2022年05月17日

タイ経済:22年1-3月期の成長率は前年同期比2.2%増~経済活動の正常化と観光業の回復が続き2期連続プラス成長に

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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2022年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比2.2%増1(前期:同1.8%増)と小幅に上昇し、市場予想2(同1.7%増)を上回る結果となった(図表1)。

1-3月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に内外需の回復が成長率上昇に繋がったことが分かる。

民間消費は前年同期比3.9%増(前期:同0.4%増)と上昇した。費目別に見ると、レストラン・ホテル(同29.1%増)と交通(同4.2%増)、娯楽・文化(同3.4%増)がプラスに転じたほか、保健衛生(同16.8%増)が好調に推移、食料・飲料(同3.2%増)や住宅・水道・電気・燃料(同3.4%増)、通信(同1.5%増)、衣類・靴(同1.9%増)も増加傾向が続いた。

政府消費は同4.6増(前期:同8.1%増)と伸びが鈍化した。

総固定資本形成は同0.8%増(前期:同0.2%減)と小幅に増加した。投資の内訳を見ると、まず民間投資が同2.9%増(前期:同0.8%減)と上昇した。民間建設投資(同8.0%減)が落ち込んだものの、民間設備投資(同5.4%増)が増加した。一方で公共投資は同4.7%減(前期:同1.7%増)と2期ぶりのマイナス成長となった。公共建設投資(同3.9%減)と公共設備投資(同7.0%減)が揃って減少した。

純輸出は実質GDP成長率への寄与度が+3.1%ポイントと、前期の+0.5%ポイントから改善した。まず財・サービス輸出は同12.0%増となり、前期の同17.6%増に続いて二桁成長となった。財貨輸出が同10.2%増(前期:同17.6%増)と好調を保つと共に、サービス輸出が同30.7%増(前期:同28.8%増)と更に上昇した。一方、財・サービス輸入は同6.7%増(前期:同16.4%増)となり、伸びが鈍化した。
(図表1)タイの実質GDP成長率(需要側)/(図表2)タイ実質GDP成長率(供給側)
1-3月期の実質GDPを供給項目別に見ると、主に第三次産業の回復が成長率上昇に繋がった(図表2)。

まず農林水産業は前年同期比4.1%増(前期:同0.6%減)と回復した。主要作物のコメ、キャッサバ、パーム油、パインアップルがけん引したほか、漁業・養殖業が引き続き増加した。

鉱工業は同0.5%増(前期:同2.6%増)と減速した。まず主力の製造業は同1.9%増(前期:同3.8%増)と低下し、緩やかな伸びにとどまった。製造業の内訳を見ると、内需の回復で食料・飲料や繊維、家具などの軽工業(同6.3%増)の伸びが加速したものの、石油化学製品、ゴム・プラスチック製品などの素材関連(同1.6%増)が鈍化すると共に、自動車やコンピュータ・部品などの資本・技術関連産業(同2.9%減)が減少した。また電気・ガス業は同2.0%増(前期:同2.1%増)と緩やかな伸びが続いたものの、鉱業が同18.7%減(前期:同13.4%減)と低迷した。

全体の6割弱を占めるサービス業は同2.9%増(前期:同1.7%増)と伸びが加速した。サービス業の内訳を見ると、コロナ禍で芸術・娯楽等(同3.6%減)、建設業(同5.5%減)、管理及び支援サービス(同1.5%減)は引き続き減少したものの、ホテル・レストラン業(同34.1%増)がプラスに転じたほか、情報・通信業(同5.9%増)や運輸・倉庫業(同4.6%増)、保健衛生・社会事業(同2.8%増)、小売・卸売業(同2.9%増)、金融・保険業(同1.5%増)、不動産業(同1.0%増)、教育(同0.5%増)が引き続き増加した。
 
1 5月17日、タイの国家経済社会開発委員会(NESDC)が2022年1-3月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

1-3月期GDPの評価と先行きのポイント

タイ経済は昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に急速に景気が悪化、2020年に経済が停滞して、実質GDP成長率が前年比▲6.2%と減少した。タイは比較的早期のウイルス封じ込めに成功したが、本格的な経済活動の再開が遅れた。昨年7-9月期はデルタ株の感染再拡大に伴う活動制限措置の影響を受けて再びマイナス成長(前年同期比▲0.3%)となったが、その後は活動制限の緩和により経済が回復傾向にある。

今回発表された1-3月期の成長率は同2.2%増(10-12月期:同1.8%増)と上昇し、2期連続のプラス成長となった。1-3月期は新型コロナウイルスの感染が拡大したものの、消費と財・サービス輸出が回復した。タイでは今年初からオミクロン株の感染拡大が生じて感染者数は2月下旬から3月末にかけて1日2万人台の高水準で推移した(図表3)。タイ政府はワクチンの普及拡大や重症化率の低さから経済への影響が大きい都市封鎖に慎重な姿勢を続けたが、感染リスクの高い状況が続いたため、1-3月期の小売・娯楽施設への人流はコロナ前と比較して約2%増となり、12月から若干鈍化した。しかし、前年同期の小売・娯楽施設への人流が同21%減だったことを踏まえると、消費行動は回復してきたと言えるだろう(図表4)。またタイ政府は2月に生活必需品の半額を補助する「コーペイメント」などの景気刺激策を開始したことも奏功して、民間消費は前年同期比3.9%増(前期:同0.4%増)と伸びが加速した。もっともウクライナ情勢の悪化に伴う国際商品市況の高騰により、タイでインフレが高進(1-3月期のCPI上昇率は同4.8%増)したことは消費に影響を及ぼしており、本格的な消費の回復には至らなかった。

また1-3月期は世界的な経済活動の再開や半導体需要の堅調な拡大により財貨輸出(同10.2%増)が二桁増を維持した。また政府が2月にオミクロン株の感染拡大を受けて一時停止していたワクチン接種者に対する隔離なし入国制度「テスト・アンド・ゴー」を再開したため外国人旅行者が回復して、サービス輸出(同30.7%増)の大幅な増加が続いた。

今後もインフレの加速が消費者の購買力に悪影響を及ぼしかねない。4月の消費者物価上昇率は+4.7%と高止まりしている。また中国経済の減速や世界的な金融引き締めなど逆風が吹き始めている。こうした不確実要素がタイのコロナ禍からの経済回復を妨げるリスクに注意する必要があるだろう。
(図表3)タイの新規感染者数の推移/(図表4)タイの外出状況
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2022年05月17日「経済・金融フラッシュ」)

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