
輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の6割弱を占める電子製品が同1.3%増(前月:同0.8%増)となり、伸び悩んだ(図表14)。電気製品の内訳を見ると、主力の半導体デバイス(同6.5%増)の伸びが加速したものの、電子データ処理機(同17.8%減)が落ち込んだ。その他9品目については、ココナッツオイル(同180.5%増)とその他鉱業品(同32.9%増)、化学品(同23.6%増)、機械・輸送用機器(同11.9%増)、その他製造品(同2.6%増)がそれぞれ増加した一方、イグニッションワイヤーセット(同17.0%減)と製錬銅(同16.2%減)、生鮮バナナ(同0.6%減)が減少した。
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(2022年07月12日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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