2022年05月12日

フィリピン経済:22年1-3月期の成長率は前年同期比8.3%増~活動制限緩和により民間消費が回復、4期連続のプラス成長に

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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2022年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比8.3%増1(前期:同7.7%増)と上昇し、市場予想2(同6.8%増)を上回る結果となった(図表1)。

1-3月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に内需の拡大が成長率上昇に繋がった。

まず民間消費は前年同期比10.1%増(前期:同7.5%増)と堅調に拡大した。民間消費の内訳を見ると、レストラン・ホテル(同20.4%増)と交通(同16.5%増)、教育(同10.9%増)が二桁成長となったほか、民間消費全体の約4割を占める食料・飲料(同9.9%増)や通信(同6.9%増)、衣服・履物(同8.0%増)、住宅・水道光熱(同6.1%増)、保健(同2.3%増)も増加傾向が続いた。

政府消費は同3.6%増(前期:同7.8%増)と鈍化し、緩やかな伸びにとどまった。

総固定資本形成は同11.0%増(前期:同10.8%増)と、高い伸びが続いた。建設投資が同13.2%増(前期:同15.8%増)と好調を維持すると共に、設備投資が同9.8%増(前期:同5.5%増)伸びが加速した。なお、設備投資の内訳を見ると、産業用機械(同2.4%減)が減少したものの、全体の約半分を占める輸送用機器(同22.2%増)が急上昇したほか、一般工業機械(同1.2%増)がプラスに転じた。

純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲3.0%ポイントとなり、前期の▲2.9%ポイントからマイナス幅が若干拡大した。まず財・サービス輸出は同10.3%増(前期:同7.7%増)と上昇した。輸出の内訳を見ると、財輸出(同5.9%増)が鈍化したものの、サービス輸出(同16.2%増)が大きく上昇した。一方、財・サービス輸入は同15.6%増(前期:同14.3%増)となり、輸出を上回る伸びが続いた。
(図表1)フィリピンの実質GDP成長率(需要側)/(図表2)フィリピン 実質GDP成長率(供給側)
供給項目別に見ると、第二次産業と第三次産業の回復が成長率上昇に繋がった(図表2)。

まずGDPの約6割を占める第三次産業は同8.6%増(前期: 同8.0%増)と上昇して堅調な伸びを維持した。運輸・倉庫業(同26.5%増)と宿泊・飲食業(同21.0%増)が二桁成長を続けたほか、全体の約2割を占める卸売・小売(同7.3%増)や専門・ビジネスサービス業(同8.8%増)、不動産業(同7.9%増)、情報・通信業(同7.7%増)、金融・保険業(同7.2%増)がそれぞれ底堅い伸びとなった。一方、保健衛生・社会活動(同1.2%増)と行政・国防(同0.8%増)は鈍化した。

第二次産業は同10.4%増(前期:同9.6%増)と上昇した。まず製造業は同13.5%増(前期:同18.6%増)と二桁成長を保った。製造業の内訳をみると、主力のコンピュータ・電子機器(同4.5%増)が鈍化したものの、石油製品(同63.5%増)や化学製品(同19.7%増)、輸送用機器(同11.3%増)、食品加工(同9.4%増)が大幅に増加した。また建設業(同13.5%増)や電気・ガス・水道(同5.8%増)、鉱業・採石業(同17.0%増)もそれぞれ増加傾向で推移した。

第一次産業は前年同期比0.2%増(前期:同1.4%増)と鈍化した。アフリカ豚熱発生の影響により家畜(同1.1%減)の減少が続いたほか、台風被害によりコメ(同1.8%減)やトウモロコシ(同0.7%減)、バナナ(同2.6%減)などの農作物も減少した。
 
1 2022年5月12日、フィリピン統計庁(PSA)が2022年1-3月期の国内総生産(GDP)統計を公表した。
2 Bloomberg調査

1-3月期のGDPの評価と先行きのポイント

フィリピン経済は新型コロナウイルスの感染拡大を背景に2020年に景気が悪化して実質GDP成長率が前年比▲9.5%と減少したが、昨年4-6月期以降は前年同期の落ち込みからの反動増(ベース効果)や経済活動の再開によってプラス成長が続き、21年の成長率は前年比+5.7%と上昇した。今回発表された22年1-3月期の成長率は前年同期比+8.3%となり、前期の同7.7%増から更に上昇、4カ月連続のプラス成長となった。

1-3月期は新型コロナウイルスの感染が拡大したものの、民間消費(同10.1%増)と投資(同10.3%増)、輸出(同11.0%増)がそれぞれ順調に回復した。フィリピンでは昨年末からオミクロン株の感染が急速に拡大して新規感染者数が1月半ばに1日3万人台を突破(図表3)、政府は1月から首都圏の外出・移動制限措置の警戒レベルを5段階中3番目に厳しい水準に引き上げるなど感染対策を強化した。しかし、ワクチン接種の拡大や治療薬の調達など従来の感染対策が徹底されるなか、感染者数は3月末には1日300人台まで減少した。感染状況の改善に伴い、首都圏の活動制限措置は2月と3月に段階的に引き下げられ、現在は警戒レベルが最も緩い水準となっている。従って、1-3月期はオミクロン株の感染拡大がフィリピン経済の打撃となる恐れがあったが、軽症者が大半を占めるなどデルタ株が流行した時期とは状況が異なり医療提供体制が逼迫せず、政府の外出・移動動制限措置の強化は限定的なものだった。このため1-3月の人流はほとんど減少せずに済み(図表4)、生産活動の停滞が回避された。また比較対象となる昨年1-3月期は感染第2波が発生するなど現在より厳しい制限措置が実施されて経済活動が停滞していた時期であり、ベース効果が働いたことも今期の成長率上昇に繋がったとみられる。

足元のフィリピンの新規感染者数は1日100人台まで減少しており、感染状況は安定している。今後もブースター接種の普及など感染対策の整備が進むなかで、外出・移動活動制限の緩和が進むものとみられる。こうして企業・消費者マインドの改善や雇用情勢の改善を通じて内需の回復が続くだろう。実際、フィリピンの失業率は3月に5.8%となり、コロナ禍後で最も低い水準にまで改善している。しかしながら、4月の消費者物価上昇率は前年同月比+4.9%まで上昇するなど今後はインフレの加速が消費者の購買力に悪影響を及ぼす恐れがありそうだ。また中国経済の減速や世界的な金融引き締めなど逆風が吹き始めている。5月9日のフィリピン大統領選挙ではフェルディナンド・マルコス元上院議員が勝利したが、大統領に就任して早々にこうした経済問題に対して、いかに対応をしていくかが注目される。
(図表3)フィリピンの新規感染者数の推移/(図表4)フィリピンの外出状況
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2022年05月12日「経済・金融フラッシュ」)

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