2022年06月08日

医療機関・介護サービス事業者・健保組合における個人情報保護

保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

医療機関・介護機関においては、疾病や治療内容などの要配慮個人情報を取り扱うことが通例である。これら機関においては自らの機関で個人情報を利用するほか、他の医療機関等へ連携したり、あるいは診療報酬や介護給付費の請求のため、外部(第三者)に情報を伝達したりすることとなる。
 
医療機関においては、患者から取得する情報について、その利用目的(第三者提供含む)は一般に理解されているものと考えられており、患者が受診のために病状を医師に対して述べることで要配慮個人情報の利用および第三者提供について同意があったものとして取り扱うこととされている。
 
他方、介護サービス事業者においては要配慮個人情報の取扱にあたっては本人同意を必要とすることが原則とされている。介護サービス事業者が本人から直接情報を取得した場合には利用に関する同意はあるとされているものの、この取得した情報を第三者提供するにあたっては、書面により本人同意を取得する必要があるとされる。
 
健康保険組合においては、HPやパンフレットなどに利用目的を掲示し、被保険者から反対がなければ個人情報利用に関する同意があったものと取り扱うこととされている。なお、健保組合において第三者提供は想定されていない。
 
医療機関等にある医療情報を学術研究目的で大学などの学術研究機関が用いる場合は、個情法では学術研究機関特例の適用があるため、本人への通知または公表のみが求められるが、人を対象とする生命科学。医学系研究に関する倫理指針では、ローデータであれば改めてICを本人から取得する(例外規定あり)必要がある。

■目次

1――はじめに
2――医療機関受診に関する個人情報の取扱い
  1|保険診療の流れ
  2|本人同意取得に関する取扱い
  3|医療機関特有の事情
3――介護サービス事業者における個人情報の取扱い
  1|介護サービスの流れ
  2|本人同意取得に関する取扱い
4――健康診断に関する個人情報
  1|個人情報の流れ
  2|本人同意取得に関する取扱い
5――医療機関・介護サービス事業者、健保組合関連の研究と個人情報
  1|医療機関のデータを生かした研究
  2|介護サービス事業者のデータを生かした研究
  3|健保組合のデータを生かした研究
6――おわりに
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保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2024年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

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レポート紹介

【医療機関・介護サービス事業者・健保組合における個人情報保護】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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