2022年02月07日

2022年改正個人情報保護法の施行-学術研究機関への規制共通化、法律の統合

保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

2021年通常国会で成立したデジタル社会整備法により、個人情報法制度の整備が図られることとなった。まず、2022年4月より、民間事業者に適用のある個人情報保護法、国の行政機関に適用がある行政機関個人情報保護法、および国の独立行政法人に適用がある独立法人個人情報保護法が個人情報保護法に一本化される。また2023年の政令で定める日には、地方公共団体の定める条例で規制される地方の行政機関や地方独立行政法人についても個人情報保護法が適用されることとなった。
 
今回の改正の眼目は、学術研究機関・医療分野における情報取扱ルールの共通化により利活用の活性化を図るとともに、民間分野以外にEUの個人情報保護規則で同等性評価を得られていなかった原因である、行政機関等に対する個人情報保護委員会への監督権限の付与を行うものである。
 
学術研究機関については個人情報保護法の対象でありながら、規制が免除されている現行法を改正し、必要最低限の規定を入れたうえで、独立行政法人である国立大学等にも規定適用を行うこととした。また、県立大学などの地方独立行政法人については2023年の政令で定める日から同様に個人情報保護法の規定が適用されることとなっている。
 
EUの同等性評価を行政機関等についても受けるために、これら機関を個人情報保護法の適用対象とするにあたっては、特に条例で規制されている地方自治体の扱いが課題となった。改正個人情報保護法は、基本ルールを入れて、その詳細化を条例で図ることは許されるとしつつ、法の範囲を超える義務の追加はできないこととされた。

■目次

1――はじめに
2――問題の所在
  1|法律の相違等による問題
  2|個人情報保護法の仕組み
3――改正の概要
4――学術研究機関に対する規制の適用
  1|学術研究機関・医療における規律の標準化
  2|対象となる主体と規定
  3|適用対象外または特例のある規定
  4|個人情報保護委員会の権限
5――個人情報保護法制度の統合
  1|個人情報の定義の統一
  2|個人情報保護委員会による監督制度の整備
  3|行政機関に関する個人情報規律の個情法への一本化
  4|地方公共団体の条例の法定標準化
6――検討
  1|仮定のケース想定
  2|仮定ケースにおける法律の適用関係
7――おわりに
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保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2024年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

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【2022年改正個人情報保護法の施行-学術研究機関への規制共通化、法律の統合】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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