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医学研究にかかわる倫理指針-個人情報保護法とインフォームドコンセント

保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登
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2022年4月1日に改正個人情報保護法(以下、個情法)が施行され、同時に改正「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(以下、指針)」も施行された。
改正法の柱の一つが、学術研究機関の学術研究目的での個人情報の利用に個情報を適用することである。ただし、同時に個情法の一般ルールでは病歴など要配慮個人情報の取得や目的変更、第三者提供にあたって本人同意を必要とする規定からの適用免除をしており、学問の自由への配慮を行っている。
他方、指針では侵襲・介入により情報を収集し、あるいは試料の取得にあたっては研究対象者からのインフォームドコンセント(IC)を取るべきことを要求する。また、試料を用いる研究目的の変更や、試料の第三者への提供についても原則としてICを要求する。これはICが個人情報の取得・利用という側面にとどまらず、本人の不利益などへの同意が含まれているため、個情法よりも慎重な取り扱いを求めているものと考えられる。
また、指針では試料・情報を匿名加工情報としたときには利用目的の変更や第三者提供にあたって本人同意を不要としたり、学術研究目的での利用・提供にあたっては簡易なICを認めたり、一定事項の通知・公表と研究対象者からの拒否の機会保障などを組み合わせて簡易な情報活用を可能にしている。
倫理指針はICを直接的に取得できない場合を想定して、いくつものケースを規定しているが、そのためにルールが複雑化している。当初試料・情報収集時のICと、利用目的変更・第三者提供時とのICとは相違していることから、利用目的変更等における同意(IC含む)は個情報に併せることも検討されてよいと思われる。
■目次
1――はじめに
2――指針の概要
1|指針の適用対象
2|指針の概要
3――個人情報保護法の概要
1|個人情報の利活用にかかる一般ルール
2|個人情報、仮名加工情報、匿名加工情報、個人関連情報
3|学術研究機関等の学術研究目的利用
4――指針におけるICと個人情報保護法
1|総論
2|試料・情報取得とIC
3|既存試料等を用いた研究とIC
4|第三者提供とIC
5|試料・情報の提供受けた研究
5――ICと個情法上の同意
1 |ICとは
2 |誰がICを取得するのか
3 |未成年者や認知症の人に対するIC
6――おわりに
(2022年05月30日「基礎研レポート」)

03-3512-1866
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2024年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
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